日本発エビデンス|page:37

認知症診断に関する日米間の比較

 認知症は、日米で共通の問題であるが、医療システムの異なる両国における認知症診断に関するプライマリケア医の診療および今後の展望について、浜松医科大学の阿部 路子氏らが、調査を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月11日号の報告。  日本全国および米国中西部ミシガン州におけるプライマリケア環境において、半構造化面接および主題分析を用いて、定性的研究を実施した。参加者は、日米それぞれ24人のプライマリケア医(合計48人)。両群ともに地理的因子(地方/都市部)、性別、年齢、プライマリケア医としての経験年数が混在していた。

エアロゾル感染への対応、ワクチン後の対応などを改訂/医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版

 ⽇本環境感染学会は「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版」を2021年11月22日に公開した。第3版からの主な改訂項目は、エアロゾル(微⼩⾶沫)による感染への対応、新型コロナウイルスのワクチン接種後の対応、積極的な検査の導⼊を含めた対応、である。  本ガイドの第1版は2020年2⽉12 ⽇に公開され、その後の状況の変化に応じて改訂し、2020年5月8日に第3版を公開していた。

急性躁症状に対する薬物療法~ネットワークメタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人双極性障害患者の急性躁症状に対する薬理学的介入の有効性、受容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年10月12日号の報告。  2021年3月14日までに公表された適格研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseの各データベースより検索した。躁症状を有する成人を対象に10日以上の経口薬単剤治療を実施したランダム化比較試験(RCT)を適格研究とし、試験期間中に抗精神病薬によるレスキュー投与を行った研究は除外した。主要アウトカムは、治療反応(有効性)およびすべての原因による中止(受容性)とした。副次的アウトカムは、躁症状の改善と効果不十分による中止とした。

日本人低出生体重児におけるADHDリスク

 小児の注意欠如多動症(ADHD)特性には、出生時の体重を含む遺伝的要因および出生前、周産期の因子が関連している。浜松医科大学のMohammad Shafiur Rahman氏らは、日本人小児の出生時体重とADHD特性との関連に対するADHDの遺伝的リスクの影響について、調査を行った。BMC Medicine誌2021年9月24日号の報告。  日本人小児におけるADHDの遺伝的リスクや低出生体重とADHD特性との関連を調査するため、縦断的出生コホート研究(浜松母と子の出生コホート研究)を実施した。小児1,258人のうちフォローアップを完了した8~9歳児796人を対象に分析を行った。出生体重別に、2,000g未満、2,000~2,499g、2,500g以上の3群に分類した。ADHDのポリジーンリスクスコアは、大規模ゲノムワイド関連解析のサマリーデータを用いて生成した。ADHD評価尺度IV(ADHD-RS)は、親からの報告に基づきADHD特性(不注意および多動性/衝動性)を評価した。以前の研究と同様に、性別、子供の出生順位、出生時の在胎週数、出産時の母親の年齢、学歴、妊娠前のBMI、妊娠前または妊娠中の喫煙状況、妊娠中のアルコール摂取、父親の年齢、教育、年間世帯収入を共変量とした。出生時の体重とADHD特性との関連を評価するため、潜在的な共変量で調整した後、多変量負の二項分布を用いた。出生時の体重群とバイナリーポリジーンリスクとの相互作用をモデルに追加した。

日本人アルコール依存症の重症度が治療経過に及ぼす影響

 エビデンスの蓄積によりアルコール依存症の重症度と再発リスクとの関連が示唆されているが、依存症の重症度が疾患経過に及ぼす影響は十分に評価されていない。久里浜医療センターの吉村 淳氏らは、入院治療後の経過に対するいくつかのアルコール依存症重症度指数の影響を調査した。Alcoholism, Clinical and Experimental Research誌オンライン版2021年9月29日号の報告。  本プロスペクティブ研究は、専門病院でのアルコール依存症治療後12ヵ月間にわたり実施した。連続して入院したアルコール依存症患者712例が入院時に登録の対象となり、フォローアップ調査には637例が登録された。患者の特徴および重症度は、入院時に複数の手法を用いて評価し、退院後には飲酒行動に関する質問票を用いて郵送にて継続的にフォローアップを行った。  主な結果は以下のとおり。

非小細胞肺がん化学放射線療後のデュルバルマブ地固め療法、リアルワールドでの肺臓炎発現(HOPE-005 / CRIMSON)/Lung Cancer

 デュルバルマブによる局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時療法(CCRT)後の地固め療法は標準治療として用いられて久しい。しかし、同デュルバルマブ療法での肺臓炎の発症、再投与の実臨床での状況は明らかになっていない。  この状況を調べるため、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)では、化学放射線療法を実施した非小細胞肺の医療記録を後ろ向きに評価したHOPE-005 / CRIMSON試験を実施。その結果がLung Cancer誌に掲載された。

