英国における国民保健サービス(NHS)の改革プランでは、一般診療へのアクセス改善が優先課題とされているが、「NHS 10年プラン」に掲げられている3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は、患者が求めていることや診療所の業務を支えるために必要なものとは一致しない可能性があることを、英国・ケンブリッジ大学のCarol Sinnott氏らが、患者、介護者、総合診療医(GP)、および一般診療所のその他のスタッフを対象とした半構造化インタビューによる質的研究の結果で報告した。著者は、「3つの改革提案が、ケアの継続性を損なったり既存サービスを断片化したりしないよう、主要な関係者と連携した慎重な設計・実施・評価が求められる」とまとめている。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。
患者・介護者、GP・スタッフに半構造化インタビューを実施
2023年7~10月に、5人の研究者(保健医療研究者3人、臨床研究者2人)が、英国の地理的に分散した5地域(デボン、メドウェイ、ブラックプール、ルートン、ランカシャー)に居住する患者・介護者、および東部のNHS一般診療所のスタッフ(GP・看護師などの医療専門職、診療所の管理者、事務職員などすべての職種、1診療所当たり4人まで)を募集し、半構造化インタビューガイドを用いて、一般診療所へのアクセスに関してインタビューを実施した。
分析は、継続的比較法(constant comparative method)に基づき、NHS 10年プランで提唱された3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)に沿ってテーマを整理した。
3つの改革提案(デジタル化、地域医療への移行、予防医療の提供)は一長一短
患者・介護者41人、一般診療所13施設からスタッフ29人(GP 10人、看護師5人、薬剤師1人、ウェルビーイングコーチ1人、診療所の管理者7人、事務職員5人)の計70人が半構造化インタビューを受けた。患者・介護者は、12の民族で構成され、学習障害、視覚障害、移民など多様な個人特性・医療特性を有していた。一般診療所は、9施設が裕福な地域、4施設が貧困地域に位置していた。
NHS 10年プランの3つの改革提案は、参加者にある程度の利益をもたらすが、新たなリスクや不利益も生み出すことが示された。
診療所におけるデジタル化の推進(主にオンライン予約システムや医療情報へのアクセス)は、一部の患者にとっては利便性を高め効率の改善をもたらすが、一方で、GPが対応できる診察予約のキャパシティが根本的に不足しているという問題の解決には寄与せず、新たなかたちの不利益や排除を生み出し、患者が求めている「顔なじみのGPとの人間的なつながりや共感」に対処するものではなかった。
病院から地域で支える医療サービスへの移行(一般診療所がより広い地理的範囲を担当する新たな医療サービスのモデル)は、診察予約の受け入れキャパシティの向上につながるものと参加者は捉えていたが、調整や組織化に関する実務的な課題などの制約に直面した。より広域を網羅する新たなサービス下では、患者がかかりつけの診療所であるにもかかわらず「認識されていない」「知られていない」と感じるなど、患者が重視するGPとの長期的な関係性を損なうリスクがあった。
予防医療の重要性は認識されていたものの、ケアが断片化する傾向や、単一疾患に焦点を当てた過度に単純化されたモデルになりがちで、患者の能動的受診に充てられるべき診療所のキャパシティを浪費してしまう課題があることが指摘された。一般診療所スタッフの業務負担が増大することへの懸念も一貫して示された。
(ケアネット)