循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

健康診断の新視点、筋肉量指標で高血圧リスクを見える化

 従来のBMIでは筋肉量と脂肪量の違いを反映できないという問題がある。今回、男性の除脂肪体重指数(LBMI)を用い、低LBMIが高血圧リスクの増加と関連するという研究結果が報告された。BMIだけでは捉えられないリスク評価の重要性を提示している。研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室の畔上達彦氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は11月10日付で「Hypertension Research」に掲載された。  高血圧は心血管疾患や慢性腎臓病の主要リスク因子であり、世界的に重要な公衆衛生課題となっている。肥満は高血圧リスクの主要因子とされるが、BMIでは脂肪量と除脂肪体重(筋肉量)を区別できず、正確なリスク評価には限界がある。除脂肪体重を正確に測定するには高コストの画像検査が必要だが、近年、身長・体重・ウエストなどから推定できる簡易LBMIが開発され、日常の健康診断データでも評価が可能になった。しかし、この簡易LBMIを用いた高血圧リスク評価はこれまで行われていない。本研究では、健康診断や医療請求データを用いて、男性のLBMIと高血圧発症リスクの関連を後ろ向きに解析した。

左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有益ではない(解説:佐田政隆氏)

急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、駆出率の低下を伴わない心筋梗塞後に対しても、現在の各国ガイドラインではβ遮断薬の使用を推奨している。しかし、その根拠となったエビデンスは、再灌流療法や、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの心保護薬の使用も一般的ではない1990年代までの臨床試験に基づくものであった。最近は、急性期再灌流療法の普及で、左室駆出率が良好なまま回復する症例が増え、本当にそのような場合に漫然と長期間β遮断薬を投与したほうがよいかどうかは、エビデンスがないのが現状であった。

マラソンの心臓への影響は?ランナーを10年追跡

 高強度かつ長時間の運動負荷が右室機能に及ぼす影響、運動誘発性の心筋トロポニンT(TnT)値の上昇と将来的な右室機能障害との関連は明らかになっていない。そこで、スイス・チューリッヒ大学のMichael Johannes Schindler氏らの研究グループは、市民マラソンランナーを対象とした10年間の縦断的コホート研究(Pro-MagIC研究)を実施した。その結果、フルマラソン直後には一過性の右室機能低下とTnT値の上昇が認められたものの、これらは数日で回復し、10年後の右室機能低下とは関連しないことが示された。本研究結果は、JAMA Cardiology誌オンライン版2025年12月10日号で報告された。

食事からのポリフェノール摂取は心臓の健康に有益

 紅茶、コーヒー、ベリー類、ココア、ナッツ類、全粒穀物、オリーブ油など、抗酸化作用を持つフェノールやポリフェノール(以下、まとめて「ポリフェノール」と表記)を豊富に含む食品を多く摂取することが、より健康的な血圧値やコレステロール値と関連し、心血管疾患(CVD)リスクスコアの低下にもつながり得ることが、新たな研究で明らかになった。なお、フェノールとは、主にベンゼン環にヒドロキシ基が結合した化合物の総称であり、このうちフェノール性水酸基を複数持つ化合物をポリフェノールと呼ぶ。先行研究では、ポリフェノールは心臓や脳、腸の健康に有益であることが示されている。  この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)栄養学分野のYong Li氏は、「この研究は、ポリフェノールを豊富に含む食品を定期的に食事に取り入れることが、心臓の健康を支えるシンプルで効果的な方法であることを示す強力なエビデンスだ」と述べている。詳細は、「BMC Medicine」に11月27日掲載された。

急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建と責任病変のみの治療を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。(解説:山地杏平氏)

急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建(complete revascularization)と責任病変のみの治療(culprit lesion-only PCI)を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。近年、血行動態が安定した急性心筋梗塞患者においては、完全血行再建を行ったほうが良いという報告が多くみられます。本解析では、そのような無作為化比較試験を統合した8,836例の症例を解析しており、その約88%はST上昇型心筋梗塞症例でした。その結果、心血管死および新規発症の心筋梗塞のいずれにおいても、完全血行再建を行った群で有意にリスクが低いことが示されました。急性心筋梗塞と多枝病変を有する患者において、責任病変のみを治療するよりも、非責任病変を含めた完全血行再建を行うほうが、再血行再建や、不安定狭心症による入院などのソフトエンドポイントのみならず、心血管死亡、心筋梗塞といった重大な臨床アウトカムを改善しうることが示唆されたといえます。

