日本発エビデンス|page:36

日本における睡眠薬の使用パターン~レセプトデータ分析

 不眠症の最適な治療法に関するコンセンサスは、限られている。近年、オレキシン受容体拮抗薬の導入により、利用可能な治療選択肢が増加してきたが、日本における睡眠薬使用パターンを包括的に評価した報告は、行われていなかった。MSDの奥田 尚紀氏らは、日本の不眠症治療における睡眠薬のリアルワールドでの使用パターンを調査するため、レセプトデータベースの分析を行った。その結果、日本における睡眠薬の新規使用患者および長期使用患者では、明確な使用パターンおよび傾向が認められた。著者らは、睡眠薬のリスクとベネフィットに関するエビデンスを蓄積し、不眠症に対する治療選択肢をさらに理解することは、リアルワールドにおいて睡眠薬を使用する医師にとって有益であろうとしている。BMC Psychiatry誌2023年4月20日号の報告。

睡眠時間のばらつきが双極性障害の再発リスクと関連~APPLEコホート研究

 双極性障害でみられる睡眠障害は、気分症状と密接に関連しているといわれている。愛知・桶狭間病院の江崎 悠一氏らは、双極性障害患者のアクチグラフによる睡眠パラメータと気分エピソードの再発との関連を調査した。その結果、双極性障害患者の気分エピソードの再発または再燃を予防するための補助療法として、睡眠時間を一定に保つ治療が有用である可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月24日号の報告。

コロナ禍の日本人の自殺念慮に最も影響した要因は?/筑波大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時に孤独感を感じていた日本人では、収入減少や社会的孤立などの他の要因に比べ、自殺念慮のリスクが最も高かったことが、筑波大学 医学医療系災害・地域精神医学の太刀川 弘和氏らの研究により明らかになった。BMJ Open誌2023年5月15日号掲載の報告。  日本における自殺者数は、2020年は2万1,081人、2021年は2万1,007人、2022年は2万1,881人で、COVID-19流行前の2019年の2万169人よりも多いままである。自殺の多くは多様かつ複合的な原因および背景を有しているが、新型コロナウイルスへの感染の恐怖や失業などの経済問題に加え、ソーシャルディスタンスなどによる社会的孤立や孤独感の悪化があるとされている。しかし、自殺念慮にはこれらのどれが、どのように影響するかは不明である。そこで、研究グループは、COVID-19流行時の孤独感が自殺念慮に直接的・間接的にどのような影響を与えるかを明らかにするため調査を行った。

北里大、コロナへのイベルメクチン第III相の論文公表

 北里大学が主導して実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたイベルメクチンの第III相臨床試験「CORVETTE-01」の結果については、2022年9月に同大学によって、主要評価項目においてプラセボとの統計学的有意差がなく、有効性が認められなかったことが発表されていた。本試験の結果が、Frontiers in Medicine誌2023年5月22日号に掲載された。

初夏はとくに注意!熱帯夜で死亡リスク増~47都道府県のデータ解析

 高過ぎる気温は死亡リスク上昇につながることが示唆されているが、ほとんどの研究は最高気温や平均気温を使用している。しかし、気温上昇は最高気温より最低気温のほうが速い。今回、筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、最低気温が高い熱帯夜と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、熱帯夜により死亡リスクが有意に増加し、さらに晩夏より初夏の熱帯夜で死亡リスクが高いことがわかった。Environmental Health Perspective誌2023年5月号に掲載。

SGLT2阻害薬の高齢者への処方の安全性-EMPA-ELDERLY/糖尿病学会

 5月11~13日、鹿児島で第66回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。  本稿では、近年、心血管疾患への治療適応も拡大しているSGLT2阻害薬について、口演「日本人高齢2型糖尿病患者を対象としたエンパグリフロジンの製販後試験」(矢部 大介氏[岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 教授])をお届けする。

コロナ罹患の医療者、療養期間5日では短過ぎる?/感染症学会・化学療法学会

 5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、罹患者の療養期間について、これまで有症状者は発症日から7日間経過し、症状が軽快し24時間経過した場合に解除可能であったものが、5日間まで短縮された。しかし、とくに免疫不全者のいる医療機関では院内感染予防のため、罹患した職員の就業可能日について慎重な検討が行われている。大阪医科薬科大学病院感染対策室の浮村 聡氏らの研究チームは、新型コロナに罹患した医療従事者を対象に、発症もしくは検査陽性から7日目に定量PCR検査を実施し、Ct値でウイルスの感染力を評価し、自宅療養期間の妥当性を検証した。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて浮村氏が発表した。

