高血圧や心不全の治療に広く用いられる利尿薬には、副作用として電解質異常がみられることがあり、これは生命を脅かす可能性がある。これまでの研究では、利尿薬誘発性の電解質異常は女性に多く発現することが示唆されている。電解質バランスは腎臓によって調節されており、腎機能は加齢とともに低下する傾向がある。慶應義塾大学の間井田 成美氏らは、性別、腎機能、年齢が利尿薬誘発性の電解質異常の感受性に及ぼす影響を考慮し、利尿薬の副作用リスクが高い患者を特定するため本研究を実施した。Drug Safety誌2025年10月号の報告。
日本の利尿薬服用患者6万7,135例のレセプトデータをDeSCヘルスケアから入手し、2020年4月~2021年3月のデータを分析対象とした。
主な結果は以下のとおり。
・カイ二乗検定を用いた患者数の解析では、高カリウム血症は男性で女性より多く(326例vs.271例、p=0.003)、低カリウム血症は女性で男性より多くみられた(413例vs.285例、p<0.001)。
・女性において年齢と腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)を考慮し、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
・75歳以上の高齢患者では、女性は男性と比較し、低カリウム血症発症のORが、eGFR 30~60mL/分/1.73m2の場合で1.47(95%CI:1.13~1.91)、eGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合で2.05(95%CI:1.08~4.10)であった。
著者らは「75歳以上の女性では、eGFRが低い場合、男性よりも低カリウム血症のORが高かった。本結果は、eGFRが低い高齢女性では、利尿薬の副作用、とくに低カリウム血症のモニタリングが重要であることを強調するものである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)