臨床医が見落としやすい認知症のタイプは?

提供元:ケアネット

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公開日:2026/08/03

 

 認知症の早期かつ適切な診断(タイムリーな診断)は、治療計画や支援において重要とされるが、実臨床での過少診断(見落としや診断の遅れ)は頻繁に発生している。米国・Rush University Medical Center Rush Alzheimer's Disease CenterのYi Chen氏らの研究グループは、認知症コホートとメディケアの医療保険請求データ、および死後病理解剖データを結合した大規模解析を行った。その結果、アルツハイマー病(AD)やADと類似した臨床像を呈する辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症(LATE-NC)の病理像を持つ患者は医療機関でタイムリーに認知症と診断されやすい一方、血管性病変や新皮質レビー小体(LB)病理を持つ患者は見落とされやすいことを明らかにした。Neurology誌2026年8月11日号に掲載。

 本研究では、Rush Alzheimer's Disease Centerが実施する5つの高齢者コホート研究の参加者のうち、(1)年次評価で認知症新規発症が確認され、(2)メディケア請求データと統合可能で、(3)死後に脳病理解剖が完了した500例(発症時平均年齢87.8歳[SD 6.6]、女性70.6%)を対象とした後ろ向き研究を実施した。病理組織学的検査により、AD病理(NIA-AA基準)、中等度/重度のLATE-NC、中等度/重度の血管性病変、新皮質LB病理の有無を特定した。メディケアの請求データにおいて、研究上の認知症発症日の「3年前から1年後」の4年間に認知症の診断コード(ICD-9/10)が存在した場合を「タイムリーな診断」と定義し、各病理マーカーとタイムリーな診断との関連を多変量ロジスティック回帰分析により検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象者500例のうち、医療現場でタイムリーな認知症診断を受けていたのは54.4%(272例)であった。
・多変量解析の結果、AD病理(調整オッズ比[aOR]:1.91、95%信頼区間[CI]:1.21~3.00)および中等度/重度のLATE-NC病理(aOR:1.83、95%CI:1.25~2.68)は、タイムリーな診断率の向上と独立して関連していた。
・一方、中等度/重度の血管性病変(aOR:0.94、95%CI:0.55~1.59)および新皮質LB病理(aOR:1.00、95%CI:0.64~1.55)は、タイムリーな診断と有意な関連を示さなかった。
・併発する病理の数で評価した別モデルでは、病理が0~1個の群と比較して、3~4個の重度の複合病理を有する群でタイムリーな診断を受けるオッズが2倍以上に増加した(aOR:2.24、95%CI:1.32~3.82)。
・コホート発症時に測定したMMSEスコアが低い(重症度が高い)患者や、併存疾患負担(Elixhauser指数)が高い患者ほど、タイムリーに診断されている傾向が認められた。

 著者らは、医療現場においては記憶障害を主症状とするADやLATE-NCのほうが、MMSEなどの認知症スクリーニングでタイムリーな診断につながりやすい可能性を指摘している。一方で、遂行機能障害や注意・視空間認知障害などを呈しやすい血管性病変やLB病変は見逃されている危険性がある。臨床医が記憶以外の認知領域の症状低下にも感度高く対応できるツールを導入することや、多様な病理背景を考慮した診療体制を構築する重要性が示唆された。

(ケアネット 古賀 公子)