循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

PCI後のDAPT、出血高リスク患者の最適期間は?/Lancet

 出血リスクが高い(HBR)患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の投与期間について、1ヵ月間の投与は3ヵ月間の投与に対して全臨床的有害事象(NACE)に関する非劣性は示されなかった。一方、非HBR患者では、3ヵ月間の投与は12ヵ月間の投与に対してNACEおよび主要心血管/脳血管イベント(MACCE)に関して非劣性が示され、出血に関して優れることが示された。韓国・Seoul National University HospitalのJeehoon Kang氏らが、同国の50ヵ所の心臓病センターで行った非盲検無作為化試験「HOST-BR試験」の結果を報告した。出血リスクに応じたPCI後のDAPT投与の最適期間は十分に確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月23日号掲載の報告。

がんと心房細動、合併メカニズムと臨床転帰/日本腫瘍循環器学会

 がん患者では心房細動(AF)が高率に発症する。がん患者の生命予後が改善していく中、その病態解明と適切な管理は喫緊の課題となっている。第8回日本腫瘍循環器学会学術集会では、がん患者におけるAFの発症メカニズムおよび活動性がん合併AF患者の管理について最新の大規模臨床研究の知見も含め紹介された。  東京科学大学の笹野 哲郎氏はがん患者におけるAF発症について、がん治療およびがん自体との関連を紹介した。  肺がんや食道がんに対する心臓近傍への手術や放射線照射では、術後炎症や心筋の線維化がAF発症と関連している。AF発症が高率な薬剤としてドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤やイブルチニブなどのBTK阻害薬が代表的である。これらの抗がん剤は心筋細胞の脱落や線維化など構造的な変化と電気生理的な変化によってAFを発症する。

がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会

 第8回日本腫瘍循環器学会学術集会が2025年10月25、26日に開催された。本大会長を務めた向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター 副所長)が日本高血圧学会合同シンポジウム「Onco-Hypertensionと腫瘍循環器の新たな関係」において、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の第10章「他疾患やライフステージを考慮した対応」を抜粋し、がん治療の中断・中止を防ぐための高血圧治療実践法について解説した。  がんと高血圧はリスク因子も発症因子も共通している。たとえば、リスク因子には加齢、喫煙、運動不足、肥満、糖尿病が挙げられ、発症因子には血管内皮障害、酸化ストレス、炎症などが挙げられる。そして、高血圧はがん治療に関連した心血管毒性として、心不全や血栓症などに並んで高率に出現するため、血圧管理はがん治療の継続を判断するうえでも非常に重要な評価ポイントとなる。また、高血圧が起因するがんもあり、腎細胞がんや大腸がんが有名であるが、近年では利尿薬による皮膚がんリスクが報告されている。

抗うつ薬30種類の生理学的影響を比較~ネットワークメタ解析/Lancet

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのToby Pillinger氏らは系統的レビューとネットワークメタ解析を行い、抗うつ薬はとくに心代謝パラメータにおいて薬剤間で生理学的作用が著しく異なるという強力なエビデンスがあることを明らかにした。抗うつ薬は生理学的変化を誘発するが、各種抗うつ薬治療におけるその詳細は知られていなかった。結果を踏まえて著者は、「治療ガイドラインは、生理学的リスクの違いを反映するよう更新すべき」と提唱している。Lancet誌オンライン版2025年10月21日号掲載の報告。

左室駆出率の保たれた心不全に対するセマグルチドとチルゼパチドの比較―大規模エミュレーション研究から(解説:加藤貴雄氏)

 本研究は、保険請求データベースを利用して、ランダム化比較試験(セマグルチドのSTEP-HFpEF DM試験とチルゼパチドのSUMMIT試験)の大規模エミュレーションを行った研究で、セマグルチドとチルゼパチドの直接の比較をした点が重要である。エミュレーションとは、「模倣」との意味で、観察データを用いてtarget trialを模倣する手法である。今回のランダム化比較試験2本の組み入れ・除外基準から条件を模倣したものであり、2型糖尿病がありBMI 27以上が模倣的な組み入れ基準である。心血管アウトカムに影響を及ぼさないとされているシタグリプチンを対照として、総死亡と心不全の悪化による入院の複合イベントにおけるセマグルチドとチルゼパチドの優位性を調べた後に、セマグルチドとチルゼパチドの比較も行っている。

