循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

どんな量でも飲酒は血圧を高める可能性あり

 量に関係なく、飲酒は血圧を上昇させる可能性があるようだ。新たな研究で、たとえわずかであっても飲酒量の増加は血圧の上昇と関連していることが明らかになった。この研究結果を報告した聖路加国際病院の鈴木隆宏氏らは、「飲酒をやめる、または飲酒量を減らすことで血圧が下がり、脳卒中や心疾患のリスクが低下する可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に10月22日掲載された。  これまで、少しの飲酒なら血圧に大きな影響はないと考えられていたが、この研究結果はそうした考えに疑問を投げかけるものだ。鈴木氏は、「血圧に関しては、飲酒量が少なければ少ないほど良好な状態になることが、われわれの研究で示された。そして、飲酒量が多いと血圧は高くなる」と指摘。「これまでは、少量のアルコールであれば問題はないだろうと考えられてきた。しかし、われわれの研究結果は、アルコールは全く摂取しないのがベストであることを示している。つまり、たとえ少量の飲酒であっても、禁酒することが男女を問わず心臓の健康に有益な可能性がある」と米国心臓病学会(ACC)のニュースリリースの中で述べている。

術中血圧管理の個別化は可能か?―IMPROVE-multi試験と今後の展望(解説:三浦伸一郎氏)

術中低血圧は、術後に急性腎障害や心筋傷害などの臓器不全発症のリスクを高める研究が多く報告されてきた。したがって、術中・周術期の血圧管理には、臓器保護の面から見るときわめて重要なテーマであり、各々の患者の術前血圧などから目標を定めるという個別化医療が検討されている。しかし、血圧の最適化によって低血圧は減少するが、術後合併症も減少したという報告は限られている。術中の血圧管理は可能であるが、どの程度、臨床的改善に直結するかは不明であった。

週末まとめて歩くvs.日々歩く、メタボ予防効果が高いのは?

 わが国では健康増進のために1日8,000歩以上歩くことが推奨されているが、1日平均歩数が同じ場合、週末にまとめて歩く人と日々歩く人で効果は同等なのだろうか。今回、愛媛大学の山本 直史氏らは、中高年の日本人において連続した7日間の歩数を調査し、メタボリックシンドロームとの関連を検討した結果、8,000歩以上の日数の割合より、7日間の総歩数がメタボリックシンドロームとの関連が強い一方、1日平均歩数が8,000~10,000歩の人では、8,000歩以上達成した日数の割合が高いほどメタボリックシンドロームのリスクが低いことが示唆された。Obesity Research & Clinical Practice誌オンライン版2025年11月2日号に掲載。

がん患者の死亡の要因は大血管への腫瘍の浸潤?

 がん患者の命を奪う要因は、がんそのものではなく、腫瘍細胞や腫瘍が体内のどこに広がるかであることを示した研究結果が報告された。腫瘍が主要な血管に浸潤すると血液凝固が起こり、それが臓器不全につながる可能性のあることが明らかになったという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMatteo Ligorio氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に10月16日掲載された。  Ligorio氏らは、これが、がんが進行するとすぐに死亡する患者がいる一方で、がんが全身に転移していても生き続ける人がいる理由だと述べている。Ligorio氏は、「われわれが解明しようとしていた大きな疑問は、がん患者の命を奪うものは何なのか。なぜがん患者は、6カ月前でも6カ月後でもなく、特定の日に死亡するのかということだった」と同医療センターのニュースリリースの中で述べている。

夜間照明が心疾患リスク上昇に影響

 夜間の光曝露は概日リズムの乱れを引き起こし、心血管疾患における予後不良の危険因子として知られている。今回、オーストラリア・フリンダース大学のDaniel P. Windred氏らの研究で、夜間の光曝露は40歳以上の心血管疾患発症の有意な危険因子であることが示唆された。JAMA Network Open誌2025年10月23日号掲載の報告。  研究者らは、昼夜の光曝露による心血管疾患発症の関連、および光曝露と心血管疾患関連に影響する因子(遺伝的感受性、性別、年齢など)を評価するため、前向きコホート研究を実施。UKバイオバンク参加者の心血管疾患の記録を9.5年間(2013年6月~2022年11月)にわたり追跡調査し、2024年9月~2025年7月にデータ解析を行った。

