日本発エビデンス|page:33

イソフラボンの摂取量が多い女性は頭痛が少ない―東京医科歯科大学

 イソフラボンの摂取量が多い閉経期以降の女性は、頭痛が少ないことが明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に3月14日掲載された。  イソフラボンは大豆などのマメ科の植物に多く含まれている栄養素であり、抗酸化作用に加えて女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用を持つことから、“植物性エストロゲン”と言われることもある。これまでの研究から、女性の健康を保護するように働く可能性が示唆されている。

日本人乳がん患者におけるワクチン接種後の中和抗体価/ASCO2022

 日本人乳がん患者における新型コロナワクチン2回接種後の中和抗体価が調べられ、95.3%と高い抗体陽転化率が示されたものの、治療ごとにみると化学療法とCDK4/6阻害薬治療中の患者で中和抗体価の低下が示唆された。名古屋市立大学の寺田 満雄氏らによる多施設共同前向き観察研究の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表された。 ・対象:2021年5~11月にSARS-CoV-2ワクチン接種予定の乳がん患者(Stage 0~IV) ・試験群と評価法:がん治療法ごとに5群に分け(無治療、内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法、抗HER2療法)、最初のワクチン接種前と2回目ワクチン接種後(4週後)に血清サンプルを採取、ELISA法で血清中IgG濃度および各変異株に対する中和抗体価を評価した。

日本食の死亡率や認知症リスクへの影響~大崎コホート研究

 長寿国である日本。その要因として日本人の食生活が影響しているといわれている。しかし、日本食の健康に対するベネフィットは、十分に解明されていない。2007年、宮城県大崎市の日本人住民を対象とした大崎コホート研究において、日本食パターンと心血管疾患による死亡率との関連が世界で初めて発表された。以来、本報告の著者らは、日本食パターンと健康への影響に関するエビデンスを蓄積するため、日本食インデックス(JDI)を開発し、日本食の健康への影響について検討を行ってきた。東北大学の松山 紗奈江氏らは、これまでの6報の論文をレビューし、日本食の健康への影響および将来の研究への影響について議論を深めるため本報告を行った。その結果、日本食パターンを高率で実践している人では、死亡率だけでなく、機能障害や認知症リスクの減少も認められることが確認された。Nutrients誌2022年5月12日号の報告。

日本における統合失調症に対する抗コリン薬使用の特徴

 統合失調症のさまざまな臨床ガイドラインにおいて、抗コリン薬の長期使用は推奨されていない。福岡大学の堀 輝氏らは、向精神薬使用のパターンおよび病院間での違いを考慮したうえで、統合失調症患者に対する抗コリン薬使用の特徴について、調査を行った。その結果、抗精神病薬の高用量および多剤併用、第1世代抗精神病薬の使用に加え、病院の特性が抗コリン薬の使用に影響を及ぼすことが示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2022年5月17日号の報告。  日本の医療機関69施設の統合失調症患者2,027例を対象に、退院時治療薬に関する横断的レトロスペクティブ調査を実施。抗コリン薬と向精神薬使用との関連を調査した。各病院を抗コリン薬の処方率に応じて、低、中、高の3グループに分類し、抗コリン薬処方率と抗精神病薬使用との関連を分析した。

中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験

 中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、ファビピラビル、カモスタット、シクレソニド吸入剤による併用治療により入院期間を短縮したことが、単施設非盲検無作為化比較試験で示された。国際医療福祉大学成田病院の寺田 二郎氏らが、Lancet Discovery ScienceのeClinicalMedicine誌オンライン版2022年6月3日号で報告した。  本試験は、COVID-19肺炎患者の重症化抑制に関するファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用療法の有効性を検討する第III相試験である。国による予防接種推進前である2020年11月11日~2021年5月31日に、国際医療福祉大学成田病院において参加者を登録し、ファビピラビル単剤治療群とファビピラビル+カモスタット+シクレソニド吸入剤の多剤併用治療群に無作為に割り付けた。主要評価項目は入院期間。本試験はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)助成によるもの。

