日本発エビデンス|page:35

ドライバー遺伝子陰性NSCLC、CGP検査で20%超にドライバー遺伝子異常を検出

 肺がんにおいては、診断時にマルチ遺伝子検査によってドライバー遺伝子が調べられることが一般的である。しかし、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるドライバー遺伝子の種類は年々増加しており、長期生存例などでは十分に調べられていない可能性もある。遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング[CGP]検査)が2019年に保険適用となり実施され始めているが、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった患者のCGP検査でのドライバー遺伝子異常の検出状況は明らかになっていない。そこで、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった進行NSCLC患者におけるCGP検査の結果が解析され、24.5%にドライバー遺伝子異常が認められた。本研究結果は、京都府立医科大学の石田 真樹氏らによってCancer Science誌オンライン版2024年3月7日号で報告された。

活性型ビタミンD3がサルコペニアを予防/産業医大

 前糖尿病と糖尿病はサルコペニアの独立した危険因子であることが報告されている。今回、前糖尿病患者への活性型ビタミンD3投与がサルコペニアを予防するかどうか調べた結果、筋力を増加させることでサルコペニアの発症を抑制し、転倒のリスクを低減させる可能性があることが、産業医科大学病院の河原 哲也氏らによって明らかにされた。Lancet Healthy Longevity誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。  これまでの観察研究では、血清25-ヒドロキシビタミンD値とサルコペニア発症率との間に逆相関があることも報告されている。しかし、ビタミンDによる治療がサルコペニアの発症を防ぐかどうかは不明である。そこで研究グループは、活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールによる治療が前糖尿病患者のサルコペニアの発症を抑制できるかどうかを評価するため、「Diabetes Prevention with active Vitamin D study(DPVD試験)※」の付随研究を実施した。

日本での大腸がん手術の転帰、月~木曜日vs.金曜日

 英国での大規模な後ろ向き研究で、待機的手術における30日以内の死亡リスクが月曜日で最も低く、週末に向けて増加することが報告されている。平日(月~金曜日)の間でもこのように差が見られる「weekday effect」については、まだ議論の余地がある。今回、広島大学の今岡 洸輝氏らは、StageI~III大腸がんの待機的手術を対象とした多施設共同後ろ向き解析を実施し、手術の曜日と短期アウトカムの関連を検討した。その結果、手術を金曜日に受けた患者は金曜日以外に受けた患者より術後合併症の発生率が高く、術後入院期間も長いことがわかった。Journal of Surgical Research誌2024年4月号に掲載。  本研究は、広島臨床腫瘍外科研究グループに属する15施設において、2017年1月~2019年12月に大腸がんの原発巣切除術を受けた2,574例を対象に解析した。手術日により金曜日と金曜日以外(月~木曜日)の2群に分け、傾向スコアマッチング後、30日死亡率と術後アウトカムを比較した。

院外心停止患者への市民による心肺蘇生、AED使用で生存が2倍以上に/日本循環器学会

 院外心停止(OHCA)患者の予後を改善するためには、市民による質の高い心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の即時使用率をさらに高める必要がある。総務省消防庁は、1994年に市民を対象としたCPRの認定講習会を全国で開始し、2019年には受講者が年間約200万人に及び、認定者数は増加傾向にある。しかし、市民のCPR普及率やOHCA患者の生存率に及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そのため、虎の門病院の山口 徹雄氏らの研究グループは、市民介入によるCPRと、患者の1ヵ月後の転帰との関連を評価した。本結果は、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、山口氏が発表した。なお本研究はResuscitation誌2024年2月号に掲載された。

がん合併の低リスク肺塞栓症患者に対する在宅療養は適切か(ONCO PE)/日本循環器学会

 肺塞栓症含む血栓塞栓症はがん患者の主要な合併症の1つだ。通常の肺塞栓症の場合、低リスクであればDOACによる在宅療養を安全に行えるものの、がん患者の肺塞栓症に対してもそれが可能であるか議論されていた。倉敷中央病院心臓病センター循環器内科の茶谷 龍己氏らは、肺塞栓症重症度スコア(sPESI)が1点のがん合併の低リスク肺塞栓症患者に対して、リバーロキサバンによる在宅療養と入院療養の比較試験を、ONCO PE試験のコンパニオンレポートとして実施した。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2セッションにて茶谷氏が発表した。なお本結果は、Circulation Journal誌オンライン版2024年3月8日号に同時掲載された。

日本における認知症教育による潜在的態度の変化

 東京大学の松本 博成氏らは、成人および高齢者における認知症に対する偏見などの潜在的な態度の測定に関して、その実現可能性と妥当性を評価し、仮想現実(VR)を用いた認知症フレンドリー教育が潜在的な態度に及ぼす影響を評価した。Australasian Journal on Ageing誌オンライン版2024年2月15日号の報告。  ランダム化比較試験のデータを2次分析した。東京在住の20~90歳が、VRの有無にかかわらず、認知症フレンドリー教育に参加した。認知症フレンドリー教育プログラム終了後、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)を用いて、認知症に対するimplicitを測定した。

日本人の口腔/咽頭がんの10年全死亡率、飲酒量による違いは?

 飲酒と口腔/咽頭がんの予後との関連については先行研究が少なく、そのほとんどが欧州の研究で5年までの全生存を調査しているもので、結果が一致していない。今回、日本における口腔/咽頭がん患者における飲酒と10年全死亡率の関連を大阪国際がんセンターがん対策センターの小山 史穂子氏らが評価した。その結果、多量飲酒者(エタノール46g/日以上摂取)では非飲酒者と比較して死亡リスクが1.36倍と高く、とくに女性では2.52倍になることが示唆された。Cancer Epidemiology誌2024年4月号に掲載。

日本人の降圧薬アドヒアランス、低い患者とは?

 日本では、血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている患者はわずか30%程度で、降圧薬の服薬アドヒアランスが低いことがコントロール不良の原因であると考えられている。今回、九州大学の相良 空美氏らが日本人の大規模データベースを用いて降圧薬のアドヒアランスを調べたところ、降圧薬のアドヒアランス不良率は26.2%であり、若年、男性、単剤治療、利尿薬使用、がんの併存、病院での処方、中規模/地方都市居住が、アドヒアランス不良と関連することが示された。Journal of Hypertension誌2024年4月号に掲載。

高齢NSCLC患者へのICI、化学療法の併用を検討すべき患者は?

 PD-L1高発現(TPS≧50%)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、PD-1またはPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、ICIと化学療法の併用療法は標準治療の1つとなっている。しかし、高齢者におけるエビデンスは限られており、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法のどちらが適切であるかは明らかになっていない。そこで、70歳以上のPD-L1高発現の進行NSCLC患者を対象とした多施設共同後ろ向き研究において、ICI単剤療法とICIと化学療法の併用療法が比較された。その結果、ECOG PS0または非扁平上皮がんの集団では、ICIと化学療法の併用療法が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善した。本研究結果は、京都府立医科大学の武井 翔太氏らによってFrontiers in Immunology誌2024年2月23日号で報告された。

心不全へのARNI、日本人での安全性が明らかに(REVIEW-HF)/日本循環器学会

 急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版が2020年に発表され、国内における心不全(HF)治療も変化を遂げている。とくにアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)発売の影響は大きいが、そのサクビトリル・バルサルタン(商品名:エンレスト)の治療を受ける国内患者の特徴、忍容性、臨床転帰は明らかにされていない。そこで、金岡 幸嗣朗氏(国立循環器病研究センター)らが全国多施設観察研究の分析を行い、その結果を第88回日本循環器学会年次学術集会 Late Breaking Cohort Studies1にて報告した。

酒で顔が赤くなる人は、コロナ感染リスクが低い?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。  日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。

認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。  65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。

ICIによる心臓irAE発症タイミングと危険因子~国内RWDより/日本循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とは、ご存じのとおり、近年注目されているがん薬物療法で、T細胞活性を増強することによって抗腫瘍効果をもたらし、多くのがん患者の予後を改善させている。しかし、副作用として心筋炎や致死性不整脈など循環器領域の免疫関連有害事象(irAE)の報告も散見される。そこで、稗田 道成氏(九州大学医学部 第一内科 血液・腫瘍・心血管内科)らがLIFE Study1)のデータベースを基に心臓irAEの発生率を調査し、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studies2において報告した。

日本人の3つの食事パターン、脳が萎縮しやすいのは?

 日本人における食事パターンと脳容積の変化の関連はほとんど調べられていない。今回、国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らが、老化に関する長期縦断疫学研究プロジェクトで日本人の中高年を前向きに調査したところ、伝統的日本食を摂取する女性は、西洋食を摂取する女性より全灰白質の萎縮が少ないことが示された。一方、男性は食事パターンと脳萎縮との関連は認められなかったという。Nutrition Journal誌2024年3月12日号に掲載。

日本における片頭痛患者の治療パターンと特徴

 日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。  大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて、調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。

早期アルツハイマー病における攻撃的行動と関連する脳の変化

 認知症患者の精神神経症状は、介護者の負担につながり、患者の予後を悪化させる。これまで多くの神経画像研究が行われているものの、精神神経症状の病因学は依然として複雑である。東京慈恵会医科大学の亀山 洋氏らは、脳の構造的非対称性が精神神経症状の発現に影響している可能性があると仮説を立て、本研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年2月23日号の報告。  アルツハイマー病患者における精神神経症状と脳の非対称性との関連を調査した。対象は、軽度のアルツハイマー病患者121例。日本の多施設共同データベースより、人口統計学的データおよびMRIのデータを収集した。脳の非対称性は、左脳と右脳の灰白質体積を比較することで評価した。精神神経症状の評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)を用いた。その後、脳の非対称性と精神神経症状との相関関係を包括的に評価した。

うつ病高齢者に対する日本で使用可能な抗うつ薬~系統的レビューとメタ解析

 日本うつ病学会のうつ病治療ガイドラインの改定を行うために、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ病の高齢者を対象とした日本で使用可能な抗うつ薬の、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のシステマティックレビュー、およびペアワイズメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年2月6日号の報告。  主要アウトカムは、治療反応率とした。副次的アウトカムに、抑うつ症状評価尺度のスコア改善、寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象を含めた。ランダムエフェクトモデルを用いて、リスク比(RR)、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を算出した。

心筋を微小組織にして移植、iPS細胞による新たな心不全治療とは/日本循環器学会

 再生医療において、ヒト人工多能性幹細胞由来心筋細胞 (hiPSC-CM)を用いた心臓修復の臨床応用は、心筋細胞(CM)の生着不良や移植後の不整脈に苛まれ難航してきた。だが今回、第88回日本循環器学会学術集会『iPS由来再生心筋細胞移植治験の初期成績から見た虚血性重症心不全治療へのインパクト』において、福田 恵一氏(Heartseed社/慶應義塾大学 名誉教授)らは、他家iPS細胞由来の純化精製心筋細胞微小組織(hiPSC-CS)を開発し、心筋層に直接注入することで、梗塞部位周辺の心筋の再生に成功したことを報告した。なお、本発表は非臨床試験および現在進行中の第I/II相LAPiS試験の中間報告である。

D2B time短縮で心原性ショック伴うSTEMIの院内死亡率が減少(J-PCIレジストリ)/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心原性ショックを伴うST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者における、Door-to-Balloon(D2B)timeと院内死亡率との関連について、国内の大規模なレジストリである日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の「J-PCIレジストリ」を用いた解析が行われた。その結果、D2B timeの10分の延長につき、院内死亡率が7%ずつ増加することが示され、D2B timeを短縮することは院内死亡率の減少につながる可能性が示唆された。3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1セッションにて、千葉大学医学部附属病院循環器内科の齋藤 佑一氏が発表した。  STEMIの治療成績・予後の決定因子として、発症から冠動脈再灌流までの時間が重要であるものの、その発症時間を正確に同定することが難しいことから、指標として用いられる機会は少ない。そのため、入院から再灌流までの時間であるD2B timeが、治療の迅速性を表す実用的な指標として用いられている。これまでに、心原性ショックを合併したSTEMIにおけるD2B timeに関して検証した報告は乏しい。

低リスク高血圧患者、「血圧の下げすぎ」による心血管リスクは

 高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。  本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全入院、末梢動脈疾患の複合であった。