呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:20

感染症学会ほか、コロナワクチン「高齢者の定期接種を強く推奨」

 日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会は、10月21日に「2024年新型コロナワクチン定期接種に関する見解」を共同で発表した。3学会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の⾼齢者における重症化・死亡リスクはインフルエンザより高く、今冬の流行に備えて、10月から始まった新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨している。本見解は、接種を検討する際の参考となる科学的根拠を提供している。

インフルワクチンの日本人の心不全に対する影響~PARALLEL-HF試験サブ解析/日本心不全学会

 呼吸器感染症に代表されるインフルエンザ感染は、心筋へウイルスが移行する直接作用、炎症惹起性サイトカイン放出による全身反応などによって心血管障害を及ぼす。また、プラークの不安定化、炎症による心拍数の不安定化への影響なども報告されているが、海外研究であるPARADIGM-HF試験が検証したところによると、インフルエンザワクチン接種が心不全患者の死亡リスク低下と関連する可能性を示唆している。

関節リウマチは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆は認められない

 遺伝的に予測された関節リウマチ(RA)と気管支拡張症リスクとの間には因果関係があるというメンデルランダム化(MR)研究の結果が「Frontiers in Medicine」に6月20日掲載された。RAは気管支拡張症リスクを高めるが、その逆の関係は認められなかったという。  RAと気管支拡張症の関連を示唆する報告はいくつかなされているが、因果関係は明らかになっていない。武漢第四病院(中国)のYuanyuan Li氏らは、FinnGenコンソーシアムからRAのゲノムワイド関連研究(GWAS)データを、IEU Open GWASプロジェクトから気管支拡張症のGWASデータをそれぞれ収集し、RAと気管支拡張症の関連を検討した。単変量メンデルランダム化(UVMR)解析には、主に逆分散加重(IVW)推定を用いた。加えて、双方向MR解析、再現MR解析、多変量MR(MVMR)解析、媒介分析、感度分析も行った。

ウイルスを寄せ付けない鼻スプレーを開発

 薬剤を含まない鼻スプレーが、理論的には、マスク着用よりもインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどの呼吸器系病原体の拡散を防ぐのに効果的である可能性を示唆する研究が報告された。このスプレーに含まれている医学的に不活性な成分が、人に感染する前に鼻の中の病原体を捕らえるのだという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院麻酔科のNitin Joshi氏らによるこの研究結果は、「Advanced Materials」に9月24日掲載された。  論文の責任著者の一人である、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJeffrey Karp氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、呼吸器系病原体が非常に短期間で、人類に極めて大きな影響を与えることをわれわれに示した。その脅威は、今も続いている」と話す。

呼吸によりマイクロプラスチックが脳に侵入する?

 人間の脳から初めて、顕微鏡でしか確認できない微小なプラスチック粒子(マイクロプラスチック)が検出された。ベルリン自由大学(ドイツ)のLuis Fernando Amato-Lourenco氏とサンパウロ大学(ブラジル)のThais Mauad氏らが率いる研究グループが、剖検された15人の成人のうちの8人において、脳の嗅覚を司る領域である嗅球からマイクロプラスチックが検出されたことを報告した。空気中に浮遊する小さなマイクロプラスチックはあらゆる場所に存在するため、生涯にわたって呼吸を通じて吸い込まれた可能性が高いと見られている。詳細は、「JAMA Network Open」に9月16日掲載された。

禁煙すると心房細動のリスクは短期間で低下する

 喫煙は心房細動のリスク因子だが、禁煙に成功するとそのリスクは速やかに低下することが明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のGregory Marcus氏らの研究によるもので、詳細は「JACC: Clinical Electrophysiology」に9月11日掲載された。研究者らは、「元喫煙者だからといって心房細動になると運命付けられてはいない」と述べている。  心房細動は不整脈の一種で、心臓の上部にある心房と呼ばれる部分が不規則に拍動する病気。このような拍動が現れた時の自覚症状として、動悸やめまいなどを生じることがある。しかしより重要なことは、心臓の中に血液の塊(血栓)が形成されやすくなり、その血栓が脳の動脈に運ばれるという機序での脳梗塞が起こりやすくなる点にある。このようにして起こる脳梗塞は、梗塞の範囲が広く重症になりやすい。

ステロイド薬の使用で糖尿病のリスクが2倍以上に

 ステロイド薬の全身投与により糖尿病の発症リスクが2倍以上高くなることを示唆するデータが報告された。英オックスフォード大学のRajna Golubic氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表した。  ステロイド薬は強力な抗炎症作用があり、喘息や関節リウマチなどの多くの疾患の治療で用いられていて、特に自己免疫性疾患の治療では欠かせないことが少なくない。ステロイド薬にはさまざまな副作用があり、そのうちの一つとして、血糖値の上昇、糖尿病リスクの増大が挙げられる。副作用リスクを下げるために、症状が現れる部位が呼吸器や皮膚などに限られている場合には、吸入や外用による局所投与が優先的に行われるが、局所投与では疾患コントロールが十分できない場合や全身性疾患の治療では、内服や注射などによる全身投与が必要となる。

「声の変化」からCOPD増悪を予測

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、患者の声の変化から予測できることを示した新たな研究結果が報告された。患者の声は、増悪が始まる直前には高くなり、増悪が始まるとかすれることが判明したという。この研究を実施したマーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学(オランダ)のLoes van Bemmel氏らは、これらのサインを使ってCOPDの増悪に備えられるようにするためのスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に取り組んでいる。この研究結果は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7~11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。

誤嚥性肺炎に関連する抗コリン薬~日本医薬品副作用データ

 日本の超高齢化社会は、とくに高齢者の誤嚥性肺炎のマネジメントに関して、大きな課題を呈している。大阪・藤立病院の上田 章人氏らは、主に日本医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、抗コリン薬使用と誤嚥性肺炎の発生率との関連を調査した。Respiratory Investigation誌オンライン版2024年9月10日号の報告。  2004年第1四半期〜2023年第3四半期のJADERデータベースより抽出した、60歳以上の誤嚥性肺炎2,367例のデータを分析に用いた。シグナル検出による報告オッズ比を用いて、誤嚥性肺炎と抗コリンリスクスケールに記載されている49の薬剤との関連を評価した。これらの関連性を検証するため、MEDLINEとコクランライブラリーの調査結果を組み込んだスコープレビューが実施された。

切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブの追加が有効(KEYNOTE-671)/Lancet

 未治療の切除可能な早期非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、術前化学療法単独と比較し、術前ペムブロリズマブ+化学療法と術後ペムブロリズマブ療法を行う周術期アプローチは、3年全生存率が有意に優れ、無イベント生存期間が延長し、安全性プロファイルも良好であることが、カナダ・マギル大学ヘルスセンターのJonathan D. Spicer氏らが実施した「KEYNOTE-671試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月28日号で報告された。  KEYNOTE-671試験は、日本を含む世界189施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年5月~2021年12月に参加者の無作為化を行った(Merck Sharp & Dohmeの助成を受けた)。