循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

拡張型心筋症患者に対する早期心リハの有用性、傾向スコアマッチングを用いた全国規模解析

 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)は、心臓の筋肉が弱まり、心臓が拡張して十分に血液を送り出せなくなる病気で、心不全の主要な原因の一つとされる。このDCM患者に対し、入院早期から心臓リハビリテーション(心リハ)を開始すると、90日死亡率が有意に低下することが、日本の全国入院データベースを用いた研究で明らかになった。解析では、早期に心リハを始めた患者群では早期から心リハを受けなかった群と比べて90日以内の死亡リスクが低く、退院時の日常生活動作(ADL)もやや高値であったという。研究は大阪大学/奈良県立医科大学の安福祐一氏らによるもので、詳細は10月24日付で「Scientific Reports」に掲載された。 DCMは、心筋の収縮低下と左室拡張を特徴とし、一部の患者は慢性心不全や急性増悪を繰り返す進行性心筋疾患である。

ASCVD合併2型DMのCVアウトカム、チルゼパチドvs.デュラグルチド/NEJM

 2型糖尿病とアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する患者の治療において、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイントに関し、チルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が認められた。オーストラリア・Monash UniversityのStephen J. Nicholls氏らSURPASS-CVOT Investigatorsが、30ヵ国640施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照非劣性試験の結果を報告した。チルゼパチドはGLP-1受容体およびGIP受容体のデュアルアゴニストで、血糖コントロールと体重において好ましい効果をもたらすが、心血管アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌2025年12月18・25日号掲載の報告。

セマグルチドは抗肥満薬から第2のスタチンになりうるか?(解説:住谷哲氏)

セマグルチド注2.4mgは、抗肥満薬(商品名:ウゴービ)としてわが国でも薬価収載されている。本論文はASCVDの既往を有する肥満患者(2型糖尿病患者は含まれていない)に対するセマグルチドの有用性を、MACE(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中および心血管死の複合)を主要評価項目として評価したSELECT試験の事前指定された解析に関する報告である。本解析は、試験開始時の肥満指標adiposity measures(体重および腹囲)、試験開始後20週までの肥満指標の変化および試験終了時(104週)までの肥満指標の変化とMACEリスクとの関連を明らかにすることを目的とした。

疼痛治療薬の副作用が心不全の誤診を招く?

 オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。  ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。

健康診断の新視点、筋肉量指標で高血圧リスクを見える化

 従来のBMIでは筋肉量と脂肪量の違いを反映できないという問題がある。今回、男性の除脂肪体重指数(LBMI)を用い、低LBMIが高血圧リスクの増加と関連するという研究結果が報告された。BMIだけでは捉えられないリスク評価の重要性を提示している。研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室の畔上達彦氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は11月10日付で「Hypertension Research」に掲載された。  高血圧は心血管疾患や慢性腎臓病の主要リスク因子であり、世界的に重要な公衆衛生課題となっている。肥満は高血圧リスクの主要因子とされるが、BMIでは脂肪量と除脂肪体重(筋肉量)を区別できず、正確なリスク評価には限界がある。除脂肪体重を正確に測定するには高コストの画像検査が必要だが、近年、身長・体重・ウエストなどから推定できる簡易LBMIが開発され、日常の健康診断データでも評価が可能になった。しかし、この簡易LBMIを用いた高血圧リスク評価はこれまで行われていない。本研究では、健康診断や医療請求データを用いて、男性のLBMIと高血圧発症リスクの関連を後ろ向きに解析した。

左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有益ではない(解説:佐田政隆氏)

急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、駆出率の低下を伴わない心筋梗塞後に対しても、現在の各国ガイドラインではβ遮断薬の使用を推奨している。しかし、その根拠となったエビデンスは、再灌流療法や、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの心保護薬の使用も一般的ではない1990年代までの臨床試験に基づくものであった。最近は、急性期再灌流療法の普及で、左室駆出率が良好なまま回復する症例が増え、本当にそのような場合に漫然と長期間β遮断薬を投与したほうがよいかどうかは、エビデンスがないのが現状であった。