2020年のがん診断数は前年比9%減、とくに早期での発見が減少/日本対がん協会

 2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかった。おおむね早期が減る一方、進行期は両年で差が少ない傾向となり、今後進行がんの発見が増えることが懸念される。日本対がん協会は11月4日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)と共同実施したアンケート調査の結果を発表した。  アンケートは今年7~8月、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象として実施。5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)について診断数、臨床病期(1~4期、がん種によって0期も含む)、手術数、内視鏡治療数などを聞いた。大規模調査は全国初で、北海道東北、関東、中部北陸、近畿、中国四国、九州沖縄の各地域の計105施設から回答を得ている(回答率21.6%)。

がん種別5年・10年生存率ランキング、最新版を公表/全がん協調査

 11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率が最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。  本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。

Webベースの認知症BPSDケアプログラムの普及促進のために

 COVID-19パンデミックとその結果引き起こされたソーシャルディスタンスの順守は、認知症患者の精神神経症状を誘発する可能性があるといわれている。東北大学の中西 三春氏らは、認知症の精神神経症状に対応するためのWebベースの心理社会的介入プログラムの有効性およびWebベースツールを利用する認知症介護者に対するeラーニングトレーニングコースの有用性を評価した。JMIR Medical Education誌2021年10月12日号の報告。  本研究は、東京において準実験的研究として実施された。eラーニングコースは、2020年7月~12月に専門の介護者に対し3回実施した。コースを修了した介護者は、認知症患者の精神神経症状レベルを評価するため、Webベースツールを介したNeuropsychiatric Inventory(NPI)合計スコアを用いた。主要アウトカムは、2021年3月までNPI評価のフォローアップを実施した介護者数およびベースラインから最新の評価までのNPIスコアの変化とした。2019年7月~2020年3月に対面によるトレーニングコースを完了した専門の介護者を対照群とし、情報を入手した。

日本人双極性障害患者における気分エピソードと就労との関連

 産業医科大学の近野 祐介氏らは、双極性障害患者の就労状況を改善するため、気分エピソードと就労との関係について調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年9月7日号の報告。  2016年9月~10月に日本精神神経科診療所協会の会員クリニック176施設を受診した双極性障害患者のすべてのカルテデータを、2017年9月~10月に調査した。カルテデータの詳細は、就労状況を含む調査シートを用いて収集した。就労状況による気分エピソードのオッズ比(OR)を分析するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。

日本人アルツハイマー病患者の経済状況と死亡率との関係

 さまざまな国においてアルツハイマー病(AD)への対策が実施されており、アルツハイマー病患者における経済状況と死亡率との関係についての知見もアップデートすることが望まれている。神戸大学の小野 玲氏らは、レセプトデータを用いて日本人アルツハイマー病患者の死亡率に対する経済状況の影響を調査するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2021年9月15日号の報告。  LIFE研究(Longevity Improvement and Fair Evidence study)に参加した13の地方都市より収集した2014年4月~2019年3月のレセプトデータを分析した。対象は、研究期間中に新たにアルツハイマー病と診断された65歳以上の患者とした。アウトカムは、フォローアップ期間中の死亡とした。経済状況は、家計収入により中高所得と低所得で評価した。低所得状況の指標となるデータは、アルツハイマー病診断時における限度額適用認定および標準負担額減額認定(医療費軽減カード)の利用より収集した。経済状況と死亡率との関連を調査するため、年齢、性別、チャールソン併存疾患指数、抗認知症薬の使用で調整し、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

HR+進行乳がん、パルボシクリブ後のアベマシクリブの効果/日本癌治療学会

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行・再発乳がんの1次/2次治療では、内分泌療法との併用によるCDK4/6阻害薬投与が標準治療となっているが、進行後の治療についてはまだ定まっていない。最近、リアルワールドデータがいくつか発表されており、今回、パルボシクリブ投与後に進行したHR+/HER2-進行・再発乳がんに対するアベマシクリブの効果を後方視的に検討した結果を、兵庫県立がんセンターの高尾 信太郎氏が、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で発表した。

日本人双極I型障害患者に対するルラシドンの長期安全性試験

 日本うつ病センターの樋口 輝彦氏らは、日本人双極I型障害患者に対するルラシドン治療(リチウムまたはバルプロ酸の有無にかかわらず)の長期(52週間)安全性と有用性について評価を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2021年8月2日号の報告。  本研究は、オープンラベルで行われたルラシドンのフレキシブルドーズ試験(20~120mg/日)である。対象は、6週間のルラシドン二重盲検プラセボ対照試験を完了したうつ病エピソードを有する患者(うつ群)および長期試験へのエントリーを同意した躁病、軽躁病、混合性エピソードを有する患者(非うつ群)。有害事象と安全性については、治療に起因する有害事象、バイタルサイン、体重、心電図、臨床検査値、自殺傾向、錐体外路症状を測定した。症状改善効果の測定には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)を用いた。