心房中隔欠損に対する閉鎖栓、生体吸収性vs.金属製/JAMA

 経皮的心房中隔欠損(ASD)閉鎖術に用いる閉鎖栓について、生体吸収性閉鎖栓は金属製閉鎖栓に対して非劣性であり、2年でほぼ完全に分解されたことが、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのWenbin Ouyang氏らによる多施設共同非盲検非劣性無作為化試験の結果で示された。ASD閉鎖術に使用される永久的な金属製閉鎖栓は、晩期合併症のリスクと関連しており、左房へのアクセスの妨げとなる。生体吸収性閉鎖栓は、これらの課題に対処できる可能性を有しているが、これまで無作為化試験での検証は行われていなかった。JAMA誌オンライン版2025年10月23日号掲載の報告。

左心耳閉鎖手技(LAAO)の行く末を占う(OPTION試験)(解説:香坂俊氏)

このOPTION試験は、心房細動(AF)アブレーションを受け、かつCHA2DS2-VAScが高い患者を対象に、「その後もふつうに抗凝固薬を飲み続けるか」「左心耳閉鎖手技(LAAO)に切り替えるか」を1:1で比較した国際RCTとなります。1,600例を組み入れ、LAAO群はWATCHMANで閉鎖した後所定期間だけ抗血栓を行い、その後半年ほどで中止し、対照群はDOACを含む標準的な内服抗凝固薬を続けるという設計で行われました。結果として、主要安全エンドポイント(手技に直接関係しない大出血+臨床的に問題となる非大出血)は36ヵ月でLAAO 8.5%vs.OAC 18.1%でLAAO群に少なく(p<0.001)、主要有効性エンドポイント(全死亡・脳卒中・全身性塞栓の複合)は5.3%vs.5.8%で非劣性となりました。

手術・TEER非適応の僧帽弁逆流症、経カテーテル僧帽弁置換術が有効/Lancet

 米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのMayra E. Guerrero氏らENCIRCLE Trial Executive Committee and Study Investigatorsは、国際的なpivotal試験「ENCIRCLE試験」において、外科手術および経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)の適応とならない僧帽弁逆流症患者では、SAPIEN M3システム(Edwards Lifesciences製)を用いた新規の経皮・経中隔的なカテーテル僧帽弁置換術(TMVR)により、僧帽弁逆流が効果的に軽減し、合併症や死亡の割合も低下することを示した。Lancet誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。  ENCIRCLE試験は、6ヵ国(米国、カナダ、英国、オランダ、イスラエル、オーストラリア)の56施設で実施した前向き単群試験であり、2020年6月~2023年10月に、外科手術およびTEERが適応でない、症候性の中等度~重度、または重度の僧帽弁逆流症の成人(年齢18歳以上)患者を登録した(Edwards Lifesciencesの助成を受けた)。

朝食とメタボ各要素の関連~メタ解析

 朝食を食べない人では、食べる人と比べてメタボリックシンドローム(MetS)、腹部肥満、高血圧症、高脂血症、高血糖のリスクが有意に高いことが、中国・Ningxia Medical UniversityのBowen Yang氏らによって報告された。Nutrients誌2025年10月3日号掲載の報告。  これまで多くの研究で特定の食品や食習慣とMetSとの関連が検討されてきたが、朝食など食事頻度に関するエビデンスは一貫していなかった。そこで研究グループは、一般集団を対象に、朝食を食べない人と食べる人との間でMetSおよびその構成要素(腹部肥満、高血圧症、高脂血症、高血糖など)の発生・有病リスクを比較するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

隠れ肥満は心筋梗塞や脳卒中リスクを高める

 たとえ健康的な体重であっても、腹部や肝臓の奥深くに脂肪が蓄積すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが静かに高まる可能性があるようだ。内臓脂肪(visceral adipose tissue;VAT)と、VATほどではないが肝脂肪(hepatic fat;HF)は、頸動脈のアテローム性硬化リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。マクマスター大学(カナダ)保健科学部のSonia Anand氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に10月17日掲載された。  BMIが正常範囲内の人でも、このような隠れ肥満である可能性はある。Anand氏は、「見た目だけで必ずしもVATまたはHFの有無を判断できるわけではない」とマクマスター大学のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「VATやHFは代謝的に活発で危険だ。太り気味でないことが明らかな人でも、この種の脂肪は炎症や動脈損傷と関連している。だからこそ、肥満と心血管リスクの評価方法を見直すことが非常に重要なのだ」と付け加えている。