循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

心房細動による脳塞栓症に対するDOAC開始のタイミング(解説:内山真一郎氏)

心房細動による脳塞栓症の再発予防に直接経口抗凝固薬を開始する適切なタイミングは確立されていなかった。本研究は、脳梗塞後の開始時期が4日以内と5日以後の効果を比較した4件の無作為化比較試験(TIMING、ELAN、OPTIMAS、START)のメタ解析である。1次評価項目は、30日以内の脳梗塞再発、症候性脳内出血、または分類不能の脳卒中であった。結果は、4日以内に開始したほうが1次評価項目の複合エンドポイントが有意に少なく、脳梗塞の再発は少なく、脳内出血は増加しなかった。

ネットワークメタアナリシスを用いた断続的断食の利点と今後の課題(解説:島田俊夫氏)

米国・ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のZhila Semnani-Azad氏らの研究グループが、2025年6月18日付のBMJ誌に掲載された論文で、きわめて重要な問題を提起しています。この論文は、断続的断食(IF)戦略、継続的なエネルギー制限(CER)食、そして自由摂取(AL)食が、体重および心血管代謝リスク因子に与える影響を、ランダム化比較試験(RCT)99件、合計6,582例の成人データを統合したネットワークメタアナリシスを用いて評価したものです。肥満が増加の一途をたどる現代において、IFがCER食の代替として注目されるなか、その効果を包括的に比較することを目的としています。本稿では、この重要な論文の要点をわかりやすく解説します。

小児期ビタミンD不足で、将来のCVDリスク増

 ビタミンD不足は心血管イベントと関連するという既報があるが、小児期におけるビタミンD値低下も成人後のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスク増と関連している可能性があることが、新たな研究で示唆された。フィンランド・トゥルク大学のJussi Niemela氏らによる研究はEuropean Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2025年4月29日号に掲載された。  研究者らは、「若年フィンランド人における心血管リスクの前向き研究」(Young Finns study)の参加者を対象に、25-OHビタミンD濃度と従来の小児期のリスク因子(BMI、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、収縮期血圧、果物・野菜・魚の摂取量、身体活動、社会経済的地位、喫煙歴)を調査し、フィンランド国民全員をカバーする全国登録データベースを用いてASCVDアウトカムを追跡調査した。これらのデータから小児期のビタミンDレベルと成人発症のASCVDイベントとの関係を評価した。

日本人の肥満基準、BMI 25以上は適切?

 現在の日本における肥満の定義はBMI 25kg/m2以上とされているが、これは約30年前の横断研究の結果に基づくものである。そのため、現在における妥当性については議論の余地がある。そこで、京都府立医科大学大学院の笠原 健矢氏らの研究グループは、大規模な長期コホート研究のデータを用いて、現在の日本人における最適な肥満の基準値を検討した。その結果、BMI 22kg/m2を対照とした場合、2型糖尿病や慢性腎臓病(CKD)はBMI 25kg/m2付近でハザード比(HR)が2を超える一方で、冠動脈疾患(CAD)や脳卒中などのHRが2を超えるのは、BMI 30kg/m2超であった。本研究結果は、Metabolism誌オンライン版2025年7月15日号に掲載された。

揚げ物はやはり糖尿病や高血圧リスクに~兄弟比較の前向き試験

 揚げ物は健康に悪影響を与える可能性があるが、腸内細菌叢との関連や、それが心代謝性疾患に及ぼす影響は十分に明らかになっていない。中国・浙江大学のYiting Duan氏らは、2つの大規模前向きコホートを用いた解析により、揚げ物の摂取に関連する腸内細菌叢は糖尿病や高血圧リスクの増大と関連し、その関連は遺伝的・環境的背景を共有する兄弟姉妹間の比較においても同様の関連性が確認されたことを報告した。American Journal of Clinical Nutrition誌2025年7月2日号掲載の報告。  研究グループは、WELL-Chinaコホート(ベースライン:2016~19年、6,637人)と蘭渓コホート(ベースライン:2017~19年、3,466人)を分析し、揚げ物の摂取と腸内細菌叢の組成に関係があるかどうか、揚げ物に関連する腸内細菌叢は肥満や体脂肪の分布および心代謝性疾患の発症率と関連しているかどうかを調査した。