COVID-19パンデミックによる日本人医学生の座位行動とうつ病との関連

 2019年に発生したCOVID-19により人々の行動が変化し、座りがちな行動の割合が増え、うつ病の増加につながっていることが示唆されている。医学生におけるこのような影響は、今後の医療提供体制に負の作用をもたらす可能性がある。広島大学の田城 翼氏らは、日本人医学生を対象にCOVID-19パンデミック中の座位行動とうつ病との関連を調査した。その結果、COVID-19パンデミック下の日本人医学生のうつ病リスクを減少させるためには、座位時間および余暇でのスクリーンタイムの減少が有効である可能性が示唆された。著者らは、これらの結果に基づき、うつ病の予防や治療を行うための適切な介入の開発が求められると報告している。BMC Psychiatry誌2022年5月20日号の報告。

モデルナアームが発現しやすい人は?/自衛隊中央病院

 モデルナ社の新型コロナワクチン(mRNA-1273ワクチン、商品名:スパイクバックス筋注)接種により一時期話題となった「モデルナアーム」。このモデルナアームの原因が遅発性大型局所反応(DLLR:delayed large local reaction)と言われるも詳細は不明であった。しかし、今回、自衛隊中央病院皮膚科の東野 俊英氏らはDLLRがIV型アレルギーを原因として生じるアレルギー性接触皮膚炎に類似している可能性があること、女性は男性より5.3倍も発症しやすいことなどを突き止めた。このようにモデルナアームの原因や発症しやすい対象者が特定できれば、今後、この副反応を回避する対応ができそうだ。本研究はJAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号に掲載されたほか、自衛隊中央病院のホームページでも報告している。

ICU治療を受けた患者の4人に1人が失業―国内多施設共同研究

 集中治療室(ICU)での治療を受けた患者は、退院後に職を失いやすいことを示すデータが報告された。治療を受ける前に職に就いていて、退院後に自宅生活へ復帰できた人の24.1%が、1年後に失業状態にあるという。失業リスクに関連する因子も明らかになった。札幌市立大学看護学部成人看護学の卯野木健氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月18日掲載された。  ICUで治療を受けた患者は、職場復帰が困難である実態が既に報告されている。その理由として、退院後も身体的な機能障害やメンタルヘルス不調が継続・発症しやすいこと、離職期間が長期に及ぶケースが多いことなどが指摘されている。ただし、国内では十分な調査がまだ行われておらず、ICU入室に伴う失業の実態やそれに関連する因子が明らかになっていない。卯野木氏らは、多施設共同研究「SMAP-HoPe研究」のサブ解析により、この点の詳細な検討を行った。

どの栄養素を「いつ」取るかで血圧に差が出る―早大

 ナトリウム(塩分)の摂取量が多いと血圧が高くなりやすいことは広く知られているが、新たな研究から、ナトリウムの多い食事をいつ摂取するかによって、血圧への影響が異なる可能性が報告された。早稲田大学先端生命医科学センターの柴田重信氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Nutrition」に3月4日掲載された。朝食のタンパク質量が多いことや、昼食の食物繊維量が多いことと、血圧の低さとの有意な関連なども明らかになった。  栄養学では長年、摂取する栄養素の量と健康との関連が研究されてきたが、近年、栄養素を「いつ」摂取するかという点も重要であることが分かり、「時間栄養学」と呼ばれる研究が活発に行われている。特に血圧は、朝から日中は高く、夕方から夜間は低下するという日内変動があり、栄養素の摂取タイミングの違いが血圧へ異なる影響をもたらす可能性が考えられ、動物実験からはそれを裏付けるデータが報告されている。ただし、ヒトではそのような視点での研究がまだほとんど行われていない。柴田氏らは、(株)Askenのモバイルヘルスアプリ「あすけん」の利用データを解析して、この点を検討した。