マラソンの心臓への影響は?ランナーを10年追跡

 高強度かつ長時間の運動負荷が右室機能に及ぼす影響、運動誘発性の心筋トロポニンT(TnT)値の上昇と将来的な右室機能障害との関連は明らかになっていない。そこで、スイス・チューリッヒ大学のMichael Johannes Schindler氏らの研究グループは、市民マラソンランナーを対象とした10年間の縦断的コホート研究(Pro-MagIC研究)を実施した。その結果、フルマラソン直後には一過性の右室機能低下とTnT値の上昇が認められたものの、これらは数日で回復し、10年後の右室機能低下とは関連しないことが示された。本研究結果は、JAMA Cardiology誌オンライン版2025年12月10日号で報告された。

食事からのポリフェノール摂取は心臓の健康に有益

 紅茶、コーヒー、ベリー類、ココア、ナッツ類、全粒穀物、オリーブ油など、抗酸化作用を持つフェノールやポリフェノール(以下、まとめて「ポリフェノール」と表記)を豊富に含む食品を多く摂取することが、より健康的な血圧値やコレステロール値と関連し、心血管疾患(CVD)リスクスコアの低下にもつながり得ることが、新たな研究で明らかになった。なお、フェノールとは、主にベンゼン環にヒドロキシ基が結合した化合物の総称であり、このうちフェノール性水酸基を複数持つ化合物をポリフェノールと呼ぶ。先行研究では、ポリフェノールは心臓や脳、腸の健康に有益であることが示されている。  この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)栄養学分野のYong Li氏は、「この研究は、ポリフェノールを豊富に含む食品を定期的に食事に取り入れることが、心臓の健康を支えるシンプルで効果的な方法であることを示す強力なエビデンスだ」と述べている。詳細は、「BMC Medicine」に11月27日掲載された。

急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建と責任病変のみの治療を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。(解説:山地杏平氏)

急性心筋梗塞に多枝冠動脈疾患を合併する患者を対象に、完全血行再建(complete revascularization)と責任病変のみの治療(culprit lesion-only PCI)を比較した患者レベルのメタ解析が、Lancet誌に報告されました。近年、血行動態が安定した急性心筋梗塞患者においては、完全血行再建を行ったほうが良いという報告が多くみられます。本解析では、そのような無作為化比較試験を統合した8,836例の症例を解析しており、その約88%はST上昇型心筋梗塞症例でした。その結果、心血管死および新規発症の心筋梗塞のいずれにおいても、完全血行再建を行った群で有意にリスクが低いことが示されました。急性心筋梗塞と多枝病変を有する患者において、責任病変のみを治療するよりも、非責任病変を含めた完全血行再建を行うほうが、再血行再建や、不安定狭心症による入院などのソフトエンドポイントのみならず、心血管死亡、心筋梗塞といった重大な臨床アウトカムを改善しうることが示唆されたといえます。

男性のビール腹は心不全リスクの可能性

 男性によく見られ、“ビール腹”と呼ばれることもある腹部肥満が、心不全のリスクと関連しているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で報告された。ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター(ドイツ)のJennifer Erley氏らが発表した。  この研究から、腹部肥満は心筋の肥厚と心室の縮小に関連していることが示された。研究者らによると、これらの変化は心不全リスクにつながるものと考えられるという。Erley氏は、「腹部肥満、つまりウエスト・ヒップ比(W/H比)が高い状態は、単にBMIが高い場合よりも、心臓リモデリングとの関連が強いようだ。心筋が厚くなるのに心臓の全体的な大きさは増えず、心臓の容積が小さくなる」と解説。そして、「心臓の心室が狭くなるため、心臓が送り出す血液の量は減少する。また、血液を送り出した後に心臓が弛緩し拡張する能力も低下する。それらの変化により、最終的には心不全につながる可能性がある」とのことだ。