ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:1

LVEF保持/軽度低下例へのβ遮断薬、死亡・MACEの複合を抑制/NEJM

 ノルウェー・Drammen HospitalのJohn Munkhaugen氏らBETAMI-DANBLOCK Investigatorsは、左室駆出率(LVEF)が保持または軽度低下していた心筋梗塞後の患者において、β遮断薬の投与は非投与の場合と比較して、死亡または主要心血管イベント(MACE)のリスク低下に結びついたことを報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬療法を支持するエビデンスは、現代の再灌流療法や2次予防戦略が導入される以前に確立されたものであり、研究グループは、「加えて、β遮断薬療法は狭心症症状の緩和、および心室性不整脈ならびに心不全の発症率の低下と関連している」として、類似するプロトコールが用いられていた心筋梗塞後のβ遮断薬療法に関する2つの試験(ノルウェー[BETAMI試験]とデンマーク[DANBLOCK試験])を統合評価した。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。

前立腺がん診断、bpMRIは標準検査になりうる/JAMA

 前立腺がんが疑われる男性において、短縮化されたバイパラメトリックMRI(bpMRI)検査は、提供された画像の質が十分であれば標的生検の有無にかかわらず、前立腺がん診断の新たな標準検査となりうることを、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlexander B.C.D. Ng氏らPRIME Study Group Collaboratorsが示した。生検の有無を問わない臨床的に重要な前立腺がんの診断では、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)が検査の標準となっているが、リソースのキャパシティが広範な導入を妨げている。ガドリニウム造影剤を使用しないbpMRIは、より短時間かつ安価な代替法で、世界中の医療システムにとって時間短縮によりキャパシティが改善される。著者は、「世界では年間400万件の前立腺MRI検査が行われていることから、bpMRIは、世界中の検査処理能力を大幅に増強しかつコスト削減を可能とするだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年9月10日号掲載の報告。

低リスク急性心筋梗塞、PCI後1ヵ月でアスピリンは中止可能か/NEJM

 低リスクの急性心筋梗塞で、血行再建術を受けた後、合併症の発現なく1ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した患者では、1年後(無作為化から11ヵ月後)の心血管・脳血管イベントの発生に関して、P2Y12阻害薬単剤療法はDAPTに対し非劣性であり、出血イベントの発生率は低減したことが示された。イタリア・University of Padua Medical SchoolのGiuseppe Tarantini氏らTARGET-FIRST Investigatorsが、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験「TARGET-FIRST試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月31日号で発表された。

LVEF軽度低下の心筋梗塞、β遮断薬の有用性は?/Lancet

 左室駆出率(LVEF)が低下した(<40%)心筋梗塞患者では、β遮断薬の有効性を強く支持するエビデンスがあるが、LVEFが低下していない(≧40%)心筋梗塞患者へのβ遮断薬療法に関しては、最近の4つの無作為化試験の結果は一致せず(有益性を認めたのは1試験のみ)、LVEFが軽度低下した(40~49%)サブグループにおける治療効果についてはどの試験も検出力不足であった。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos III(CNIC)のXavier Rossello氏らは、LVEF軽度低下の心筋梗塞入院患者におけるβ遮断薬の有効性の評価を目的に行った個別の患者データを用いたメタ解析を実施。心不全の既往歴や臨床徴候がないLVEF軽度低下を伴う急性心筋梗塞患者において、β遮断薬療法は全死因死亡、新規心筋梗塞、心不全の複合エンドポイントの発生を減少させたことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年9月13日号で発表された。

閉塞性肥大型心筋症、aficamtenが有効/NEJM

 β遮断薬は、有効性に関するエビデンスが限定的であるにもかかわらず、症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の初期治療に用いられてきた。心筋ミオシン阻害薬であるaficamtenは、標準治療への追加投与で左室流出路圧較差を軽減し、運動耐容能を改善してHCMの症状を軽減することが示されている。スペイン・Centro de Investigacion Biomedica en Red Enfermedades Cardiovaculares(CIBERCV)のPablo Garcia-Pavia氏らMAPLE-HCM Investigatorsは、HCMの治療におけるこれら2つの薬剤の単剤投与の臨床的有益性を直接比較する目的で、国際的な第III相二重盲検ダブルダミー無作為化試験「MAPLE-HCM試験」を実施。メトプロロール単剤に比べaficamten単剤は、最高酸素摂取量の改善に関して優越性を示し、症状の軽減や左室流出路圧較差、NT-proBNP値、左房容積係数の改善と関連したことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年9月11日号で報告された。

ベルイシグアトは広範なHFrEF患者に有効~2つの第III相試験の統合解析/Lancet

 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬ベルイシグアトは、2021年、VICTORIA試験の結果に基づき、最近の心不全悪化を経験した左室駆出率(LVEF)の低下を伴う心不全(HFrEF)患者の治療薬として欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た。フランス・Universite de LorraineのFaiez Zannad氏らVICTORIA and VICTOR Study Groupsは、本薬のHFrEF患者全般における有効性と安全性の評価を目的に、VICTORIA試験と、最近の心不全の悪化を経験していないHFrEF患者を対象としたVICTOR試験の患者レベルのデータを用いた統合解析を行い、ベルイシグアトは、現行のガイドラインに基づく治療を受けている患者を含む幅広い臨床的重症度のHFrEF患者において、心不全による入院および心血管死のリスクを低減したことを明らかにした。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年8月30日号に掲載された。