母親の育児ストレスと子供のADHDとの関連~日本の出生コホート研究

 注意欠如多動症(ADHD)は幼児期に発症し、その後、生涯にわたり影響を及ぼす疾患であるが、早期診断や介入により、臨床アウトカムの最適化を図ることができる。長期的または過度な育児ストレスは、ADHDなどの発達障害に先行してみられる乳児の行動の差異に影響している可能性があることから、幼少期の定期的評価には潜在的な価値があると考えられる。東京都医学総合研究所の遠藤 香織氏らは、母親の育児ストレスが子供のADHDリスクのマーカーとして利用可能かを明らかにするため、出産後1~36ヵ月間の母親の育児ストレスとその子供の青年期初期におけるADHDとの関連について、定期的に収集した自己報告を用いて調査を行った。その結果、出産後9~10ヵ月、18ヵ月、36ヵ月での育児ストレスと12歳時点での子供のADHD症状との関連が認められ、自己報告による育児ストレスのデータはADHDリスクの初期指標として有用である可能性が示唆された。このことから著者らは、ADHDの早期発見と介入を促進するためにも、幼少期の健康診断、育児ストレスの評価、家族のニーズに合わせた支援を行う必要があることを報告している。Frontiers in Psychiatry誌2022年4月28日号の報告。

統合失調症患者のクロザピン中止後の臨床アウトカム~システマティックレビュー

 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療は、ゴールデンスタンダードである。しかし、クロザピン治療でも約60%の患者は治療反応が得られず、クロザピン治療中止後の臨床アウトカムについては明らかになっていない。東京・大泉病院の三浦 元太郎氏らは、クロザピン治療中止後のアウトカムを明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、クロザピン治療中止後に臨床アウトカムは悪化しており、その後の治療として、クロザピン再投与やオランザピン治療が検討されていることを報告した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2022年5月5日号の報告。

日本人統合失調症患者におけるQOLと臨床的要因の関係

 徳島・城南病院のYoshimune Ishii氏らは、統合失調症入院患者におけるQOLと臨床的要因の関係を明らかにするため検討を行った。その結果、抑うつ症状の治療が統合失調症入院患者の主観的QOLの改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。The Journal of Medical Investigation誌2022年1.2号の報告。  対象は、統合失調症入院患者50例(平均年齢:56.48±11.93歳)。主観的QOLの評価には、統合失調症QOL尺度日本語版(JSQLS)および主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版-日本語版(SWNS-J)を用い、認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)-日本語版を用いた。うつ症状の重症度、精神症状、薬物誘発性錐体外路症状の評価には、それぞれ、カルガリー統合失調症用抑うつ症状評価尺度日本語版(JCDSS)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)を用いた。JSQLSおよびSWNS-Jに影響を及ぼす因子を特定するため、段階的回帰分析を実施した。

アルツハイマー病の脆弱性と出生した季節との関係

 愛知・国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、高齢のアルツハイマー病(AD)患者において、患者の出生した季節がADの病理学的脆弱性に及ぼす影響を評価するためPETを用いた検討を行った。その結果、秋冬に出生した人は、春夏に出生した人と比較し、タウ蓄積が少ないことが明らかとなった。これは、秋冬に出生した人のタウ病理に対する脆弱性を示唆しており、寒い季節関連のリスク因子による周産期または出生後の脳損傷が影響している可能性があるという。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年4月26日号の報告。

2018年西日本豪雨がベンゾジアゼピン使用に及ぼした影響

 自然災害は、メンタルヘルスに重大な影響を及ぼす。2018年7月の西日本豪雨は、日本で発生した最大級の洪水災害の1つである。広島大学の岡崎 悠治氏らは、災害前後のベンゾジアゼピン処方の変化について評価を行った。その結果、被災者における災害後のベンゾジアゼピン処方率が上昇し、その影響は1年以上継続していたことを報告した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2022年4月26日号の報告。  西日本豪雨による洪水被災地における、2017年7月~2019年6月のレセプト情報データベースに基づき、レトロスペクティブコホート研究を実施した。被災地域住民を、地方自治体の認定により被災者と非被災者に分類した。次に、災害前のベンゾジアゼピン使用状況に基づき、非使用者、頓服使用者、継続使用者の3群に分類した。災害前後のベンゾジアゼピン処方状況を比較し、被災地域住民における災害の影響を推定するため、ロジスティック回帰モデルを用いた差分の差分法(DID)分析を実施した。

