医療一般|page:1

呼吸機能のピークは何歳?

 呼吸機能は健康の重要な指標であるが、生涯を通じた呼吸機能の経過に関する知見は、年齢範囲が断片的なデータに基づいている。そこで、スペイン・バルセロナ国際保健研究所のJudith Garcia-Aymerich氏らの研究グループは、複数の大規模コホート研究のデータを統合し、4~80歳の呼吸機能の経過を解析した。その結果、1秒量(FEV1)および努力肺活量(FVC)は2段階の増加を示し、20代前半でピークに達した後、プラトーになることなく、ただちに低下し始めることが示された。また、1秒率(FEV1/FVC)は4歳から生涯を通じて低下し続けた。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌2025年7月号に掲載された。

PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?

 顕微鏡的大腸炎は、高齢者における慢性下痢の主な原因の1つであり、これまでプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、スタチンなどの一般的に用いられる薬剤との関連が指摘されてきた。しかし、スウェーデンで実施された全国調査の結果、これらの薬剤のほとんどは顕微鏡的大腸炎のリスクを増加させない可能性が示唆された。本研究は、Hamed Khalili氏(米国・マサチューセッツ総合病院)らの研究グループによって実施され、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年7月1日号で報告された。

日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる有効性と忍容性

 獨協医科大学の鈴木 紫布氏らは、日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる長期的な有効性と忍容性を明らかにするため、レトロスペクティブ観察単施設コホート研究を実施した。Neurological Research and Practice誌2025年6月3日号の報告。  対象は、フレマネズマブ治療を行った反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)患者165例。主要エンドポイントは、ベースラインから1〜24ヵ月までの1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)の変化量とした。副次的エンドポイントは、片頭痛評価尺度(MIDAS)スコアの変化量、有害事象、治療反応率、治療反応予測因子、治療継続率。

HPVの自己採取検査の郵送は検診受診率を高める

 女性にヒトパピローマウイルス(HPV)感染の有無を調べるために、検体を自分で採取する自宅用検査を郵送で提供したところ、電話のみで検診を促す場合と比べて、子宮頸がん検診の受診率が2倍以上に増加したことが新たな研究で示された。論文の筆頭著者である米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJane Montealegre氏は、「本研究結果は、自宅用検査が子宮頸がん検診へのアクセスを向上させ、ひいては米国における子宮頸がんの負担を軽減する解決策となる可能性を示している」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に6月6日掲載された。

健康的な食事は体重が減らなくても心臓を守る

 健康的な食生活に改めたのに体重が減らないからといって、イライラする必要はないかもしれない。体重は変わらなくても、健康的な食生活により心臓の健康には良い影響を期待できることを示唆する研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に6月5日掲載された。  この研究は、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnat Yaskolka Meir氏らの研究によるもの。論文の筆頭著者である同氏は、「健康のために減量が欠かせないとわれわれは刷り込まれてきており、体重を減らせない人に負の烙印を貼ってしまいがちだ。しかし今回の研究は、食生活を改めることで、たとえ体重が減らなくても代謝が改善し将来の健康リスクを下げられることを示しており、これまでの捉え方を根本から変えるものだ」と述べている。

自転車に乗ることは認知症リスク低下と関連

 移動手段として定期的に自転車に乗ることは、あらゆる原因による認知症(以下、認知症)リスクの低下と関連することが新たな研究で明らかになった。自転車の利用は、記憶に関わる脳領域である海馬の体積が有意に大きいこととも関連していたという。華中科技大学(中国)同済医学院のLiangkai Chen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月9日掲載された。  Chen氏らは、2006年3月13日から2010年10月1日までの間に収集されたUKバイオバンクのデータを用いて、移動手段と認知症リスクや脳構造との関連を検討した。対象者の総計は47万9,723人で、平均年齢は56.5歳、女性が54.4%を占めていた。参加者の移動手段は、「通勤・通学を除き、過去4週間において最もよく利用した移動手段は何ですか」という質問により調査されていた。その回答に基づき、1)車や公共交通機関などの非活動的移動手段を利用、2)徒歩、3)徒歩と非活動的な移動手段を併用、4)自転車単独および自転車と他の移動手段を併用、の4群に分類された。主要評価項目は、認知症の発症(若年性認知症と遅発性認知症を含む)、副次評価項目は、アルツハイマー病などの認知症のサブタイプや、MRIで評価された脳構造などであった。