DOACの出血リスクが少ないのは?リバーロキサバンvs.エドキサバン

 非弁膜症性心房細動(NVAF)治療として直接経口抗凝固薬(DOAC)の用量規定を遵守しない投与(off-label dosing)は適応外使用となる。一方、現実の本剤処方の実態は、かなりの頻度で規定用量非遵守の低用量使用(off-label underdosing)が行われている。そこで、北摂総合病院の諏訪 道博氏らは血漿濃度(PCs:plasma concentrations)をモニタリングし、1日1回服用のリバーロキサバンとエドキサバンの投与状況を調査した。その結果、NVAF患者のPCsを監視することで、リバーロキサバンとエドキサバンの出血リスク軽減のための用量調整が可能なことを実証した。また、出血の発生率はリバーロキサバン群よりエドキサバン群で少ないことも明らかになった。Circulation Reports誌2023年3月10日号掲載の報告。

日本における双極性障害外来患者の入院の予測因子~MUSUBI研究

 双極性障害は、躁症状とうつ症状が繰り返し発現し、社会的機能低下や自殺リスクにつながる可能性のある疾患である。症状の増悪により入院せざるを得なかった双極性障害患者では、その後の心理社会的機能の低下が報告されていることから、できる限り入院リスクを減らす治療が求められる。しかし、双極性障害患者の実臨床における入院の予測因子に関するエビデンスは、これまで十分ではなかった。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本における双極性障害外来患者の入院の予測因子を明らかにするため、観察研究を実施した。その結果、対象となった双極性障害外来患者の3.06%が、ベースラインから1年間に精神科への入院を経験していることが明らかとなった。また、双極I型障害、ベースライン時の機能の全体的評定尺度(GAF)スコアの低さ、失業状態、薬物乱用、躁状態が入院の予測因子である可能性が示唆された。Frontiers in Psychiatry誌2023年3月16日号の報告。

日本人は低炭水化物食で糖尿病リスクが上がる?下がる?~JACC研究

 低炭水化物食(LCD)スコアと2型糖尿病発症リスクの関連を検討したメタ解析では、LCDスコアが高い(炭水化物が少なくタンパク質と脂質が多い)ほど2型糖尿病発症リスクが高い傾向がみられたことが報告されている。しかし、メタ解析の対象となった研究のほとんどがアジア人以外での研究である。今回、日本の大規模な全国コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk)研究の約2万人のデータを用いて、北海道大学の八重樫 昭徳氏らが前向きに検討したところ、日本人ではLCDスコアが高い食事で2型糖尿病リスクが上昇する可能性は低いことが示唆された。Journal of Nutritional Science誌2023年4月14日号に掲載。

入院前のコロナスクリーニングPCR検査、変異株流行初期に有用か/感染症学会・化学療法学会

 入院時のスクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRは、院内感染予防や全身麻酔・手術などの侵襲による患者の重症化予防に有用とされる一方、陽性率の低さや所要時間、コストなどの問題が指摘されており、新型コロナの5類感染症移行に伴い、今後の検査の緩和について議論が行われている。京都府立医科大学附属病院の山本 千恵氏らの研究チームにより予定入院前スクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRについて検討が行われ、その結果、とくに各変異株の流行初期において院内感染の予防に効果的であった可能性が示唆された。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて山本氏が発表した。

早食いは身長が縮みやすい?~日本人での研究

 早食いは体重増加の独立したリスク因子であり、また先行研究で過体重が身長低下の独立したリスク因子であることが報告されている。では、早食いと身長低下は関連するだろうか。今回、大阪健康安全基盤研究所の清水 悠路氏らによる日本人労働者での後ろ向き研究の結果、早食いが過体重と関連し、過体重は身長低下と関連していたが、早食いと身長低下については、過体重の人とそうでない人で異なっていた。すなわち、過体重でない人は食べるのが速い人が、過体重の人では食べるのが遅い人が、身長が低下する確率が高かった。PLOS ONE誌2023年4月26日号に掲載。

COVID-19パンデミックは日本人のうつ病リスクにどの程度の影響を及ぼしたのか

 北里大学の深瀬 裕子氏らは、長期にわたるCOVID-19パンデミックが日本の一般集団におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の変化にどのような影響を及ぼしたかを評価し、そのリスク因子や適応/非適応戦略についても調査を行った。その結果、うつ病レベルは、パンデミックの初期段階で増大し、2022年1月には軽減したと考えられた。男性では、抑うつ症状を軽減するためには、経済的な状態を改善する必要があることが示唆された。パンデミックが長期間に及んだため、男女ともに適応戦略を特定することは困難であった。一方、PTSDについては、日本の一般集団において顕著な変化は認められなかった。BMC Psychiatry誌2023年3月20日号の報告。