統合失調症に対するメタ認知トレーニングの有効性

 メタ認知トレーニング(MCT)は、統合失調症患者の精神症状や認知バイアスを改善するためのグループプログラムであるが、入院中の回復初期段階の統合失調症患者への介入効果は、あまりわかっていない。長野県・千曲荘病院の芳賀 彩織氏らは、日本の精神科救急病棟に入院している統合失調症患者の回復初期段階におけるMCTの有効性を調査した。その結果、MCTは精神症状、自己内省の不良、再入院の予防に有効である可能性が示唆された。Frontiers in Psychology誌2022年4月11日号の報告。

国内での新型コロナワクチンの有効性~多施設共同研究/日本感染症学会

 新型コロナウイルス感染症の発症予防における新型コロナワクチンの有効性を、全国の医療機関において検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行い(VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2])、国内においても海外で報告されたものとほぼ同等の有効性が認められた。4月22~23日にオンラインで開催された第96回日本感染症学会総会・学術講演会で、長崎大学の前田 遥氏が発表した。なお、本発表に含まれるデルタ株流行期の結果については、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年4月19日号2)にも掲載されている。

日本人高齢者における野菜・果物の摂取と認知症リスク~久山町研究

 これまで、欧米で行われていたプロスペクティブ研究では、野菜や果物の摂取が認知症リスクを低下させることが示唆されている。しかし、アジア人を対象とした疫学的なエビデンスは限られていた。九州大学の木村 安美氏らは、日本人コミュニティにおける野菜や果物およびそれらの栄養素の摂取と認知症発症リスクと認知症サブタイプとの関連について調査を行った。その結果、野菜とその構成栄養素の摂取量が多いほど、日本人高齢者の認知症リスクが低下することを報告した。BMC Geriatrics誌2022年3月28日号の報告。

StageIAのNSCLC、区域切除が肺葉切除より優れる/Lancet

 Stage IAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、区域切除は肺葉切除と比べて5年全生存(OS)について優越性が示され、事前に規定した全サブグループでも、区域切除の同優越性が一貫して認められた。聖マリアンナ医科大学呼吸器外科主任教授の佐治久氏らが、日本国内70ヵ所の医療機関を通じて行った「JCOG0802/WJOG4607L試験」の結果を報告した。著者は、「本試験は、われわれの知る限りでは、肺野型NSCLCの全生存について、区域切除と肺葉切除のベネフィットを比較検討した初の試験で、結果は、区域切除を肺野型NSCLC患者の標準外科治療とすべきことを示唆するものであった」と述べている。Lancet誌2022年4月23日号掲載の報告。

中年期の生活環境とその後のうつ病との関連

 大阪大学の小川 憲人氏らは、一般集団における生活環境と精神科医によるうつ病診断との縦断的関連について、調査を行った。その結果、子供と一緒に暮らすことで、男性ではうつ病リスクの低下が認められ、うつ病予防における子供の影響が示唆された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。  1990年、多目的コホート研究(JPHC Study)において、40~59歳の日本人男性および女性1,254人が登録され、生活環境についてのアンケート調査に回答した。その後、2014~15年にメンタルヘルス検診を実施した。うつ病の診断は、十分な経験を積んだ精神科認定医による診察を通じて評価した。

双極性障害外来患者の雇用状況と不安定な期間の関係~MUSUBI研究

 産業医科大学の池ノ内 篤子氏らは、双極性障害外来患者における不安定な期間の長さと雇用状況との関連を調査した。その結果、不安定な期間が長い双極性障害患者では、失業リスクが高いことが示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年4月8日号の報告。  2016年9~10月に日本精神神経科診療所協会に所属する会員のクリニック176施設を受診した双極性障害外来患者を対象に、医療記録を調査した。医療や雇用に関する詳細データを収集するため、質問票を用いた。不安定な期間の長さと失業のオッズ比(OR)は、ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。不安定な期間の長さは、短期(1年の1~33%)、中期(34~66%)、長期(67~100%)に分類し、評価した。