心停止ドナー心の新たな摘出・保存法/NEJM

 米国・ヴァンダービルト大学医療センターのAaron M. Williams氏らの研究チームは、循環が停止したドナー(DCD)から移植用の心臓を摘出する際に、従来のnormothermic regional perfusion(NRP)やdirect procurement and perfusion(DPP)を必要としない方法として、rapid recovery with extended ultraoxygenated preservation(REUP)法を開発した。本論文では、従来法の問題点、REUP法を適用した最初の3例の治療成績、この手法が今後の心臓移植に及ぼす影響について解説している。研究の詳細は、NEJM誌2025年7月17日号で短報として報告された。

乳児ドナー心の手術台上での再灌流・移植に成功/NEJM

 米国・デューク大学のJohn A. Kucera氏らは、小児の心停止ドナー(DCD)の心臓を体外(on table、手術台上)で再灌流しレシピエントへの移植に成功した症例について報告した。DCDと再灌流をドナーの体内で行うnormothermic regional perfusion(NRP)法を組み合わせる方法は、ドナー数を最大30%増加させる可能性があるが、倫理的観点(脳循環温存に関する仮説など)からこの技術の導入は米国および他国でも限られており、DCD心臓の体外蘇生を容易にする方法が求められていた。NEJM誌2025年7月17日号掲載の報告。  ドナーは、生後1ヵ月(体重4.2kg、身長53cm)で、自宅にて心停止状態で発見され、救急隊到着までの25分間、心肺蘇生(CPR)を受けていなかった。

食物繊維の豊富な食事は動脈硬化リスクを抑制する

 野菜、穀物、豆類、その他の高繊維食品を多く摂取することが、腸だけでなく心臓の健康にも役立つことが、新たな研究で明らかになった。食物繊維の少ない食事を摂取している人では、プラークの蓄積によって動脈が狭くなる可能性の高いことが示されたという。ルンド大学(スウェーデン)心臓病学教授のIsabel Goncalves氏らによるこの研究結果は、「Cardiovascular Research」に6月16日掲載された。  Goncalves氏は、「人々の冠動脈CT血管造影法(冠動脈CTA)の画像と食事パターンを照合したところ、食事パターンは冠動脈プラークの存在だけでなく、高リスクとされるプラークの特徴にも関連していることが明らかになった」と同大学のニュースリリースで述べている。

糖尿病の新たな食事療法「DASH4D」で血圧も低下

 高血圧予防のための食事スタイルとして歴史のある「DASH」を糖尿病患者向けにアレンジした、「DASH4D(Dietary Approaches to Stop Hypertension for Diabetes)」の有効性が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学のLawrence Appel氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に6月9日掲載された。  Appel氏は、「血圧は、コントロールすべき最も重要な検査値の一つだ。数値が高いほど脳卒中や心臓病のリスクが高まる」と解説。そして、「この研究の参加者の多くは既に複数の降圧薬を服用していたが、それにもかかわらず食事スタイルを変更することで、さらに血圧が低下した」と述べている。

スタチンはくも膜下出血リスクを下げる?~日本のレセプトデータ

 スタチン使用によるくも膜下出血予防効果は、実験動物モデルやいくつかの臨床試験で検討されているが結論は得られていない。今回、東京理科大学の萩原 理斗氏らが日本のレセプトデータベースを用いて症例対照研究を実施したところ、スタチン使用がくも膜下出血リスクの減少と有意に関連していたことがわかった。Stroke誌オンライン版2025年7月8日号に掲載。  本研究では、2005年1月~2021年8月に新たにくも膜下出血(ICD分類第10改訂コードI60)と診断されて入院した患者を症例とし、症例1例につき4例の対照を無作為に選択し、incidence density samplingを用いて年齢、性別、追跡期間でマッチングした。スタチン曝露(使用頻度、期間)はくも膜下出血発症前に評価した。患者特性で調整された条件付きロジスティック回帰を使用して、スタチン使用とくも膜下出血リスクの関連を評価し、この関連が高血圧・糖尿病・脳血管疾患・未破裂頭蓋内動脈瘤の既往、降圧薬の使用によって差があるかどうかも調査した。