がんサバイバーの脳卒中・心血管死リスク、大規模コホート研究で明らかに

 がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して心血管系疾患(CVD)を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、がんサバイバーの虚血性心疾患・脳卒中による死亡リスクは、一般集団と比較して高いとする研究結果が報告された。大阪大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association;JAHA」に5月15日掲載された。  近年、医療の進歩により、がん患者の生存率は大幅に向上している。しかし、その一方で、CVDが新たながんサバイバーの懸念事項として浮上している。CVDはがんサバイバーでがんに次ぐ死因であることが明らかになっており、疫学研究では、CVDによる死亡リスクが一般集団の約2倍であることも報告されている。従来の研究では、CVD全体による死亡リスクが調査されてきたが、特定のCVDに焦点を当てた研究は限られていた。そのような背景を踏まえ、筆者らは「全国がん登録(NCR)」データベースを用いて、国内のがん患者におけるCVDによる死亡リスクを調査するコホート研究を実施した。CVD全体のリスク評価に加え、虚血性心疾患、心不全、大動脈解離・大動脈瘤、虚血性脳卒中、出血性脳卒中といった特定のCVDについても解析を行った。

肥満症治療に変革をもたらすチルゼパチドへの期待/リリー

 食事療法と運動療法が治療の主体である肥満症は、近年では肥満症治療薬が増えてさまざまな知見がリアルワールドで集積している。肥満症を適応とする持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)を製造する日本イーライリリーは、都内でメディア向けのセミナーを開催し、わが国の肥満・肥満症の現況、医療費への影響、チルゼパチドの最新臨床試験データなどを説明した。  「肥満症治療の社会的意義 ~最新の肥満症に関する研究結果を受けて~」をテーマに、同社の宗和 秀明氏(研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 ダイアベティス・オベシティ・心・腎領域バイスプレジデント/医師)が、肥満症に関係する情報を解説した。

精神科医療現場の突然死に関連する要因と予防戦略

 精神科入院患者の予期しない死亡には、さまざまな要因が関連している。シンガポール・Buangkok Green Medical ParkのJing Ling Tay氏らは、精神科入院患者の突然死に対する影響因子/リスク因子および予防戦略を評価するため、スコーピングレビューを実施した。Archives of Psychiatric Nursing誌2025年6月号の報告。  本研究は、スコーピングレビューのためのPRISMA拡張版およびPRISMA 2020声明に基づき行われた。関連するキーワードを用いて、2023年12月18日までに公表された研究を6つのデータベースより検索した。精神科医療現場における入院患者の突然死の原因、影響因子、リスク因子、予防戦略を検討した英語論文を対象に含めた。

サルコペニア・フレイル、十分なエビデンスのある栄養療法とは?初の栄養管理ガイドライン刊行

 サルコペニア・フレイルに対し有効性が示された薬物療法はいまだなく、さまざまな栄養療法の有効性についての報告があるが、十分なエビデンスがあるかどうかは明確になっていない。現時点でのエビデンスを整理することを目的に包括的なシステマティックレビューを実施し、栄養管理に特化したガイドラインとしては初の「サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025」が2025年4月に刊行された。ガイドライン作成組織代表を務めた葛谷 雅文氏(名鉄病院)に、ガイドラインで推奨された栄養療法と、実臨床での活用について話を聞いた。

切迫性尿失禁の治療、マインドフルネスと脳刺激が有効か

 玄関のドアを見たときや水の流れる音を聞いたときなどに、突然尿意に襲われ、尿漏れしたことはないだろうか。米ピッツバーグ大学コンチネンス研究センターのBecky Clarkson氏らによる新たな研究で、このような切迫性尿失禁に対しては、マインドフルネスのトレーニングと電流を流して脳を刺激する治療が尿漏れの回数を減らすのに有効であることが明らかになった。この研究の詳細は、「Continence」6月号に掲載された。  論文の上席著者であるClarkson氏は「尿失禁は深刻な問題だ。トラウマにもなり得る。尿漏れへの不安から、外出して人と会ったり運動をしたりすることを避けるようになる人も多い。特に高齢者では、社会的孤立や抑うつ、機能低下につながることもある」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

高血圧に関する米国人の誤解の多さが明らかに

 米ペンシルベニア大学アネンバーグ公共政策センターが6月6日に発表した新たな調査結果において、米国人の3分の1以上が、高血圧はめまいや息切れなどの明らかな症状を伴うものと誤解していることが示された。  血圧は、心臓の拍動によって動脈にかかる圧力を示す指標であり、心臓が収縮して血液を送り出すときの収縮期血圧(上の血圧)と、心拍と心拍の間の安静状態にあるときの拡張期血圧(下の血圧)の2つで表される。米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)は、2017年に高血圧の定義を従来の140/90mmHgから130/80mmHgに引き下げた。米疾病対策センター(CDC)によると、2022年に米国では高血圧が68万5,000人以上の死亡の主因、または一因であったという。

肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群、治療法の好みに医師と患者で違い

 肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対する治療法の好みは、医師と患者の間で異なることが新たな研究で示された。医師は、睡眠中に専用のマスクを介して一定の空気圧を鼻から気道に送って気道を開いた状態に保つ持続陽圧呼吸(CPAP)療法を支持する一方、患者は、肥満症治療薬の一種であるGLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(商品名ゼップバウンド)による治療を望む傾向にあることが明らかになったという。この研究は米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)呼吸器・集中治療・睡眠医学部門のAhmed Khalaf氏らによるもので、米国睡眠医学会(AASM)と米睡眠学会(SRC)の合弁事業であるAssociated Professional Sleep Societies, LLC(APSS)の年次総会(SLEEP 2025、6月8〜11日、米シアトル)で発表された。

家庭における犬と猫の共存、その成功因子が明らかに

 近年、先進国では犬と猫の両方を飼っている世帯が増加している。今回、日本国内で犬と猫の両方を飼っている飼い主のほとんどは、両者が友好的であると認識しているとする研究結果が報告された。両者の同居開始年齢が若いほど、友好的な関係が予測されるという。研究は大阪大学大学院人間科学研究科の千々岩眸氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に5月15日掲載された。  2023年に一般社団法人ペットフード協会が実施した調査によると、国内で飼われている犬と猫の総個体数はそれぞれ700万匹と900万匹とされており、世帯全体のうち9.1%が犬を、8.7%が猫を飼っていると報告されている。また、日本の保険会社が2019年に実施した調査では、「犬・猫」を飼っている1776人の回答者のうち、11.1%(123人)が犬と猫の両方を飼っていると回答している。異なる特徴を持つ種が共存する場合、そこにはしばしば衝突が発生するが、近年、欧米諸国で実施された調査では、同居する犬と猫の間には概ね良好な関係が見出されている。この関係性は、同居開始年齢と猫特有の要因が影響しているという。しかし、日本や他のアジア諸国でこの関係性について調査した研究はない。また、多様な文化的背景における犬と猫の関係のダイナミクスを探ることは、両者の福祉(怪我やストレスの軽減、遺棄の防止など)にとって重要である。このような背景を踏まえ、著者らはオンライン調査を通じて、日本の犬・猫の飼い主が家庭内で両者の関係をどのように認識しているかを評価し、両者の共存に影響を与える様々な要因について検討した。