うつ病の初期治療と持続的治療反応との関連~メタ解析

 うつ病は、しばしば再発を繰り返す疾患である。そのため、患者を良い状態に導くだけでなく、良い状態を保つために最も効果的な治療法から選択すべきである。京都大学の古川 壽亮氏らは、成人うつ病患者の急性期治療における心理療法(PSY)、プロトコール化された薬物療法(PHA)、心理療法と薬物療法の併用(COM)、プライマリまたはセカンダリケアでの標準的治療(STD)、プラセボ治療についてランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析を実施し、治療期間およびフォローアップ期間を通じた初期治療と持続的治療反応との関連を調査した。World Psychiatry誌2021年10月号の報告。

若年性認知症の特徴~千葉県での多施設調査

 若年性認知症は、65歳未満で発症した認知症と定義されており、頻度はまれであるものの、その社会的影響は大きい。千葉大学の平野 成樹氏らは、千葉県の認知症センター11施設における若年性認知症患者の診断や臨床的および社会的な特徴について調査を行った。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2021年8月26日号の報告。  レトロスペクティブに1年間調査を実施した。臨床診断、発症年齢、調査年齢、神経心理学的検査、家族歴、就業、生活状況に関するデータを収集した。  主な結果は以下のとおり。

COVID-19患者の26%に半年後も何らかの症状/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の遷延症状は、当初から知られており、地域によっては専門外来が設置されるなど、今後のCOVID-19診療のフォローアップとしても注目されている。  国立国際医療研究センター 国際感染症センターの宮里 悠佑氏らのグループは、COVID-19罹患後の遷延症状に関して、長期的な疫学的情報に加え、遷延症状が出現・遷延するリスクを同定するために、COVID-19罹患後の患者を対象としてアンケート調査を実施し、その結果を「新型コロナウイルス感染症罹患後の遷延症状の記述疫学とその出現・遷延リスク因子に関する報告」として発表した。

日本の介護施設の認知症高齢者における向精神薬および抗コリン薬の使用状況

 医療経済研究機構の浜田 将太氏らは、日本の主要な介護施設の1つである介護老人保健施設に入所している認知症高齢者を対象に、向精神薬および抗コリン薬の処方および中止の状況を評価するため、コホート研究を実施した。BMJ Open誌2021年4月8日号の報告。  2015年、日本の介護老人保健施設3,598施設を対象にアンケート調査を実施した(施設ごとにランダムに選択された入所者最大5例)。アンケート回収は、343施設(回答率10%)より得られ、入所者1,201例が含まれた。標準化された尺度を用いて、認知症の有無および重症度を評価した。入所時および入所2ヵ月後の向精神薬および抗コリン薬の処方状況を評価した。入所者のベースライン特性と処方または中止との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療戦略~ガイドラインのレビュー

 慶應義塾大学の下村 雄太郎氏らは、急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬の治療戦略に関する現状を要約するため、ガイドラインおよびアルゴリズムのシステマティックレビューを実施した。Schizophrenia Research誌オンライン版2021年9月8日号の報告。  急性期および治療抵抗性統合失調症に対する抗精神病薬治療に関する臨床ガイドラインおよびアルゴリズムを特定するため、MEDLINEおよびEmbaseを用いて、システマティックに文献検索を行った。治療反応不良(抗精神病薬の増量や切り替えなど)や治療抵抗性を含む抗精神病薬治療戦略の推奨事項に関する情報を収集した。

レビー小体型認知症の前段階における精神病理学的特徴

 レビー小体型認知症(DLB)では、発症前に幻覚、抑うつ症状、緊張病症状、認知機能障害、妄想など、さまざまな精神症状の出現が高率で認められる。しかし、前段階DLBで認められるこれらの精神症状の特徴は、よくわかっていない。砂川市立病院の内海 久美子氏らは、顕著な認知機能障害が出現する前の前段階DLB患者における精神病理学的特徴を明らかにするため、検討を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年8月24日号の報告。  認知症ではなく重度の精神症状を発症したが、長期観察後にDLBと診断された前段階DLB患者21例を対象に精神病理学的特徴を分析した。DLBの確認は、シンチグラフィの示唆的および支持的なバイオマーカーを用いて行った。

術後化療なしのTN乳がん患者、TILとPD-L1で予後を層別化可能/ESMO2021

 早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおいて、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とPD-L1を組み合わせると、術後補助化学療法を受けていないTN乳がん患者の予後を層別化できることが示された。間質TIL(sTIL)が30%以上かつPD-L1陰性の患者は予後が良好であり、補助化学療法を省略できる可能性がある。国立がん研究センター中央病院の矢崎 秀氏らは、補助化学療法を受けていない早期TN乳がん患者の予後と、TILとPD-L1、Tertiary lymphoid structures(TLS)の関連を検討した後ろ向き解析の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。