循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenは症候性の閉塞性肥大型心筋症患者においてβ遮断薬よりも臨床的に有効である(解説:原田和昌氏)

 Cohen、Braunwaldらの約60年前のエキスパートオピニオンと限定的なエビデンスにより、β遮断薬は症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の第1選択の治療として使い続けられてきた。一方、経口選択的心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenの上乗せは標準治療と比較して左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが第III相二重盲検比較試験であるSEQUOIA-HCM試験により示された。今回、スペイン・CIBERCVのGarcia-Pavia氏らMAPLE-HCM研究者たちは、HCMの治療においてβ遮断薬単剤投与とaficamtenの単剤投与との臨床的有益性を比較する目的で、国際共同第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験であるMAPLE-HCM試験を実施した。

機内における急病人の発生頻度は?~84の航空会社での大規模調査

 2025年には約50億人が民間航空機を利用すると予測されている。航空機内での急病(機内医療イベント)は、医療資源が限られ、専門的な治療へのアクセスが遅れるという制約の中で対応が必要となる。米国・デューク大学のAlexandre T. Rotta氏、MedAireのPaulo M. Alves氏らの研究グループは、84の航空会社が参加した大規模な国際データを分析し、機内医療イベントの発生頻度や、航空機の目的地変更につながる要因などを明らかにした。JAMA Network Open誌2025年9月29日号に掲載。

MSSA菌血症、セファゾリンvs.クロキサシリン/Lancet

 メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンと比較して有効性は非劣性で、忍容性は良好であることが示された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のCharles Burdet氏らが、大学病院を含むフランスの21施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「CloCeBa試験」の結果を報告した。セファゾリンは広く使用されているものの、MSSA菌血症の治療における有効性はこれまで臨床試験で検討されたことはなかった。結果を踏まえて著者は、「MSSA菌血症の治療において、セファゾリンはクロキサシリンの代替薬となりうる」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

左心耳閉鎖術?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の症例は、長期間の観察期間内の脳卒中リスクが高い。心房細動による血流うっ滞が血栓形成に寄与している可能性はある。血流うっ滞による血栓形成は、うっ滞が最も重症になる心耳から始まる可能性がある。そこで左心耳を閉じてしまえば心房細動の脳梗塞予防が可能かもしれないとの仮説につながる。カテーテルアブレーションを受ければ左房の内膜側に損傷ができるので血栓イベントリスクが上昇する。一時的に抗凝固薬を使用するのは血栓イベント予防に有効と考えられる。左心耳閉鎖が有効であるためには、アブレーションにより傷ついた内膜からの血栓が左心耳にて成長している必要がある。本研究では重篤な出血イベント発現リスクを仮説検証のエンドポイントにしている。全身の凝固機能が低下する抗凝固薬使用時には出血イベントリスクが増加する現実に、本研究でも抗凝固療法群の重篤な出血イベント発現リスクは18.1%と左心耳閉鎖群の8.5%よりも高かった。この結果は予想通りである。

過体重/肥満へのセマグルチド、心血管リスク低下は体重減少に依存せず/Lancet

 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJohn Deanfield氏らは、41ヵ国804施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「SELECT試験」の事前に規定されたサブ解析において、セマグルチドの心血管アウトカムに対する有益性はベースラインにおける肥満指標および体重減少に依存せず、ウエスト周囲長との関連もわずかであったことを明らかにした。SELECT試験では、心血管疾患既往で過体重または肥満であるが糖尿病の既往のない患者において、セマグルチドが主要有害心血管イベント(MACE)を減少させることが示されていた。著者は、「本解析の結果は、セマグルチドの肥満低減以外の何らかのメカニズムによる有益性を示唆するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2025年10月22日掲載の報告。

心室頻拍に定位放射線治療が有効か

 標的となる部分に放射線を当てて治療する定位放射線治療(以下、放射線治療)が、危険性の高い不整脈の一種である心室頻拍に対する安全性の高い治療法になり得ることが、新たな研究で示された。米セントルイス・ワシントン大学医学部放射線腫瘍科のShannon Jiang氏らによると、放射線治療の効果は、標準的な治療法だが複雑な手術であるカテーテルアブレーションと同等であったという。また、放射線治療は、カテーテルアブレーションと比べて死亡や重篤な副作用が少ないことも示された。詳細は、「International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics」に9月29日掲載されるとともに、米国放射線腫瘍学会(ASTRO 2025、9月29日~10月1日、米サンフランシスコ)でも発表された。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。

「若者は管理職になりたがらない」は医師にも当てはまる?/医師1,000人アンケート

 「最近の若手は出世意欲がない」「管理職になりたがらない」と言われることがあり、20〜40代の会社員を対象とした調査では、約71%が出世を望んでいなかったという報告もある。これは医師にも当てはまる傾向なのだろうか?若手医師が管理職になりたいのかどうか、また仕事で重視することは何かを調査するため、CareNet.comでは20~30代の会員医師1,006人を対象に、管理職への昇進・昇格意向に関するアンケートを行った(実施:2025年9月18日)。なお、本アンケートにおける「管理職」とは、講師以上、医長以上(または相当)のポジションを指すこととした。

心血管疾患の発症前にはほぼ常に警告サインあり

 冠動脈疾患(CHD)や心不全(HF)、脳卒中などの心血管疾患(CVD)の発症前には、少なくとも1つの警告サインが現れているようだ。CVDの発症前には、以前よりCVDの主なリスク因子とされている高血圧、脂質異常症、高血糖、および喫煙の4つの因子のうちの少なくとも1つが99%以上の確率で存在していることが、新たな研究で示された。米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のPhilip Greenland氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に9月29日掲載された。  研究グループは、この結果は、CVDは予兆なく発症することが多いという一般的な考え方を否定するものだとしている。Greenland氏は、「この研究は、CVDの発症前に1つ以上の最適ではないリスク因子にさらされる確率がほぼ100%であることを、極めて強い説得力をもって示している」と述べている。同氏は、「今後は、治療が容易ではなく因果関係もない他の要因を追求するのではなく、これらの修正可能なリスク因子をコントロールする方法を見つけることに、これまで以上に力を入れるべきだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。

世界の疾病負担とリスク因子、1990~2023年の状況/Lancet

 2010年以降、感染性・母子新生児・栄養関連(CMNN)疾患および多くの環境・行動リスク因子による疾病負担は大きく減少した一方で、人口の増加と高齢化が進む中で、代謝リスク因子および非感染性疾患(NCD)に起因する障害調整生存年数(DALY)は著しく増加していることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Disease and Injury and Risk Factor Collaboratorsの解析で示された。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。