「終末期」を「人生の最終段階」へ変更、その定義とは/日本老年医学会

 日本老年医学会は6月27日のプレスリリースにおいて、「終末期」から「人生の最終段階」への変更における定義などを示した『高齢者の人生の最終段階における医療・ケアに関する立場表明2025』を発表した。この立場表明は同学会が21世紀初頭に初版を発表、2012年の第1改訂から10年以上が経過したため、現在を見据えつつ近未来を展望して今回の改訂がなされた。今回開催された記者会見では、立場表明のなかで定義付けされた用語とその理由について、本改訂委員会委員長を務めた会田 薫子氏(東京大学大学院人文社会系研究科 附属死生学・応用倫理センター 特任教授/同学会倫理委員会 エンドオブライフ小委員会委員長)を中心に解説が行われた。

左右の肺がんで死亡リスクに差~日本のがん登録データ

 肺がん罹患率は、解剖学的、遺伝的、環境的要因の影響により右肺と左肺で異なる可能性がこれまでの研究で示唆されている。今回、千葉県がんセンターの道端 伸明氏らが日本のがん登録データで調べたところ、右側肺がんが左側肺がんより多く、死亡リスクは男性では右側肺がんが高かったが、女性では差がなかったという。Cancer Epidemiology誌オンライン版2025年6月24日号に掲載。

統合失調症における中枢コリン作動系の変化

 統合失調症では、コリン作動系のさまざまな変化がみられることが報告されているが、これらのエビデンスのシステマティックレビューおよびサマライズは行われていなかった。カナダ・オタワ大学のZacharie Saint-Georges氏らは、統合失調症およびまたは統合失調感情障害における中枢コリン作動系に関するイメージング研究および剖検研究についてのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌2025年7月号の報告。

スタチンは敗血症の治療にも効果あり?

 スタチン系薬剤(以下、スタチン)は、高LDLコレステロール(LDL-C)血症の治療における第一選択薬であるが、この安価な薬剤は、別の病態において救命手段となる可能性があるようだ。新たな研究で、敗血症患者の治療において、抗菌薬、点滴、昇圧薬による通常の治療にスタチンを加えることで死亡リスクが低下する可能性のあることが明らかになった。天津医科大学総合病院(中国)のCaifeng Li氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Immunology」に6月6日掲載された。  敗血症は、感染症に対する過剰な免疫反応によって全身に炎症が広がり、複数の重要な臓器に機能不全が生じる病態である。研究グループによると、米国では毎年約75万人が敗血症で入院し、そのうち約27%が死亡している。敗血症患者の約15%には、血圧が危険なレベルまで低下する敗血症性ショックが生じる。敗血症性ショックの死亡リスクは30〜40%に上ると報告されている。

乾癬性関節炎では関節リウマチよりも診断が遅れる

 乾癬性関節炎(PsA)患者は関節リウマチ(RA)患者と比較して診断が遅れるという研究結果が、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月29日掲載された。  英バース大学のRachel A. Charlton氏らは、PsA患者とRA患者の診断に至るまでの期間を比較した。解析対象となったのは、PsA患者2,120人と、年齢と性別でマッチさせたRA患者2,120人であった。  解析の結果、症状が発現してから専門医に紹介されるまでの期間は、PsA患者の方がRA患者よりも長かった。PsA患者の方が、かかりつけ医を受診してから診断を受けるまでの期間が長く(平均112日対89日、ハザード比〔HR〕0.87)、二次医療機関に紹介された後の診断の遅れも認められた(HR 0.86)。多発性関節炎を有する患者において、ベースライン時における疾患修飾性抗リウマチ薬の処方率は、PsA患者の方がRA患者よりも低かった(それぞれ54.0%、69.0%)。28関節を対象とする疾患活動性スコアは、ベースライン時ではRA患者の方が高かったが、3カ月後にはPsA患者の平均スコアの方が高くなった。

SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が、2型糖尿病患者の転倒リスクを高めることを示唆するデータが報告された。筑波大学システム情報系の鈴木康裕氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に3月17日掲載された。  転倒やそれに伴う骨折や傷害は、生活の質(QOL)低下や種々の健康リスクおよび死亡リスクの増大につながる。糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。ただし、実際にそのようなリスクが生じているか否かはこれまで検証されていなかった。