歯肉炎の改善に亜鉛が影響?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/10

 

 歯周病は心血管疾患や糖尿病、脳梗塞などの疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆されている1,2)。今回、トルコ・Cukurova UniversityのBahar Alkaya氏らは、歯周病の初期段階とされる歯肉炎の管理において、歯科用の亜鉛含有ステント(マウスピース型器具)が機械的プラークコントロールの補助として有益であることを示唆し、歯肉炎が亜鉛によって改善したことを明らかにした。

 本研究は、歯肉炎患者での歯肉の炎症、出血、歯垢の再増殖に対する亜鉛含有ステントの効果を調査したもの。Cukurova Universityにおいて、全身的に健康な18~30歳の歯肉炎患者42例を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。参加者は試験群(亜鉛含有ステント)または対照群(プラセボステント)に割り付けられ、歯石除去後4週間、毎日12時間以上にわたって器具を装着するよう指示された。評価項目は歯肉炎指数(GI)*1、プラーク指数(PI)*2、プロービング時の出血(BOP)*3などで、ベースライン時、2週目、4週目、8週目に評価が行われた。統計解析にはIBM SPSSおよびRStudioの統計ソフトウェアが用いられた。
*1:歯肉の炎症度を数値化した指標
*2:歯の表面へのプラーク付着状態を数値化した指標
*3:探針による歯周ポケットの深さを測定した指標(歯茎からの出血の有無を調べる)

 主な結果は以下のとおり。

・両群とも、時間の経過とともに歯肉の健康状態が統計学的に有意に改善したが、亜鉛含有ステント群はすべての時点でGIスコアが統計学的に有意に低下し、歯肉の炎症がより大きく軽減された。
・PIスコアとBOPスコアは両群で改善したが、両群間に統計学的有意差は認められなかった。

 亜鉛による抗菌作用および抗炎症作用は、歯肉の健康改善に寄与する可能性が高いといわれており、本研究結果は亜鉛含有ステントが機械的プラーク除去単独実施に加えて、歯肉炎の軽減にさらなる効果をもたらすことを示唆している。ただし、研究者らは「より広範な臨床応用を確認するためにさらなる長期研究が必要」としている。

(ケアネット 土井 舞子)