呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:17

静注鎮静薬―機械呼吸管理下ARDSの生命予後を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

成人呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)の概念が提唱されて以来約70年が経過し、多種多様の治療方針が提唱されてきた。しかしながら、ARDSに対する機械呼吸管理時の至適鎮静薬に関する十分なる検討結果は報告されていなかった。本論評では、フランスで施行された非盲検無作為化第III相試験(SESAR試験:Sevoflurane for Sedation in ARDS trial)の結果を基に成人ARDSにおける機械呼吸管理時の至適鎮静薬について考察するが、その臨床的意義を理解するために、ARDSの病態、薬物治療、機械呼吸管理など、ARDSに関する臨床像の全体を歴史的背景を含め考えていくものとする。

免疫チェックポイント阻害薬の治療効果、年齢による差は認められず

 人の免疫システムが加齢に伴い衰えていくことはよく知られている。しかし、そのような免疫機能の低下が、がんに対する免疫療法の効果を妨げることはないようだ。がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬による治療は年齢に関わりなく有効であることが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のDaniel Zabransky氏らによるこの研究結果は、「Nature Communications」に4月21日掲載された。Zabransky氏は、「高齢患者に対する免疫療法の効果は、若年患者と同等か、場合によってはそれ以上だ」と述べている。

喘息治療における吸入薬投与の最適なタイミングとは

 喘息患者は、1日1回の吸入ステロイド薬を遅めの午後に使用することで、夜間の症状を効果的にコントロールできる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英マンチェスター大学のHannah Jane Durrington氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に4月15日掲載された。  薬物投与のタイミングを体内時計に合わせる治療法はクロノセラピー(時間治療)と呼ばれ、薬の治療効果を高めることが期待されている。Durrington氏らによると、喘息には明確な日内リズムがあり、気流閉塞と気道炎症の主要な影響は夜間にピークに達する。実際、致死的な喘息発作の約80%は夜間に発生しているという。

既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibは有益/NEJM

 既治療のHER2変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、経口不可逆的HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬zongertinibは臨床的有益性を示し有害事象は主に低Gradeであったことが、米国・University of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのJohn V. Heymach氏らBeamion LUNG-1 Investigatorsによる第Ib相試験の結果で報告された。HER2変異陽性NSCLC患者には、革新的な経口標的療法が求められている。zongertinibは第Ia相試験で進行または転移を有するHER2異常を認める固形がん患者への有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年4月28日号掲載の報告。

未治療の進行性肺線維症、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性・有効性(TOP-ILD)/日本呼吸器学会

 進行性肺線維症(PPF)に対する治療は、原疾患の標準治療を行い、効果不十分な場合に抗線維化薬を使用するが、早期からの抗線維化薬の使用が有効な可能性も考えられている。そこで、未治療PPFに対する抗線維化薬ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性と有効性を検討する国内第II相試験「TOP-ILD試験」が実施された。本試験において、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法は、治療継続率が高く、有効性についても良好な結果が得られた。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、坪内 和哉氏(九州大学病院)が本試験の結果について解説した。

好酸球数高値COPD、メポリズマブで中等度/重度の増悪低減/NEJM

 インターロイキン-5(IL-5)は好酸球性炎症において中心的な役割を担うサイトカインであり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~40%に好酸球性炎症を認める。メポリズマブはIL-5を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らMATINEE Study Investigatorsは、「MATINEE試験」において、好酸球数が高値のCOPD患者では、3剤併用吸入療法による基礎治療にプラセボを併用した場合と比較してメポリズマブの追加は、中等度または重度の増悪の年間発生率を有意に低下させ、増悪発生までの期間が長く、有害事象の発現率は同程度であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年5月1日号に掲載された。

がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第25回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。  同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。 ・日時:2025年7月18日(金)~19日(土) ・開催形式:オンライン(ライブ配信、後日オンデマンド配信を予定) ・定員:500人 ・参加費:15,000円(2日間) ・主催・企画:特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会 ・後援:日本医師会、東京都医師会、東京都病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本産科婦人科学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会、西日本がん研究機構、North East Japan Study Group ・交付単位(予定):日本薬剤師研修センターによる単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)、日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師・がん指導薬剤師認定単位(7/18受講:2単位、7/19受講:2単位)、日本看護協会 認定看護師・専門看護師:「研修プログラムへの参加」(参加証発行)、日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師講習(研修)認定単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)

気管支拡張症、DPP-1阻害薬brensocatibが有用/NEJM

 気管支拡張症患者において、経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回投与は、プラセボと比較して肺疾患増悪の発生率を低下させ、25mg群ではプラセボと比較して1秒量(FEV1)の低下が少ないことが、英国・ダンディー大学のJames D. Chalmers氏らASPEN Investigatorsが35ヵ国390施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「ASPEN試験」の結果で示された。気管支拡張症において好中球性炎症は増悪および病勢進行リスクの増大と関連しており、brensocatibは好中球性炎症の主要なメディエーターである好中球セリンプロテアーゼを標的としている。気管支拡張症成人患者を対象とした第II相試験では、brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回24週間投与により、プラセボと比較して、初回増悪までの期間延長および増悪率の低下が示されていた。NEJM誌2025年4月24日号掲載の報告。

腫瘍浸潤クローン性造血、固形がんの死亡リスクと関連/NEJM

 「未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」は加齢に伴う病態で、がん患者における死亡率の上昇と関連する。腫瘍で変異アレル頻度(VAF)の高いCHIP変異が検出されることがあり、英国・フランシス・クリック研究所のOriol Pich氏らは、この現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(tumor-infiltrating clonal hematopoiesis:TI-CH)」と呼ぶ。同氏らは、今回、TI-CHは非小細胞肺がん(NSCLC)患者のがん再発や死亡のリスクを高め、固形腫瘍患者で全死因死亡のリスクを上昇させ、腫瘍免疫微小環境をリモデリングし、腫瘍オルガノイドの増殖を促すことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年4月24日号で報告された。

バレニクリン、ニコチンベイピングの中止にも有効/JAMA

 中等度~重度のニコチンベイピング依存の青年において、遠隔からの簡易な行動カウンセリングにバレニクリン(α4β2ニコチン受容体部分作動薬)を併用すると、プラセボを併用した場合と比較してニコチンベイピングの中止が促進され、忍容性も良好であることが、米国・マサチューセッツ総合病院のA. Eden Evins氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。  研究グループは、タバコを常用していない青年におけるニコチンベイピング中止に対するバレニクリンの有効性の評価を目的に、3群を比較する無作為化臨床試験を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。2022年6月~2023年11月に米国の1州で参加者を登録し、2024年5月にデータ収集を終了した。