主要5クラスの降圧薬、単剤・併用の降圧効果を定量化/Lancet

 オーストラリア・University of New South WalesのNelson Wang氏らは、主要5クラスの降圧薬の降圧効果およびそれらの組み合わせによる降圧効果の定量化を目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析を行った。降圧薬のあらゆる組み合わせについて、期待される降圧効果の強固な推定値を提示し、その降圧効果の程度を低強度・中強度・高強度に分類可能であることを示した。著者は、「得られた知見は、世界中の高血圧治療を受ける人々の、不良な血圧コントロールを改善するための処方決定に役立つ情報となるだろう」と述べている。Lancet誌2025年8月30日号掲載の報告。

冠動脈疾患2次予防、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet

 冠動脈疾患(CAD)の2次予防において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、大出血のリスク増加を伴うことなく、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)の発生低下をもたらすことが、スイス・University of Italian SwitzerlandのMarco Valgimigli氏らによるシステマティックレビューとメタ解析で示された。CAD既往患者には、無期限のアスピリン単剤療法が推奨されているが、本検討の結果を受けて著者は、「CAD患者における2次予防は、アスピリンよりクロピドグレルを優先して使用することが支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。

心筋梗塞後のβ遮断薬、LVEF>40%なら不要?/NEJM

 心筋梗塞で侵襲的治療を受け退院した左室駆出率(LVEF)40%超の患者において、β遮断薬の投与は全死因死亡、再梗塞、または心不全による入院の発生に影響を与えないことが示された。スペイン・Centro Nacional de Investigaciones Cardiovasculares Carlos IIIのBorja Ibanez氏らREBOOT-CNIC Investigatorsが、研究者主導の「Treatment with Beta-Blockers after Myocardial Infarction without Reduced Ejection Fraction trial:REBOOT試験」の結果を報告した。駆出率が保持された心筋梗塞後のβ遮断薬の使用に関する現行ガイドラインの推奨事項は、再灌流療法、侵襲的治療、完全血行再建術、および現代的な薬物療法が標準治療となる前に実施された試験に基づいている。研究グループは、β遮断薬の役割について再検討する必要があるとして本検討を行った。NEJM誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。

ベルイシグアト、急性増悪のないHFrEFのイベント抑制効果は?/Lancet

 急性増悪の認められない左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、ベルイシグアトは複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院までの期間)のリスクを低下させなかったことが、米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らVICTOR Study Groupによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VICTOR試験」の結果で報告された。ただし、心血管死についてプラセボ群よりベルイシグアト群で少なかったことが観察されている。ベルイシグアトは、急性増悪が認められたHFrEF患者において、心血管死または心不全による入院リスクを軽減するための使用が認められている。VICTOR試験の目的は、急性増悪の認められないHFrEF患者におけるベルイシグアトの有効性を評価することであった。Lancet誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。

小児心臓弁膜症、部分心臓移植は実現可能か/JAMA

 現在、弁形成術の適応とならない小児の心臓弁膜症の治療に使用されている、死亡ドナー由来の同種組織(ホモグラフト)のインプラントは成長能力や自己修復能力を持たないことから、これらの患者はインプラント交換のために何度も再手術を受けることになる。米国・デューク大学のDouglas M. Overbey氏らは、先天性心臓弁膜症患者における成長能力を有する心臓弁を用いた部分心臓移植(=生体弁置換術)の初期の結果を記述し、実行可能性、安全性、有効性を評価する症例集積研究を実施した。JAMA誌オンライン版2025年8月27日号掲載の報告。

肥満手術、SADI-SはRYGBを凌駕するか/Lancet

 2007年以来、Roux-en-Y胃バイパス術(RYGB)に代わる肥満治療として、スリーブ状胃切除術+単吻合十二指腸バイパス術(SADI-S)が提案されている。フランス・Hospices Civils de LyonのMaud Robert氏らSADISLEEVE Collaborative Groupは、2年のフォローアップの結果に基づき、肥満治療ではRYGBよりもSADI-Sの有効性が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で多施設共同非盲検無作為化優越性試験「SADISLEEVE試験」を実施。術後2年の時点で、RYGB群と比較してSADI-S群は優れた体重減少効果を示し、安全性プロファイルは両群とも良好であったことを報告した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

