鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、テゼペルマブの日本人データ(WAYPOINT)/日本アレルギー学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/06

 

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)に対し、生物学的製剤の適応拡大が進んでいるが、生物学的製剤使用患者の約40%は全身性ステロイド薬を用いていたという報告があるなど、依然としてコントロール不十分な患者が存在する。そこで、抗TSLP抗体薬のテゼペルマブのCRSwNPに対する有用性が検討され、国際共同第III相試験「WAYPOINT試験」において、テゼペルマブは鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)を有意に改善したことが、NEJM誌ですでに報告されている1)。本試験の結果を受け、テゼペルマブは米国およびEUにおいて2025年10月にCRSwNPに対する適応追加承認を取得した。

 そこで、WAYPOINT試験の日本人集団の解析結果について、櫻井 大樹氏(山梨大学大学院総合研究部医学域 耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座)が第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)で発表した。本解析の結果、日本人集団においてもテゼペルマブの有効性・安全性は全体集団と一貫していたことが示された。

試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験
対象:既存治療でコントロール不十分(NPS 5以上、各鼻腔のスコア2以上)の18歳以上のCRSwNP患者408例(日本人33例)
試験群(テゼペルマブ群):テゼペルマブ210mgを4週に1回皮下投与+鼻噴霧用ステロイド薬 203例(日本人17例)
対照群(プラセボ群):プラセボ+鼻噴霧用ステロイド薬 205例(日本人16例)
評価項目:
[共主要評価項目]投与52週時のNPSのベースラインからの変化量、投与52週時のNCSのベースラインからの変化量
[副次評価項目]鼻茸に対する手術決定/全身性ステロイド薬投与までの期間、嗅覚障害重症度スコア、22項目の副鼻腔に関する評価質問票(SNOT-22)合計スコア、LMKスコア(副鼻腔混濁度の指標)、全症状スコア(TSS)、喘息合併患者における気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)など
※:日本人集団では併用を必須としない

 日本人集団における主な結果は以下のとおり。

・日本人集団の患者背景は、性別を除いて両群間でバランスがとれていた。日本人集団は65歳以上の割合が多い(テゼペルマブ群23.5%、プラセボ群25.0%)、BMI(kg/m2)が低い(25.8、25.4)、手術歴ありの割合が少ない(52.9%、56.3%)、総IgE(IU/mL)が高い(260.8、362.6)、アレルギー性鼻炎の合併が多い(29.4%、37.5%)などの特徴があった。
・ベースライン時のNPS(平均値±標準偏差)は、テゼペルマブ群6.2±1.0、プラセボ群6.5±1.3であった。同様に、NCSはそれぞれ2.5±0.6、2.5±0.5であった。
・NPSの改善は初回評価時点(投与4週時)から認められ、投与52週時のNPSのベースラインからの変化量(平均値)は、テゼペルマブ群-2.30(全体集団:-2.46)、プラセボ群-1.24(同:-0.38)であった(群間差[最小二乗平均値]:-1.063、95%信頼区間[CI]:-2.315~0.190)。
・投与52週時のNCSのベースラインからの変化量(平均値)は、テゼペルマブ群-1.63(全体集団:-1.74)、プラセボ群-1.08(同:-0.70)であった(群間差[最小二乗平均値]:-0.548、95%CI:-1.097~0.002)。
・日本人集団においても、テゼペルマブ群はプラセボ群と比較して、嗅覚障害重症度スコア、SNOT-22合計スコア、LMKスコア、TSSが改善していた。各スコアの投与52週時のベースラインからの変化量の群間差(95%CI)は以下のとおり。
 嗅覚障害重症度スコア:-0.652(-1.176~-0.128)
 SNOT-22合計スコア:-20.300(-36.152~-4.448)
 LMKスコア:-5.524(-7.444~-3.604)
 TSS:-3.512(-7.040~0.015)
・日本人集団では、テゼペルマブ群で手術決定/全身性ステロイド薬投与に至った患者は0例であった(プラセボ群は2例)。
・投与52週時の喘息合併患者の気管支拡張薬投与前のFEV1のベースライン時からの変化量(平均値±標準偏差)は、テゼペルマブ群369±544mL、プラセボ群-57±197mLであった。同様に、6項目の喘息コントロール質問票(ACQ-6)スコアの変化量は、それぞれ-0.94±1.415、-0.46±1.172であった。
・有害事象はテゼペルマブ群58.8%、プラセボ群68.8%に発現した。両群とも投与中止に至った有害事象や死亡に至った有害事象は認められなかった。

 本結果について、櫻井氏は「WAYPOINT試験で得られた日本人集団の結果は、日本人CRSwNP患者におけるテゼペルマブの良好なベネフィット・リスクプロファイルを支持するものであった」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)

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