循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

中年期の高感度トロポニンI高値が認知症と関連/Eur Heart J

 中年期の高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)高値は、その後の認知症発症リスクの上昇、認知機能低下の加速、脳容積の減少と関連していたことが示された。本結果は、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのYuntao Chen氏らが実施した前向きコホート研究「Whitehall II研究」で示され、European Heart Journal誌オンライン版2025年11月6日号で報告された。  研究グループは、Whitehall II研究の参加者のうち、ベースライン時(1997~99年)に45~69歳で、認知症および心血管疾患の既往がなく、hs-cTnI値が得られた5,985例を対象として解析を行った。hs-cTnI値に基づき、参加者を4群(2.5ng/L未満[定量下限未満:参照群]、2.5~3.4ng/L、3.5~5.2ng/L、5.2ng/L超)に分類した。主要評価項目は認知症の発症とした。認知機能の推移および脳MRI画像指標(2012~16年のサブ解析:641例)についても評価した。また、認知症発症例と非発症例(年齢、性別、教育歴でマッチング)を1:4の割合でマッチングさせたコホート内症例対照研究により、認知症診断前のhs-cTnI値の長期的推移を検討した。

夜間の人工光が心臓の健康に悪影響を与える

 人工的な光による夜間の過剰な照明の悪影響、いわゆる“光害”が、心臓病のリスクを高めることを示すデータが報告された。米マサチューセッツ総合病院のShady Abohashem氏らの研究によるもので、米国心臓協会(AHA)年次学術集会(AHA Scientific Sessions 2025、11月7~10日、ニューオーリンズ)で発表された。  この研究の解析対象は、2005~2008年に同院でPET検査またはCT検査を受けた466人(年齢中央値55歳、男性43%)。光害のレベルは、人工衛星のデータに基づき各地の夜間の人工光の強さを割り出したデータベースと、研究参加者の居住地住所を照らし合わせて把握した。

トランスジェンダー女性のホルモン治療は心血管リスクを高めない

 トランスジェンダー女性が、男性から女性への性別移行のために女性ホルモンの一種であるエストラジオールを使用しても、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることはないことが、新たな研究で示された。それどころか、トランスジェンダー女性に対するホルモン治療は、生まれつきの性別と性自認が一致するシスジェンダー男性と比べて、心臓や血管に対する保護的な効果がある可能性が示されたという。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のLieve Mees van Zijverden氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に11月4日掲載された。

1日1杯のコーヒーは心房細動を予防する?(解説:名郷直樹氏)

コーヒーは紅茶、日本茶と並び、日本でも最もよく飲まれているカフェイン含有飲料であるが、カフェインの依存性や不整脈に対して避けるべきものとして扱われてきた歴史がある。しかし、カフェインと不整脈の関係を検討した研究結果は必ずしも一致したものではなく、2023年にはカフェインと上室性期外収縮に必ずしも関連が認められなかったというランダム化比較試験も発表されている。このように関連が不確実な状況を踏まえて行われたのが、今回のコーヒーと心房細動の再発の関連をみたランダム化比較試験である。電気的除細動術予定で日頃コーヒーを飲んでいる患者を対象とし、1日1杯以上のコーヒーを飲むグループと、コーヒーを6ヵ月間禁止するグループを比較して、心房細動と心房粗動の発生を1次アウトカムとした、プラセボを使わず、アウトカムの評価をマスキングしたProspective Randomized Open Blinded Endpoint Study:PROBE Studyである。

血圧コントロールに地域差、降圧目標達成が高い/低い都道府県は?/東北医科薬科大ほか

 日本における降圧治療開始後の血圧コントロール状況には、地域間で格差が存在し、降圧目標達成割合は医師の偏在や脳血管疾患死亡と関連していることが、岩部 悠太郎氏(東北医科薬科大学)らによる大規模なリアルワールドデータ解析で示された。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、年齢にかかわらず降圧目標を「130/80mmHg未満(診察室血圧)」としているが、本研究では治療開始後にこの目標を達成できた患者は26.7%にとどまった。本研究結果は、Hypertension Research誌オンライン版2025年11月18日号で報告された。

ココアやベリー類は座位行動による血管への悪影響を抑える?

 熱いココアや紅茶、リンゴ、ボウルいっぱいのベリー類は、ソファでゴロゴロしている生活やデスクワークをする人の心臓の健康を守るのに役立つかもしれない。これらの食品や飲み物にはフラバノールと呼ばれる物質が豊富に含まれており、長時間の座位行動に起因する上肢・下肢の血管の問題を予防する可能性のあることが示された。英バーミンガム大学栄養科学分野のCatarina Rendeiro氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Physiology」に10月29日掲載された。Rendeiro氏は、「座っている間にフラバノールを多く含む食べ物や飲み物を摂取することは、活動不足が血管系に及ぼす影響を軽減する良い方法である」と述べている。

アブレーション後のAF患者、長期DOAC投与は必要か/NEJM

 1年以上前に心房細動に対するカテーテルアブレーションが成功している脳卒中リスク因子を有する患者において、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)リバーロキサバンの投与は抗血小板薬アスピリンと比較して、3年後の時点での脳卒中、全身性塞栓症、新規潜因性塞栓性脳卒中の複合アウトカムの発生率を低減せず、大出血の頻度は同程度だが、小出血および臨床的に重要な非大出血の発生率が高いことが示された。カナダ・McGill UniversityのAtul Verma氏らOCEAN Investigatorsが国際的な臨床試験「OCEAN試験」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。

75歳以上における抗凝固薬と出血性脳卒中の関連~日本の後ろ向きコホート

 高齢者における抗凝固薬使用と出血性脳卒中発症の関連を集団ベースで検討した研究は少ない。今回、東京都健康長寿医療センター研究所の光武 誠吾氏らが、傾向スコアマッチング後ろ向きコホート研究で検討した結果、抗凝固薬を処方された患者で出血性脳卒中による入院発生率が高く、ワルファリン処方患者のほうが直接経口抗凝固薬(DOAC)処方患者より発生率が高いことが示唆された。Aging Clinical and Experimental Research誌2025年11月13日号に掲載。  本研究は、北海道のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究で、2016年4月~2017年3月(ベースライン期間)に治療された75歳以上の高齢者を対象とした。曝露変数はベースライン期間中の抗凝固薬処方、アウトカム変数は2017年4月~2020年3月の出血性脳卒中による入院であった。共変量(年齢、性別、自己負担率、併存疾患、年次健康診断、要介護認定)を調整した1対1マッチングにより、抗凝固薬処方群と非処方群の入院発生率を比較した。

エボロクマブは、高リスクでない患者にも有効か/NEJM

 PCSK9阻害薬によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法の研究は、心筋梗塞や脳卒中などの重大なアテローム性心血管イベントの既往歴のある、きわめてリスクの高い患者を中心に進められてきた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のErin A. Bohula氏らVESALIUS-CV Investigatorsは、国際的な臨床試験「VESALIUS-CV試験」において、心筋梗塞、脳卒中の既往歴のないアテローム性動脈硬化症または糖尿病患者でも、エボロクマブはプラセボとの比較において、初発の心血管イベントリスクを有意に低下させたことを報告した。本研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月8日号に掲載された。

心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF保持例の死亡・再発・心不全を抑制せず/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が50%以上に保たれ、β遮断薬のほかに適応がない心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合の発生率を低減しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnna Meta Dyrvig Kristensen氏らBeta-Blocker Trialists’ Collaboration Study Groupが行ったメタ解析の結果で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年11月9日号で発表された。  研究グループは、心筋梗塞後のβ遮断薬の有効性の評価を目的とする、5つの研究者主導型非盲検無作為化優越性試験(β遮断薬群と非β遮断薬群を比較)の参加者の個別データを用いたメタ解析を実施した(Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIなどの助成を受けた)。