心理教育的介入で、地域社会の精神保健ケア構築は可能か/Lancet

 医療提供者の不足と文化的に適合したケアの欠如が、世界中で多文化集団への精神保健サービスの提供の妨げになっているとされる。米国・マサチューセッツ総合病院のMargarita Alegria氏らは、人種/民族的、言語的に少数派の集団における抑うつや不安への地域社会の対処能力の構築を目指す心理教育的介入(Strong Minds-Strong Communities[SM-SC]と呼ばれる)の有効性を評価するために、6ヵ月間の研究者主導型多施設共同無作為化臨床試験「SM-SC試験」を実施。SM-SCによる文化的に適合した介入が黒人、ラテン系、アジア系の住民に抑うつ、不安症状の改善をもたらすことが示唆され、これによって地域社会の対処能力を構築することで、精神保健ケアの不足を補う選択肢の提供が可能であることが示されたという。研究の成果は、Lancet誌2025年8月23日号に掲載された。

システム統合型の転倒予防プログラムは高齢者に有効か/JAMA

 世界的に高齢化が急速に進む中、医療資源に乏しい地域に居住する高齢者における効果的な転倒予防戦略のエビデンスは十分ではないとされる。中国・Harbin Medical UniversityのJunyi Peng氏らは、同国農村部の転倒リスクがある高齢者において、プライマリヘルスケアのシステムに組み込まれた転倒予防プログラムの有効性を評価する、12ヵ月間の実践的な非盲検クラスター無作為化並行群間比較試験「FAMILY試験」を実施し、転倒のリスクが有意に低減したことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年8月25日号で報告された。

DGAT-2阻害薬ION224、MASHを改善/Lancet

 ジアシルグリセロール O-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)を標的とした肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチドのION224は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する安全かつ有効な治療薬となりうることを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らION224-CS2 Investigatorsが、米国およびプエルトリコの43の臨床施設で実施した「ION224-CS2試験」において初めて明らかにした。ION224は、MASHの病態に重要な、脂肪毒性ならびに炎症、肝細胞障害および肝線維化に関連する代謝経路であるde novo脂肪合成を抑制する。著者は、「本試験で観察された組織学的改善は体重の変化とは無関係であり、GLP-1をベースとした治療など他の治療との併用が期待される」とまとめている。Lancet誌2025年8月23日号掲載の報告。

早期浸潤性乳がん、2次がんのリスクは?/BMJ

 英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。

上咽頭がん、シスプラチンを用いないtoripalimab併用療法は実現可能か/JAMA

 局所進行上咽頭がん患者において、放射線治療時にシスプラチンを用いないtoripalimab併用療法(toripalimab+導入化学療法および放射線治療)は、治療成功生存期間(failure-free survival:FFS)に関する非劣性が示され、毒性の低い、実現可能な治療法であることが、中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのCheng Xu氏らDIAMOND Study Groupが行った第III相無作為化試験「DIAMOND試験」の結果で示された。先行研究により、上咽頭がん治療においてPD-1阻害薬のtoripalimabを用いることで、放射線治療時に毒性の高いシスプラチンの併用を省略でき、生存に影響を及ぼさない可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年8月21日号掲載の報告。

中等度~重度のCKD関連そう痒症、anrikefon vs.プラセボ/BMJ

 血液透析を受けている中等度~重度のそう痒症を有する患者において、新規末梢性κオピオイド受容体作動薬anrikefon(旧称HSK21542)は安全であることが確認され、かゆみの強度を顕著に軽減し、かゆみに関連する生活の質(QOL)を改善させたことが、中国・Southeast University School of MedicineのBi-Cheng Liu氏らAnrikefon-302 study collaborator groupによる、第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果で示された。κオピオイド受容体作動薬は、中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)関連そう痒症の有望な治療戦略とみなされている。anrikefonは、κオピオイド受容体への結合親和性を高める親水性の小ペプチドおよびスピロ環構造を有し、血液脳関門の通過は最小限となる。持続的な治療効果と中枢性のオピオイド副作用発現頻度の低さから、CKD関連そう痒症を有する患者の新たな治療選択肢として期待されていた。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。

透析を要する腎不全患者、MRAは心血管死を予防するか/Lancet

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、心不全および非重症慢性腎臓病の患者の心血管イベントを予防する可能性があるが、透析を要する腎不全患者への効果は明らかではない。カナダ・McMaster UniversityのLonnie Pyne氏らの研究チームは、この患者集団におけるMRAの有効性と安全性の評価を目的に、系統的レビューとメタ解析を実施。ステロイド型MRAは、透析を要する腎不全患者における心血管疾患による死亡にほとんど、あるいはまったく影響を及ぼさなかったことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年8月23日号で報告された。

自己免疫性肺胞蛋白症、GM-CSF吸入薬molgramostimは有効か/NEJM

 自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体による進行性のサーファクタントの貯留と低酸素血症を特徴とするまれな疾患で、肺胞マクロファージがサーファクタントを除去するにはGM-CSFが必要となる。米国・シンシナティ小児病院医療センターのBruce C. Trapnell氏らIMPALA-2 Trial Investigatorsは、aPAP患者におけるmolgramostim(遺伝子組換えヒトGM-CSF吸入製剤)の有効性と安全性の評価を目的に、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(IMPALA-2試験)を実施。molgramostimの1日1回吸入はプラセボに比べ肺のガス交換能を有意に改善させたことを報告した。研究の成果は、NEJM誌2025年8月21・28日合併号に掲載された。