うつ病に対する運動療法が有効な日本人の性格特性

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/21

 

 産業医科大学の池ノ内 篤子氏らは、健康な日本人労働者における抑うつ症状や社会適応への性格特性の影響、運動療法前後の抑うつ症状や社会適応の変化、うつ病予防を目的とした運動療法の完遂率に対する介入前の性格特性の影響を調査した。その結果、抑うつ症状と社会適応は、運動療法前後の性格特性や同療法の完遂率と関連していることが明らかとなった。また、男性において運動療法前の誠実性は、運動療法の完遂率の高さを予測する因子であることが報告された。Frontiers in Psychology誌2023年6月21日号の報告。

 対象は健康な日本人労働者250人。運動療法として8週間のウォーキングプログラムを実施した。情報が不十分または不完全であった参加者35人を除く215人のデータを分析対象に含めた。運動療法前後の性格特性の評価には5因子(神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)からなる人格検査NEO-FFI、抑うつ症状の評価にはうつ性自己評価尺度日本語版(SDS-J)、社会適応の評価には自記式社会適応度評価尺度日本語版(SASS-J)をそれぞれ用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・SDS-Jスコアは、運動療法前の神経症傾向と相関がみられ、外向性、調和性、誠実性と負の相関が認められた。
・SDS-Jスコアは、女性において開放性と負の相関が認められたが、男性では認められなかった。
・SASS-Jスコアは、外向性、開放性、調和性、誠実性と関連しており、神経症傾向と負の相関が認められた。
・運動療法前後で、うつ病レベルに有意な変化は認められなかったが、男性では社会適応の有意な上昇が認められた。
・運動療法前のSDS-JおよびSASS-Jスコアと、運動療法の完遂率との間に関連は認められなかった。
・女性では、運動療法の完遂率と運動療法後のSDS-JまたはSASS-Jスコアとの間に負の相関が認められた。
・運動療法後のSDS-Jスコアは、男性において神経症傾向と相関し、女性では外向性と負の相関が認められた。
・男性では、運動療法後のSASS-Jスコアと神経症傾向に負の相関がみられ、外向性、開放性との相関が認められた。
・対照的に女性では、運動療法後のSASS-Jスコアは、開放性、調和性との相関が認められた。
・男性では、運動療法の完遂率と誠実性との相関が認められたが、女性では運動療法の完遂率と関連する性格特性は見当たらなかった。

(鷹野 敦夫)