もうすぐ親になるという人たちにとって、初めてわが子の姿を目にする機会は超音波検査であることが多い。こうした超音波検査で病院のスタッフがお腹の中の子どもについて発した言葉が、その後の育児に良い影響を与えたり、逆に悪い影響を与えたりする可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米ノートルダム大学心理学分野のKaylin Hill氏らによるこの研究の詳細は、「Communications Psychology」に5月5日掲載された。
Hill氏らはまず、妊娠11~38週の妊婦320人を対象に聞き取り調査を実施し、その時点でお腹の赤ちゃんがどんな子であると感じているかを尋ねた。その後、生後18カ月の時点で、子どもの行動面や情緒面の問題について評価してもらった。173人が生後18カ月の追跡調査を完了した。
その結果、妊娠中に赤ちゃんに対してポジティブな見方を持っていた母親は、生後18カ月の時点で子どもに情緒的な問題や行動的な問題が少ないと評価する傾向が認められた。一方で、親の評価が妊婦健診での経験と関連している場合には、評価のトーンがネガティブになりがちであった。また、ネガティブな評価は子どもの将来の行動的・情緒的問題と関連していた。ただし、そうしたネガティブな評価が妊婦健診に由来するかどうかはこの関連に影響していなかった。
次にHill氏らは、161人の研究参加者を対象に実験を行い、妊婦健診での超音波検査中に聞いた言葉が、これらの傾向に関係している可能性を検討した。実験では、検査技師から妊婦に超音波画像の質の悪さについて、1)技術的な問題が原因でうまく撮れなかった、2)胎児が「協力的でない」ために画像がうまく撮れなかった、3)心配する必要はなく、その後の超音波検査で良い画像を得られるだろう、のいずれかの言い方で伝えられた。その結果、胎児が「協力的でない」と言われた母親は、他の2つのパターンの説明を受けた母親と比べて、その後、子どもに対して否定的な見方をしがちになる傾向が認められた。
こうした結果を受けてHill氏は、「胎児の発達に関する専門家であると見なされている超音波技師などが検査中に使った言葉はそのまま親に受け止められ、赤ちゃんが生まれる前から『自分の子どもはこういう子だ』という認識に影響を与える」と言う。Hill氏によれば、このような早い段階に自分の子に対して抱いた印象は、女性の産後うつのリスクにも、わずかではあるが重要な影響を及ぼす可能性があるという。
Hill氏は、「もちろん、われわれは親をサポートしたいと考えている。この研究が示しているのは、妊婦との重要なやり取りの中で使われる、一見些細に思われる言葉の選び方の違いがいかに大きく影響するかということであり、その点について、まずは医療従事者と話し合うことが大事だということだ」と話している。
Hill氏は「産前産後の時期は身体的にも心理的にも、また社会的にもさまざまなレベルで変化が起こる時期であり、抑うつリスクが最も高まる時期の一つだ。もし超音波検査での経験が子どもに対する見方に影響を与えるのであれば、それによって親子関係のさまざまな面にも影響が及ぶ可能性がある。このことは親と子の双方の将来にとって極めて重要だ」と述べている。
[2025年7月29日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら