日本発エビデンス|page:35

日本におけるSNS上のがん情報、4割超が誤情報

 SNSの普及により、患者はがん情報に容易にアクセスできるようになった。しかし、患者の意思決定に悪影響を与えかねない誤情報や有害情報も大量に発信されている。日本のSNSにおけるがん情報はどの程度信頼できるものなのか。これについて調べた名古屋市立大学病院 乳腺外科の呉山 菜梨氏らによる研究結果がJMIR formative research誌オンライン版2023年9月6日号に掲載された。  研究者らは、Twitter(現:X)上で2022年8~9月に投稿された、日本語の「がん」という言葉を含むツイートを抽出した。

ブレクスピプラゾール治療、統合失調症患者からどう評価されているか

 藤田医科大学の横井 里奈氏らは、ブレクスピプラゾールによる抗精神病薬治療に対する統合失調症患者の主観的評価を調査した。Fujita Medical Journal誌2023年8月号の報告。  本研究は、14週間のプロスペクティブ観察研究として実施した。対象は、2019年2月~2020年1月に本研究に参加した統合失調症患者19例。  主な結果は以下のとおり。 ・ブレクスピプラゾール治療開始時の患者の平均年齢は40.6±14.2歳、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの平均値は4.6±1.2であった。

新型コロナEG.5.1、伝播力と免疫回避能が増強/東大医科研

 現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株は、アジアや欧州、北米を中心に、オミクロン株EG.5系統(エリス)の感染が急増し、主流となっている。XBB系統(XBB.1.9.2)の子孫株であるEG.5系統は、世界保健機関(WHO)により、XBB.1.5、XBB.1.16と共に注目すべき変異株(VOI)に分類されている。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、EG.5系統のEG.5.1のウイルス学的特徴を解析したところ、XBB.1.5に比べて1.2倍高い伝播力を示し、BBの中和抗体に対して1.4倍高い抵抗性を示したことを、調査により明らかにした。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月11日号に掲載された。

自閉スペクトラム症と統合失調症の精神症状の比較

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、明らかな精神症状を発現する傾向があり、これらの症状は、統合失調症患者でみられる症状と類似している。獨協医科大学のMomoka Yamada氏らは、ASD、統合失調症、非精神疾患の初診患者における精神症状の違いについて、調査を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月21日号の報告。  初診患者のデータは、2019年6月~2021年5月の獨協医科大学病院精神科の診療記録よりレトロスペクティブに収集した。分析には、精神症状の簡易評価ツールであるPRIME Screen-Revised(PS-R)の評価データを有する254例を含めた。すべての精神科診断には、DSM-V診断基準が用いられていた。

日本人双極性障害患者の再入院に対するアリピプラゾール持続性注射剤の予防効果

 熊本・弓削病院の後藤 純一氏らは、双極性障害の再入院に対するアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の効果を調査するため、1年間のレトロスペクティブミラーイメージ研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年8月10日号の報告。  参加者は、西日本の精神科救急病院および急性期病院から募集した。対象者は、観察期間中に医療記録が欠落しておらず、1年以上のAOM治療が実施された双極性障害患者39例。主要アウトカムは、精神科再入院と関連する再入院率、再入院数、総入院日数、再入院までの期間とした。有意水準は、p<0.05で設定した。

脳卒中の診断、年齢の左桁バイアスはあるか

 人間には、年齢などの連続変数の左端の桁の数字に基づいて判断する傾向(left-digit bias:左桁バイアス)がある。このバイアスが医師の意思決定にも影響するのだろうか。最近の研究では、80歳の誕生日直前の患者より、直後の患者に冠動脈バイパス術を行う可能性が低かったことが示されている。今回、京都大学の福間 真悟氏らは、脳卒中に対する画像検査のオーダーに年齢の左桁バイアスが影響するかを検討した。その結果、男性患者に対してのみ、40歳前後でオーダーの不連続的な増加がみられ、医師の脳卒中リスクの推定に認知バイアスが存在することが示唆された。Social Science & Medicine誌2023年8月26日号に掲載。

コーヒー・緑茶で貯蔵鉄が減少、閉経後女性は多飲による鉄欠乏に注意?~J-MICC佐賀地区研究

 コーヒーや緑茶の摂取は、腸において鉄の吸収を阻害することにより、体内の貯蔵鉄の量を減少させると考えられている。貯蔵鉄が過剰となると酸化ストレスが増加し、心血管疾患やがんの発症リスクとなるため、コーヒーや緑茶の摂取がこれらのリスクを低下させる可能性が指摘されている。しかし、過剰摂取は鉄欠乏を招く可能性もある。そこで、南里 妃名子氏(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)らの研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)佐賀地区の調査に参加した1万435人を対象として、コーヒー、緑茶の摂取量と血清フェリチン値との関係を検討した。その結果、男性および閉経後女性では、コーヒー、緑茶はいずれも摂取量が多いほど血清フェリチン値が低かった。閉経前女性では、緑茶の摂取量のみに同様の関連が認められた。また、閉経後女性において、コーヒーを1日3杯以上飲む人は飲まない人と比べて、鉄欠乏が多くみられた。本研究結果は、Frontiers in Nutrition誌2023年8月10日号に掲載された。

血友病A/Bのconcizumab予防投与、年間出血回数が大幅減/NEJM

 concizumabは、組織因子経路インヒビター(TFPI)に対するモノクローナル抗体で、血友病の全病型で皮下投与の予防治療薬として検討が進められている。名古屋大学病院の松下 正氏ら「explorer7試験」の研究グループは、インヒビターを有する血友病AまたはBの患者において、concizumabの予防投与はこれを行わずに出血時補充療法(on-demand treatment)のみを行う場合と比較して、年間出血回数(ABR)が大きく減少し、長期的なアウトカムを改善する可能性があることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌2023年8月31日号に掲載された。

日本人高齢者の歩行速度と軽度認知障害リスクとの関係

 これまでの研究では、歩行速度の低下と認知機能低下との関連が示唆されている。しかし、この関連が高齢者集団の年齢および性別の影響を受けるかは、よくわかっていない。慶應義塾大学の文 鐘玉氏らは、年齢、性別の影響を考慮し、軽度認知障害(MCI)と歩行速度との関連について調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2023年8月2日号の報告。  本横断研究には、2016~18年に65歳以上の日本人高齢者8,233人が登録された。性別、年齢により層別化した後、対象者の歩行速度を5分位に分類し、それぞれのMCI有病率の差を算出した。歩行速度別のMCI有病率、年齢および性別の影響を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

記憶力に不安がある高齢者の運転はいかに危険か/長寿研ほか

 日本の高齢ドライバーを対象とした横断研究の結果、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高かったことを、国立長寿医療研究センターの栗田 智史氏らの研究グループが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年8月25日号掲載の報告。  先行研究によって、MCRは処理速度や実行機能の低下などとの関連が報告されているが、MCRと自動車衝突事故との関連性に関する検討は十分ではない。簡便なMCR評価を行うことで衝突事故リスクに早期に気付くことができる可能性があるため、研究グループはMCR評価と衝突事故やヒヤリハットとの関連を検討した。

日本人のBMIと認知症リスク、男女間で異なる

 BMIと認知症リスクとの関連は、年齢によりばらつきがあり、性別の影響を受ける可能性がある。新潟大学のAlena Zakharova氏らは、地域在住の日本人を対象に、BMIと認知症リスクとの関連に対する性別の影響を明らかにするため、コホート研究を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌2023年8月1日号の報告。  ベースライン時(2011~13年)に40~74歳であった地域在住の日本人1万3,802人を対象に8年間のフォローアップ期間を伴うコホート研究を実施した。直接測定により収集された身長、体重、腹囲を含む社会人口統計学的およびライフスタイル、病歴に関する情報を自己記入式アンケートで収集した。BMIに基づき参加者を次の6群に分類した。

日本人成人強迫症患者におけるADHD併発の影響

 これまでの研究において、小児および青年における強迫症と注意欠如多動症(ADHD)との関連が報告されている。しかし、成人における強迫症とADHDとの生涯併発率との関連を調査した研究は、ほとんどなかった。兵庫医科大学の宮内 雅弘氏らは、日本人成人強迫症患者におけるADHDの併発に関連する臨床的および精神病理学的特徴を調査した。Comprehensive Psychiatry誌2023年8月号の報告

レビー小体型認知症のパーキンソニズムに対するゾニサミド補助療法

 レビー小体型認知症(DLB)患者のパーキンソニズムに対してレボドパで効果不十分な場合、レボドパの増量とゾニサミド併用の効果および安全性の違いについては、よくわかっていない。大阪大学の池田 学氏らは、レボドパ300mg/日以下で治療されたパーキンソニズムを伴うDLB患者を対象に、ゾニサミド25mg/日併用療法とレボドパ100mg/日増量療法の比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年7月20日号の報告。  本DUEL研究は、多施設共同ランダム化非盲検並行群間非劣性試験として実施された。観察期間中、レボドパ300mg/日以下で4週間投与を行った。その後患者は、ゾニサミド25mg/日併用群またはレボドパ100mg/日増量群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、16週目および24週目のMDS-UPDRS Part III総スコアの平均変化とした。

頻繁な入浴で長期的な抑うつリスク低減

 湯に浸かる入浴(浴槽入浴)の頻度と長期的な抑うつ発症との関連を調査した6年にわたるコホート研究の結果、冬に浴槽入浴を頻繁に行う高齢者では新たな抑うつの発症が有意に少ないことを、東京都市大学の早坂 信哉氏らの研究グループが明らかにした。日本温泉気候物理医学会雑誌2023年オンライン版7月24日号掲載の報告。  これまでの研究において、頻繁な浴槽入浴が高い自己評価と関連していることや、介護保険が必要になる可能性が低いことなどが報告されているが、生活習慣としての浴槽入浴が健康にどのような影響を及ぼすかについてはまだ十分に解明されていない。

ビタミンD、p53免疫反応性の消化管がんの再発/死亡を抑制

 最近発表された無作為化試験のメタ解析では、ビタミンD3補充ががん死亡率に有益な影響を与えることが明らかになっている。今回、東京慈恵会医科大学の菅野 万規氏らの研究で、p53免疫反応性を有する消化管がん患者において、ビタミンD補充が再発/死亡リスクを低下させることが明らかになった。JAMA Network Open誌2023年8月22日号に掲載。

過去10年間、日米間の抗がん剤ドラッグラグはどのくらいか

 抗がん剤の日米間のドラッグラグに関する既存の研究や統計では、ドラッグラグは減少したとするものもあるが、一方で日本では未承認の薬剤が多く残されている。北里大学の立花 慶史氏らは、未承認薬がドラッグラグに与える影響を定量化することを目的とした研究を行い、結果をInternational Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月10日号に報告した。  本研究では、2011~22年の間に米国で承認された抗がん剤136品目の情報が収集された。米国での承認日から日本での承認日までの日数として定義される承認ラグをすべての選択された薬剤について算出し、中央値をKaplan-Meier法で算出した。なお、日本で承認されていない医薬品の承認ラグについては、打ち切りデータとして扱った。承認ラグと関連する可能性のある因子を、Cox回帰分析を用いて検討した。

日本人の双極性障害および統合失調症に関連するミトコンドリアの遺伝的変異

 双極性障害や統合失調症は、複雑な精神疾患であり、環境的要因と遺伝的要因(母性遺伝を含む)の両方が影響している可能性がある。これまで、いくつかの研究において、ミトコンドリア染色体の遺伝子変異と双極性障害および統合失調症との関連が調査されているが、研究結果は同一ではなく、参加者は欧州の患者に限定されていた。岐阜大学のRyobu Tachi氏らは、日本人集団におけるミトコンドリア染色体のゲノムワイドな遺伝的変異と双極性障害、統合失調症、精神疾患との関連を調査した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年7月21日号の報告。

間質性肺疾患の急性増悪、ニンテダニブの新規投与は有効か?

 『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では「特発性肺線維症(IPF)急性増悪患者に抗線維化薬を新たに投与することは推奨されるか?」というクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されており、推奨は「IPF急性増悪患者に対して抗線維化薬を新たに投与しないことを提案する(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:D[非常に低])」となっている。このような推奨の理由として、抗線維化薬であるニンテダニブ、ピルフェニドンをIPF急性増悪時に新たに投与する場合の有効性が明らかになっていないことがある。とくにニンテダニブについては、後ろ向き研究を含めて症例報告以外に報告がない1)。そこで、順天堂大学医学部医学研究科の加藤 元康氏らの研究グループは、「間質性肺疾患(ILD)の急性増悪発症後にニンテダニブ投与が行われた症例のニンテダニブの有効性と安全性を確認する後方視的検討」という研究を実施した。その結果、ニンテダニブは90日死亡率と急性増悪の再発までの期間を改善した。本研究結果は、Scientific Reports誌オンライン版2023年8月2日号で報告された。

筋トレは方法次第で1日3秒、週3日で効果あり!?

 「筋力トレーニングはつらいので嫌い」という人は、少なくないだろう。しかし1日3秒、週3日で効果があるとしたらどうだろうか。新潟医療福祉大学とオーストラリア・Edith Cowan Universityの研究グループは、1日3秒、週3日の全力の伸張性収縮(重りをゆっくりと降ろすなどの運動)を4週間実施することで、筋力が増加することを明らかにした。本研究結果は、吉田 麗玖氏(間庭整形外科医院)らによってEuropean Journal of Applied Physiology誌オンライン版2023年7月28日号で報告された。  健康な大学生26人を対象として、全力の伸張性収縮を1日3秒、週2日実施する群(週2日群)と1日3秒、週3日実施する群(週3日群)に均等に割り付け、4週間のトレーニングを実施した。4週間のトレーニング前後における短縮性収縮、等尺性収縮、伸張性収縮時の随時最大筋力の変化を群間比較した。また、上腕二頭筋、上腕筋の筋厚の変化も比較した。これらの結果は、先行研究において1日3秒、週5日のトレーニングを4週間実施した群(週5日群)とも比較した。

うつ病に対する運動療法が有効な日本人の性格特性

 産業医科大学の池ノ内 篤子氏らは、健康な日本人労働者における抑うつ症状や社会適応への性格特性の影響、運動療法前後の抑うつ症状や社会適応の変化、うつ病予防を目的とした運動療法の完遂率に対する介入前の性格特性の影響を調査した。その結果、抑うつ症状と社会適応は、運動療法前後の性格特性や同療法の完遂率と関連していることが明らかとなった。また、男性において運動療法前の誠実性は、運動療法の完遂率の高さを予測する因子であることが報告された。Frontiers in Psychology誌2023年6月21日号の報告。