高血圧の管理では、塩分摂取量の削減は重要である。人間は塩分を好むという前提に基づいているが、高濃度の塩分に対し、嫌悪感も認識することが大切である。近年の研究では、慢性腎臓病(CKD)患者において味覚認識だけでなく、高塩分濃度への嫌悪感も変化していることが明らかにされた一方で、さまざまな味覚を組み合わせた場合の影響は依然として不明であった。そこで、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の奥野-尾関 奈津子氏らの研究グループは、甘味を加えることでCKD患者の塩分嫌悪に影響を与えるかどうかを研究した。その結果、甘味は健康成人とCKD患者の双方で高塩分への嫌悪感を低減することが判明した。この結果はScientific Reports誌電子版2025年7月7日号に掲載された。
研究グループは、健康成人100例とCKD患者66例を対象に、濃度の異なる塩化ナトリウム、スクロース、酒石酸、キニーネ塩酸塩を浸した濾紙を用いた味覚試験を実施した。嫌悪閾値は、不快と感じられる最低濃度と定義し、甘味と塩味、酸味、苦味の組み合わせにおける嫌悪閾値を測定した。
主な結果は以下のとおり。
・塩味、酸味、苦味に対する嫌悪感は濃度とともに増加した。
・高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が44%、CKD患者が79%だった。
・甘味を加えると塩味嫌悪が有意に減少し、高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が52%、CKD患者が92.4%だった。
・甘味は酸味に対する嫌悪感をやや軽減したが、いずれの群においても苦味には影響しなかった。
・甘味は健康成人とCKD患者の双方において、高塩分濃度への嫌悪感を低減した。
著者らは、「塩分摂取を制限するには、塩分含有量を減らすだけでなく、塩分嫌悪感を低下させる過剰な甘味も避けるべきである」と結論している。
(ケアネット 稲川 進)