循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

DapaTAVI試験―構造的心疾患に対するSGLT2阻害薬の効果(解説:加藤貴雄氏)

2025年ACCで発表されたDapaTAVI試験(Raposeiras-Roubin S, et al. N Engl J Med. 2025;392:1396-1405.)であるが、TAVI前に心不全および、中等度腎機能障害・糖尿病・左室駆出率低下のいずれかを持つ大動脈弁狭窄症患者が登録された試験である。左室駆出率<40%の患者は約18%で多くがHFmrEF/HFpEFの患者であり、平均年齢が82歳と高齢で、女性が約半数登録された。また、中等度~高度の左室肥大を伴う患者は約60%であった。結果は、主要評価項目(全死亡または心不全増悪の複合エンドポイント)は、ダパグリフロジン追加群で有意に低い結果で、全死亡では有意な差がなく心不全増悪の差が主に結果に影響していた。主要な2次評価項目でも、心不全入院・心不全の緊急受診においてダパグリフロジン追加群で有意に低い結果であった。

高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。  世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。

歯痕舌と血圧が関連~日本人集団

 東洋医学では舌の周囲に歯形がついた歯痕舌は体液貯留を示し、高血圧と関連する可能性があるが、歯痕舌と血圧の関連を調べた疫学研究はほとんどない。今回、順天堂大学の謝敷 裕美氏らが日本の地域住民を対象にした東温スタディにおいて検討したところ、潜在的交絡因子の調整後も歯痕舌のある人は収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が高いことが明らかになった。American Journal of Hypertension誌オンライン版2025年4月17日号に掲載。  本研究は東温スタディ(愛媛県東温市における保健事業の評価、ならびに循環器疾患発症にかかる新たな危険因子の検索を目的とするコホート研究)に参加した30~84歳の1,681人を対象とし、歯根舌を舌画像により評価し、歯痕舌あり群と歯痕舌なし群に分けた。SBP≧140mmHgまたはDBP≧90mmHgまたは降圧薬の使用を高血圧と定義した。多変量調整ポアソン回帰分析を用いて、年齢、性別、肥満度を含む潜在的交絡因子を調整後、歯痕舌と血圧の関連を検討した。

ADHD治療薬は心臓の健康に有害か?

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療薬が心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性が心配されている。こうした中、英サウサンプトン大学小児・青少年精神医学部門のSamuele Cortese氏らが実施したシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスにおいて、ADHD治療薬が収縮期血圧(SBP)や拡張期血圧(DBP)、脈拍に及ぼす影響はわずかであることが確認された。この研究の詳細は、「The Lancet Psychiatry」5月号に掲載された。  Cortese氏らは、12の電子データベースを用いて、ADHD治療薬に関する短期間のランダム化比較試験(RCT)を102件抽出し、結果を統合して、ADHD治療薬がDBP、SBP、脈拍に与える影響をプラセボや他の薬剤との比較で検討した。これらのRCTで対象とされていたADHD治療薬は、アンフェタミン、アトモキセチン、ブプロピオン、クロニジン、グアンファシン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、ビロキサジンであった。追跡期間中央値は7週間で、参加者として小児・青少年1万3,315人(平均年齢11歳、男子73%)と成人9,387人(平均年齢35歳、男性57%)の計2万3,702人が含まれていた。

コントロール不良高血圧、lorundrostatが有望/NEJM

 コントロール不良の高血圧の治療において、プラセボと比較してアルドステロン合成酵素阻害薬lorundrostatは、24時間平均収縮期血圧を有意に低下させ、安全性プロファイルは許容範囲内と考えられることが、米国・Cleveland Clinic FoundationのLuke J. Laffin氏らが実施した「Advance-HTN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。  Advance-HTN試験は、コントロール不良または治療抵抗性の高血圧の治療におけるlorundrostatの有効性と安全性の評価を目的とする第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2023年3月~2024年10月に米国の103施設で参加者のスクリーニングを行った(Mineralys Therapeuticsの助成を受けた)。

聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連

 聴覚障害は、心臓の健康問題の前兆となる可能性があるようだ。新たな研究で、聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連しており、両者の関連には、精神的苦痛が媒介因子として影響している可能性が示唆された。南方医科大学(中国)のXianhui Qin氏らによるこの研究結果は、「Heart」に4月8日掲載された。  Qin氏らは、長期健康研究プロジェクトであるUKバイオバンクのデータを用いて、研究参加時には心不全のなかった16万4,431人(平均年齢56.7歳、女性54.6%)を対象に、聴力と心不全発症との関連を検討した。媒介分析により、社会的孤立、精神的苦痛、および、神経症的傾向の影響についても評価された。参加者の聴力は、雑音下でDigit Triplets Testを用いて測定し、語音聴取閾値(SRT)として定量的に評価された。SRTは、聴力検査で用いられる指標の一種で、語音を50%の確率で間違わずに聞き取れる信号対雑音比(SNR)を示す。補聴器を使用していない参加者の聴力は、正常(SRT<−5.5dB)、不十分(SRT≧−5.5dB、SRT≦−3.5dB)、低い(SRT>−3.5dB)に分類した。

昼夜を通して続く熱波は心疾患による死亡リスクを高める

 日中も夜間も高気温が続く熱波の間には、心疾患による死亡者数が増えることが新たな研究から明らかになった。特に、夜になっても暑さが和らぐことのない複合熱波と呼ばれる熱波での心疾患による死亡リスクは、日中の気温だけが大幅に上昇した場合よりもはるかに高かったという。復旦大学(中国)公共衛生学院教授のRenjie Chen氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に4月8日掲載された。  Chen氏らは今回、2013年から2019年に中国本土で発生した2390万2,254件の心疾患による死亡データを解析し、気温との関係を調べた。熱波を、昼間のみの熱波、夜間のみの熱波、および昼夜を通して続く複合熱波に分類し、熱波による超過積算温度(excess cumulative temperatures in heatwaves;ECT-HW)と呼ばれる新しい指標を用いて死亡率を推定するとともに、従来の熱波指標を用いて推定した死亡率と比較した。ECT-HWは、熱波の有無だけを示す従来の指標とは異なり、熱波の強度(温度の上昇幅)、持続期間、および季節内での発生時期といった詳細な特性を捉えることが可能だという。

マバカムテンの適正使用に関するステートメントを公表/日本循環器学会

 日本循環器学会が閉塞性肥大型心筋症治療薬マバカムテンの適正使用に関するステートメント(第1版、2025年)を作成し、4月24日に同学会ホームページで公表した。マバカムテン(商品名:カムザイオス)は3月27日にブリストル マイヤーズ スクイブが製造販売承認を取得しており、年内の国内販売が見込まれている。  肥大型心筋症におけるマバカムテンの位置付けは、2025年3月に発刊された『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』の治療フローチャート(p.130)や推奨表(閉塞性肥大型心筋症の圧較差軽減のための治療薬の推奨とエビデンスレベル、p.131)にも、対象患者や処方目的などが明記されているが、投与対象者の選定や用量調整、中止/休薬の基準に注意を要することから、ステートメントにてmavacamtenを導入できる施設要件と医師要件が示された。

撤回論文がメタ解析やガイドラインに及ぼす影響/BMJ

 撤回された臨床試験論文は、エビデンスの統合、臨床診療ガイドライン、エビデンスに基づく臨床診療を含むエビデンスエコシステムに大きな影響を与えることを、中国・Second Military Medical UniversityのChang Xu氏らが、前方引用検索に基づく後ろ向きコホート研究「VITALITY Study I」の結果で示した。エビデンスに基づく医療において、信頼できる意思決定は、信頼できるエビデンスエコシステムの確立に依存し、エビデンスの生成と統合はこのようなエコシステムの確立に重要な要素である。過去10年間で問題のある研究や撤回された研究の数が増加しており、科学研究のデータや結論の信頼性に対し深刻な懸念が高まっている。著者は、「エビデンスを生成、統合および利用する者はこの問題に注意する必要があり、このような潜在的な汚染(contamination)を容易に特定し是正できる実現可能なアプローチが必要である」とまとめている。BMJ誌2025年4月23日号掲載報告。

エサキセレノンは、高齢のコントロール不良高血圧患者にも有効(EXCITE-HTサブ解析)/日本循環器学会

 高血圧治療において、高齢者は食塩感受性の高さや低レニン活性などの特性から、一般的な降圧薬では血圧コントロールが難しいケースもある。『高血圧治療ガイドライン2019』では、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬として推奨されているが、個々の患者に適した薬剤選択が重要である。このような背景のもと、自治医科大学の苅尾 七臣氏らの研究グループは、ARBまたはCa拮抗薬を投与されているコントロール不良の本態性高血圧患者を対象に、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエサキセレノンと、サイアザイド系利尿薬であるトリクロルメチアジドとの降圧効果および安全性を比較する「EXCITE-HT試験」を実施した。