認知機能低下の早期発見にアイトラッキングはどの程度有用か

 アルツハイマー病(AD)患者では初期段階から、眼球運動に反映されるように、視空間処理障害が認められる。杏林大学の徳重 真一氏らは、ビジュアルタスク実行中の視線動向パターンを評価することで、認知機能低下の早期発見に役立つかを調査した。その結果、いくつかのタスクを組み合わせて視空間処理能力を可視化することで、高感度かつ特異的に認知機能の低下を早期に検出し、その後の進行の評価に役立つ可能性があることを報告した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年3月21日号の報告。

コロナ罹患後症状、睡眠障害が長期持続/日本呼吸器学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後、長期にわたって症状が残存する患者が存在する。症状はさまざまであるが、その中の1つとして睡眠障害が挙げられている。そこで、中等症以上のCOVID-19患者を日本全国55施設で追跡した「COVID-19後遺障害に関する実態調査(中等症以上対象)」において、睡眠障害の実態が検討された。その結果、中等症以上のCOVID-19患者の睡眠障害が遷延していることが明らかになった。2023年4月28~30日に開催された第63回呼吸器学会学術集会において、佐藤 晋氏(京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 特定准教授)が発表した。

ブレクスピプラゾールの治療継続に影響を及ぼす8つの因子

 治療中止に関連する未知の因子の特定は、自然言語処理(NLP)のテクノロジーを用いて精神科電子カルテのテキスト情報を分析および整理することにより可能であると考えられる。千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、NLPのテクノロジーを用いたMENTATによるデータベースを使用し、ブレクスピプラゾールの治療継続率および治療中断に影響を及ぼす因子の評価を試みた。その結果、ブレクスピプラゾールの治療中止と関連する可能性のある、8つの潜在的な新たな因子が特定された。著者らは、今後の統合失調症患者に対する治療戦略や治療継続率の改善につながるとまとめている。Schizophrenia Research誌オンライン版2023年3月27日号の報告。

閉経後HR+乳がんの術後アナストロゾール、10年vs.5年(AERAS)/JCO

 閉経後ホルモン受容体(HR)陽性乳がん患者に対する術後のアロマターゼ阻害薬の投与期間について、5年から10年に延長すると無病生存(DFS)率が改善することが、日本の多施設共同無作為化非盲検第III相試験(N-SAS BC 05/AERAS)で示された。岩瀬 拓士氏(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院)らによる論文が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年4月20日号に掲載された。

日本人救急医における不眠症・睡眠薬使用リスク

 救急医は、不眠症の有病率や睡眠薬の使用頻度が高いといわれている。救急医の睡眠薬使用に関するこれまで研究では、回答率の低さから、現状を十分に把握できていなかった。国際医療福祉大学の千葉 拓世氏らは、若手日本人救急医を対象に、不眠症の有病率および睡眠薬使用状況を調査し、不眠症や睡眠薬使用に関連する因子の評価を試みた。その結果、日本における若手救急医は慢性不眠症の有病率および睡眠薬の使用率が高く、慢性不眠症には長時間労働やストレスが、睡眠薬の使用には性別、婚姻状況、ストレスが関連していることが報告された。The Western Journal of Emergency Medicine誌2023年2月20日号の報告。

日本の父親・母親の産後うつ病リスクは?

 産後うつ病は、親に悪影響を及ぼすだけでなく、子供の認知機能、社会感情、行動発達などの障害につながる可能性がある。長崎大学の山川 裕子氏らは、出産後1年間の母親および父親の産後うつ病に関連する因子を調査した。その結果、父親と母親の双方にとって、ストレス対処スキルが産後1年間の産後うつ病に影響を及ぼす重要な因子であることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年3月13日号の報告。

日本におけるオミクロン対応2価ワクチンの有効性~多施設共同研究/感染症学会・化学療法学会

 2021年7月より新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価するために開始された多施設共同サーベイランス研究「VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2]」の最新の結果について、4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて、長崎大学の前田 遥氏が発表した。本結果により、国内の高齢者に対するオミクロン対応2価ワクチンの発症予防および入院予防の有効性が、国内の若年者および欧米のデータよりも高いことが示唆された。