学校給食の無償化で子どもの高血圧リスク低下

 米国で進められてきた学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧リスクの抑制につながっているとする研究結果が、「JAMA Network Open」に9月25日掲載された。米カリフォルニア大学アーバイン校のJessica Jones-Smith氏らの研究によるものであり、無償化を始めた学校では高血圧の子どもの割合が、5年間で約11%減少したと見込まれるという。研究者らは、給食無償化による栄養状態の改善に加えて、体重に及ぼした影響が、この改善を促進した可能性が高いとしている。  論文の上席著者であるJones-Smith氏は、「給食無償化は、高血圧リスクと密接な関連のある小児肥満の減少と関連している。より健康的な食事が直接的に血圧へ好ましい影響を与えることに加えて、BMIが高い子どもが減ることに伴う間接的影響という二つの経路で、高血圧リスクが抑制されたと言える」と解説している。なお、研究者らが背景説明の中で述べているところによると、小児期の高血圧は成人期まで継続することが多く、将来的に心臓病や腎臓病のリスクを高める可能性が高いとのことだ。

経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者においてβ遮断薬よりも臨床的に有効である(解説:原田和昌氏)

 Cohen、Braunwaldらの約60年前のエキスパートオピニオンと限定的なエビデンスにより、β遮断薬は症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の第1選択の治療として使い続けられてきた。一方、経口選択的心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenの上乗せは標準治療と比較して左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが第III相二重盲検比較試験であるSEQUOIA-HCM試験により示された。今回、スペイン・CIBERCVのGarcia-Pavia氏らMAPLE-HCM研究者たちは、HCMの治療においてβ遮断薬単剤投与とaficamtenの単剤投与との臨床的有益性を比較する目的で、国際共同第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験であるMAPLE-HCM試験を実施した。

機内における急病人の発生頻度は?~84の航空会社での大規模調査

 2025年には約50億人が民間航空機を利用すると予測されている。航空機内での急病(機内医療イベント)は、医療資源が限られ、専門的な治療へのアクセスが遅れるという制約の中で対応が必要となる。米国・デューク大学のAlexandre T. Rotta氏、MedAireのPaulo M. Alves氏らの研究グループは、84の航空会社が参加した大規模な国際データを分析し、機内医療イベントの発生頻度や、航空機の目的地変更につながる要因などを明らかにした。JAMA Network Open誌2025年9月29日号に掲載。

MSSA菌血症、セファゾリンvs.クロキサシリン/Lancet

 メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンと比較して有効性は非劣性で、忍容性は良好であることが示された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のCharles Burdet氏らが、大学病院を含むフランスの21施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「CloCeBa試験」の結果を報告した。セファゾリンは広く使用されているものの、MSSA菌血症の治療における有効性はこれまで臨床試験で検討されたことはなかった。結果を踏まえて著者は、「MSSA菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンの代替薬となりうる」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

左心耳閉鎖術?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の症例は、長期間の観察期間内の脳卒中リスクが高い。心房細動による血流うっ滞が血栓形成に寄与している可能性はある。血流うっ滞による血栓形成は、うっ滞が最も重症になる心耳から始まる可能性がある。そこで左心耳を閉じてしまえば心房細動の脳梗塞予防が可能かもしれないとの仮説につながる。カテーテルアブレーションを受ければ左房の内膜側に損傷ができるので血栓イベントリスクが上昇する。一時的に抗凝固薬を使用するのは血栓イベント予防に有効と考えられる。左心耳閉鎖が有効であるためには、アブレーションにより傷ついた内膜からの血栓が左心耳にて成長している必要がある。本研究では重篤な出血イベント発現リスクを仮説検証のエンドポイントにしている。全身の凝固機能が低下する抗凝固薬使用時には出血イベントリスクが増加する現実に、本研究でも抗凝固療法群の重篤な出血イベント発現リスクは18.1%と左心耳閉鎖群の8.5%よりも高かった。この結果は予想通りである。