男性のビール腹は心不全リスクの可能性

 男性によく見られ、“ビール腹”と呼ばれることもある腹部肥満が、心不全のリスクと関連しているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で報告された。ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター(ドイツ)のJennifer Erley氏らが発表した。  この研究から、腹部肥満は心筋の肥厚と心室の縮小に関連していることが示された。研究者らによると、これらの変化は心不全リスクにつながるものと考えられるという。Erley氏は、「腹部肥満、つまりウエスト・ヒップ比(W/H比)が高い状態は、単にBMIが高い場合よりも、心臓リモデリングとの関連が強いようだ。心筋が厚くなるのに心臓の全体的な大きさは増えず、心臓の容積が小さくなる」と解説。そして、「心臓の心室が狭くなるため、心臓が送り出す血液の量は減少する。また、血液を送り出した後に心臓が弛緩し拡張する能力も低下する。それらの変化により、最終的には心不全につながる可能性がある」とのことだ。

大手術後の老年症候群発症は転帰を悪化させる

 せん妄、栄養失調、転倒、脱水症状などの、高齢者によく見られ、医師の診察や治療を必要とする多種多様な健康問題は、老年症候群と呼ばれる。新たな研究で、大手術後の老年症候群の発症は予後不良と関連することが明らかになった。手術後の回復期間中にこうした問題が生じた高齢者は、1年以内に死亡するリスクが高く、病院や介護施設での滞在期間が長くなることが示されたという。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのTimothy Pawlik氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Surgeons」に11月20日掲載された。  Pawlik氏は、「老年症候群は、『炭鉱のカナリア』のように、患者の潜在的な脆弱性を知らせる前兆となる可能性がある。こうした症状を加齢の当然の現象として片付けないことが極めて重要だ。これらは、入院中も退院後も患者がより綿密なモニタリングと適切なサポートを必要とすることを示す重要な警告サインなのだ」と述べている。

無症候性高度頸動脈狭窄症、薬物療法+CASで周術期脳卒中/死亡リスク減/NEJM

 無症候性の高度頸動脈狭窄症患者において、強化薬物療法単独と比較し、頸動脈ステント留置術(CAS)を追加すると、周術期脳卒中または死亡、あるいは4年以内の同側脳卒中の複合リスクが低下した。一方、頸動脈内膜剥離術(CEA)の追加では有意な効果は得られなかった。米国・メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らが、5ヵ国155施設で実施した2つの観察者盲検並行群間試験「Carotid Revascularization and Medical Management for Asymptomatic Carotid Stenosis Trials:CREST-2試験」の結果を報告した。薬物療法、CAS、CEAの進歩により、無症候性頸動脈狭窄症の適切な治療方針に疑義が生じている。強化薬物療法に血行再建術を追加することで、強化薬物療法単独より大きな効果が得られるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年11月21日号掲載の報告。

規則正しい就寝習慣が血圧に驚くべき効果

 毎晩、同じ時刻に就寝することで血圧を改善できる可能性のあることが、新たな研究で示された。就寝時間が不規則な人が、毎晩同じ時間に就寝することを2週間続けただけで、運動量の増加や塩分摂取量の削減と同等の降圧効果を得ることができたという。米オレゴン健康科学大学(OHSU)産業保健学准教授のSaurabh Thosar氏らによるこの研究結果は、「Sleep Advances」に11月17日掲載された。研究グループは、「これは、多くの高血圧患者の血圧をコントロールするための、単純だがリスクの低い補助的な戦略になるかもしれない」と述べている。  この研究では、高血圧を有する11人の成人(男性4人、平均年齢53歳)を対象に、まずベースラインとして、1週間にわたり活動量計で就寝時間や睡眠パターンを記録するとともに、24時間の自由行動下血圧を測定した。次に、試験参加者には2週間にわたり同じ時刻に就寝してもらい、その後、再度、24時間自由行動下血圧を測定した。その上で、就寝時間や入眠時間のばらつき(標準偏差)を計算し、血圧の「最小可検変化量(MDC95)」を使って個人レベルで血圧がどのくらい変化したかを確認した。

心原性ショックへのlevosimendan、ECMO離脱を促進せず/JAMA

 静脈-動脈体外式膜型人工肺(VA-ECMO)による管理を受けている重篤だが可逆性の心原性ショック患者の治療において、強心血管拡張薬levosimendanの早期投与はプラセボと比較して、ECMO離脱までの時間を短縮せず、集中治療室(ICU)入室期間や60日死亡率に差はないが、心室性不整脈の頻度が高いことが、フランス・ソルボンヌ大学のAlain Combes氏らLEVOECMO Trial Group and the International ECMO Network(ECMONet)が実施した「LEVOECMO試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月1日号で報告された。