循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

ベルイシグアト、急性増悪のないHFrEFのイベント抑制効果は?/Lancet

 急性増悪の認められない左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、ベルイシグアトは複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院までの期間)のリスクを低下させなかったことが、米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らVICTOR Study Groupによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VICTOR試験」の結果で報告された。ただし、心血管死についてプラセボ群よりベルイシグアト群で少なかったことが観察されている。ベルイシグアトは、急性増悪が認められたHFrEF患者において、心血管死または心不全による入院リスクを軽減するための使用が認められている。VICTOR試験の目的は、急性増悪の認められないHFrEF患者におけるベルイシグアトの有効性を評価することであった。Lancet誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。

降圧薬で腸管血管性浮腫の報告、重大な副作用を改訂/厚労省

 2025年9月9日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬で重大な副作用が改められた。  今回、ACE阻害薬、ARB、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)および直接的レニン阻害薬の腸管血管性浮腫について評価した。その結果、「血管性浮腫の一種である腸管血管性浮腫についても、潜在的なリスクである可能性があること」「国内外副作用症例において、腸管血管性浮腫に関連する報告が認められていない薬剤もあるものの、複数の薬剤において腸管血管性浮腫との因果関係が否定できない症例が認められていること」「医薬品医療機器総合機構で実施したVigiBaseを用いた不均衡分析において、複数のACE阻害薬およびARBで『腸管血管性浮腫』に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かったこと」を踏まえ、改訂に至った。

小児心臓弁膜症、部分心臓移植は実現可能か/JAMA

 現在、弁形成術の適応とならない小児の心臓弁膜症の治療に使用されている、死亡ドナー由来の同種組織(ホモグラフト)のインプラントは成長能力や自己修復能力を持たないことから、これらの患者はインプラント交換のために何度も再手術を受けることになる。米国・デューク大学のDouglas M. Overbey氏らは、先天性心臓弁膜症患者における成長能力を有する心臓弁を用いた部分心臓移植(=生体弁置換術)の初期の結果を記述し、実行可能性、安全性、有効性を評価する症例集積研究を実施した。JAMA誌オンライン版2025年8月27日号掲載の報告。

心房細動と動脈硬化、MRIで異なる脳血管病変示す/ESC2025

 心房細動(AF)とアテローム性動脈硬化症(以下、動脈硬化)は、一般集団と比較して脳血管病変の発生率を高める。今回、AF患者は動脈硬化患者と比較して、非ラクナ型脳梗塞、多発脳梗塞、重度の脳室周囲白質病変の発生頻度が高いことが明らかになった。本研究結果はカナダ・マクマスター大学のTina Stegmann氏らが8月29日~9月1日にスペイン・マドリードで開催されたEuropean Society of Cardiology 2025(ESC2025、欧州心臓病学会)の心房細動のセッションで発表し、European Heart Journal誌オンライン版2025年8月29日号に同時掲載された。

厳格な血圧コントロールは心臓の健康だけでなく費用対効果も改善

 厳格な血圧コントロールは心血管疾患のリスクが高い患者の健康だけでなく、医療費の費用対効果にも良い影響をもたらすことが、新たな研究で示された。収縮期血圧(SBP)の目標値を120mmHg未満に設定することは、それよりも高い目標値を設定する場合と比べて、より多くの心筋梗塞や脳卒中、心不全、そのほかの心疾患の予防につながるほか、費用対効果もより優れていることが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のKaren Smith氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月19日掲載された。

全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(以下、JSH2025)を8月29日に発刊した。6年ぶりとなる今回の改訂にあたり、大屋 祐輔氏(琉球大学名誉教授/高血圧管理・治療ガイドライン2025作成委員長)と苅尾 七臣氏(自治医科大学循環器内科学部門 教授/日本高血圧学会 理事長)が降圧目標や治療薬の位置付けと選択方法などについて、7月25日に開催されたプレスセミナーで解説した。

心不全入院へのダパグリフロジンの効果~DAPA ACT HF-TIMI 68試験/ESC2025

 SGLT2阻害薬は、外来での心不全治療において心血管死または心不全増悪のリスク低減に寄与するが、心不全による入院での投与開始データは限定的である。今回、ダパグリフロジンによるさまざまな臨床研究を行っているTIMI Study GroupがDAPA ACT HF-TIMI 68試験を実施。その結果、ダパグリフロジンを入院中に開始してもプラセボと比較して2ヵ月にわたる心血管死または心不全悪化リスクを有意に低下させなかった。ただし、3試験のメタ解析からSGLT2阻害薬が心血管死または心不全悪化の早期リスクと全死亡リスクを有意に低下させることが明らかになった。

より長く、より速く歩くことが心臓の健康に有益

 毎日の散歩の距離を増やして歩くペースを上げると、高血圧に関連する心臓病や脳卒中のリスクを減らすのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。1日の歩数が2,300歩程度の場合と比較して、1,000歩増えるごとに心筋梗塞、心不全、脳卒中のリスクが低下することが明らかになったという。シドニー大学(オーストラリア)マッケンジー・ウェアラブル研究ハブ所長のEmmanuel Stamatakis氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Preventive Cardiology」に8月6日掲載された。Stamatakis氏は、「これらの研究結果は、たとえ一般に推奨されている目標である1日1万歩を下回る運動量であっても、身体活動を行うことが有益であることを裏付けている」と欧州心臓病学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。

口の中の健康状態が生活習慣病リスクを高める可能性

 口の中の健康状態が良くないことと、高血糖や脂質異常症、腎機能低下など、さまざまな生活習慣病のリスクの高さとの関連性が報告された。藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座の吉田光由氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Oral Rehabilitation」に4月17日掲載され、7月10日に同大学のサイト内にプレスリリースが掲載された。  この研究では、機能歯数(咀嚼に役立っている歯の数)や舌苔の付着レベルなどが、空腹時血糖値やHbA1c、血清脂質値などと関連していることが明らかになった。吉田氏はプレスリリースの中で、「われわれの研究結果は全体として、口腔機能の低下が生活習慣病のリスクとなり得ることを示唆している。よって良好な口腔の健康を維持することは、全身の健康を維持するための第一歩と考えられる」と述べている。

あなたの「心臓年齢」は何歳?

 「心臓年齢」を算出するための新たなツールを用いた研究から、多くの米国人の心臓の生理学的年齢は暦年齢よりも高く、特に男性では女性よりも心臓の老化が進んでいることが明らかになった。ツールを開発し、研究結果を報告した米ノースウェスタン大学循環器疫学教授のSadiya Khan氏らは、人々にそれぞれの心臓年齢を伝えることで、より健康的な生活習慣や治療に対する意識向上につながる可能性があるとの見方を示している。詳細は、「JAMA Cardiology」に7月30日掲載された。  Khan氏は、「心筋梗塞や脳卒中、心不全のリスクを下げる薬による治療を受けるべき人の多くが、実際にはそのような治療を受けていない。この新たな心臓年齢の計算ツールが、予防についての議論を促し、最終的にはあらゆる人の健康の向上に役立つことを期待している」と述べている。