日本発エビデンス|page:6

食道がんリスクが平均赤血球容積でわかる?

 健康診断などでよく見る平均赤血球容積(MCV)は貧血の種類を判別する指標だが、食道がんの予測因子としても使えるようになるかもしれない。静岡県立総合病院消化器外科の佐藤真輔氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らの研究によるもので、食道がんの発症リスクが高血圧の既往や生活習慣などとともにMCVでも予測できる可能性があるという。研究の詳細は「PLOS One」に2月11日掲載された。  食道がんは予後不良のがんであり、2020年には世界で54万人が食道がんで死亡している。症例の多くは扁平上皮がんであり、日本や中国を含む東アジアでの発症率が特に高くなっている。食道の扁平上皮がんのリスク因子は飲酒と喫煙であることが報告されている。

女性の体型は膣内の微生物叢で変わるか/北里大

 腸内の微生物叢がさまざまな疾患などに関連することが、近年の研究で判明している。では、女性の膣内の微生物叢は、健康な女性では、その体型に関連するのであろうか。この課題に対し、北里大学薬学部の伊藤 雅洋氏らの研究グループは、日本人の健康な女性24人の膣液を採取、分析し、菌種を特定するとともにBMIが生菌総数および膣内pHに影響を及ぼすことを明らかにした。この結果は、Frontiers in Cellular and Infection Microbiology誌2025年2月4日号に公開された。

AIサポートにより前眼部疾患の診断精度が向上か

 AI活用が医療現場にもたらす効果についての研究が活発化している。そのような中、白内障や角膜疾患の診断用に設計されたディープラーニングモデル「CorneAI」のサポートにより、角膜炎などの前眼部疾患に対する眼科医の診断精度が向上したという研究結果が報告された。CorneAI自体の診断精度は86%だったが、そのサポートにより、眼科医の精度がCorneAIのベースを超えて向上したという。福島県立医科大学附属病院眼科学講座の前原紘基氏、筑波大学附属病院眼科の上野勇太氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に2月11日掲載された。  人工知能(AI)は画像診断(CT、MRI、病理画像など)と親和性が高く、研究開発が活発化している分野の一つだ。眼の画像診断は、様々な前眼部疾患の診断と管理に重要な役割を果たしている。研究グループは、前眼部のカラー写真5,270枚を教師データとして、AIベースの分類ツールであるCorneAIを開発した。教師データには、細隙灯顕微鏡で撮影された、正常、感染性浸潤、非感染性浸潤、瘢痕、沈着/ジストロフィー、水疱性角膜症、水晶体混濁、腫瘍性病変、緑内障発作の9つのカテゴリーの画像が含まれた。

子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大

 「早食い」は太る原因といわれている。この食べる早さと肥満の相関は、子供にも当てはまるのだろうか。この課題に対し、大阪大学有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の高阪 貴之氏らの研究グループは、わが国の小学生1,403人の咀嚼能力および咀嚼習慣と肥満との関連を検討した。その結果、早食いや咀嚼能力の低下は、男子で肥満と関連していた。この結果は、Journal of Dentistry誌2025年3月8日号のオンライン版に掲載された。  研究グループは、大阪市の9~10歳の児童1,403人を対象に、咀嚼習慣を質問紙で評価し、咀嚼能力は色変化するチューインガムを用いて測定した。肥満は、身長と体重に基づく過体重の割合で判定し、多変量ロジスティック回帰分析を行い、咀嚼習慣と咀嚼能力を説明変数とし、性別、DMFT指数、ヘルマン歯発育段階を調整した肥満のオッズ比を算出した。

高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会

 日本人の高齢化に伴い、国内での心血管疾患(CVD)の発生が増加傾向にある。このCVD発生には全身性の炎症マーカーである高感度C反応性蛋白(hsCRP)の上昇が関連しており、これが将来の心血管イベントの発症予測にも有用とされている。しかし、その関連性は主に西洋人集団で研究されており、日本人でのデータは乏しい状況にある。そこで今回、小室 一成氏(国際医療福祉大学 副学長/東京大学大学院医学系研究科 先端循環器医科学講座 特任教授)が日本人集団における全身性炎症と心血管リスクの関係を評価し、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies1において発表した。

乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大

 日本の乳がんサバイバーと年齢をマッチさせた一般集団における、がん以外の疾患の発症リスクを調査した結果、乳がんサバイバーは心不全、心房細動、骨折、消化管出血、肺炎、尿路感染症、不安・うつの発症リスクが高く、それらの疾患の多くは乳がんの診断から1年以内に発症するリスクが高いことを、筑波大学の河村 千登星氏らが明らかにした。Lancet Regional Health-Western Pacific誌2025年3月号掲載の報告。  近年、乳がんの生存率は向上しており、乳がんサバイバーの数も世界的に増加している。乳がんそのものの治療や経過観察に加え、乳がん以外の全般的な健康状態に対する関心も高まっており、欧米の研究では、乳がんサバイバーは心不全や骨折、不安・うつなどを発症するリスクが高いことが報告されている。しかし、日本を含むアジアからの研究は少なく、消化管出血や感染症などの頻度が比較的高くて生命に関連する疾患については世界的にも研究されていない。そこで研究グループは、日本の乳がんサバイバーと一般集団を比較して、がん以外の12種類の代表的な疾患の発症リスクを調査した。

神経発達障害を併発する強迫症に関与する免疫学的メカニズム

 強迫症(OCD)は、有病率が2〜3%といわれている精神疾患である。OCD治療では、セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬の有効性が示されているが、病因は依然としてよくわかっていない。最近の研究では、とくに自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、トゥレット症などの神経発達障害を併発したOCD患者では、免疫学的メカニズムの関与が示唆されている。兵庫医科大学の櫻井 正彦氏らは、これらのメカニズムを明らかにするため、神経発達障害を併発したOCD患者と併発していないOCD患者における免疫学的因子を調査した。Psychiatric Research誌2025年4月号の報告。

食物繊維の摂取による肥満リスク低下、男性でより顕著?

 2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d'Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。  肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート

 セフトリアキソンは、日本感染症学会/日本化学療法学会の感染症治療ガイドラインにおいて市中肺炎入院患者におけるエンピリック治療の第1選択薬の1つに挙げられている。投与方法は1g1日2回点滴静注または2g1日1回点滴静注が推奨されているが、これらを比較した前向き研究は限られている。今回、倉敷中央病院の中西 陽祐氏らが、これらの投与方法の有効性と安全性を前向きコホート研究で比較し、報告した。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年1月号に掲載。

普通車と軽自動車、どちらが安全?

 人はそれぞれ、価格、燃費、デザイン、安全性などを基準に車を選ぶが、軽自動車は普通車と比べ、交通事故後の院内死亡率が上昇するという研究結果が報告された。また軽自動車では、頭頸部、胸部、腹部、骨盤および四肢に重度の外傷、重傷を負うリスクが高かったという。神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の大野雄康氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に2月5日掲載された。  軽自動車は「ミニカー」とも呼ばれ、日本だけでなく海外での人気も高まっている。人気の理由の1つとして、車体のコンパクトさが挙げられるが、それは車内空間が狭まることも意味する。車内空間が狭くなると、衝突時の衝撃による変形に対して乗員がダイレクトに危険に晒されることになる。しかしながら、車内空間の狭さが生存率の低下や、重度の外傷にあたえる影響については十分に検証されてこなかった。こうした背景から、大野氏らは過去に自動車事故で負傷・入院した患者を対象とした単施設の後ろ向きコホート研究を行った。主要評価項目は事故後の院内死亡率とした。

日本人へのbempedoic acid、LDL-C20%超の低下を認める(CLEAR-J)/日本循環器学会

 スタチンで効果不十分あるいはスタチン不耐の高コレステロール血症の日本人患者に対する12週後のbempedoic acidの安全性と有効性が明らかになった―。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Studies2において山下 静也氏(りんくう総合医療センター 理事長)が発表し、Circulation Journal誌2025年3月28日号に同時掲載された。

非専門医とはすでに同等!?医師vs.生成AIの診断能力を比較

 生成AIと医師の診断能力を比較した系統的レビューおよびメタアナリシスの結果、非専門医と比較した場合の正確度の差はわずか0.6%ほどにとどまった(p=0.93)。さらに、一部の最新モデルでは、統計学的な有意差は認められなかったものの非専門医をわずかに上回る性能を示していた。大阪公立大学の田北 大昂氏らによる、NPJ Digital Medicine誌2025年3月22日号掲載の報告より。  本研究では、診断業務における生成AIモデルの妥当性を検証した研究を対象に、2018年6月~2024年6月までに発表された文献の系統的レビューおよびメタアナリシスを実施した。

胃がんT-DXd、日本における販売後調査の最終解析/日本胃癌学会

 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対し2020年9月に承認された。現在では胃がん3次治療以降に広く使用されているが、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されており、ILDリスクを評価する観察期間12ヵ月の製造販売後調査(PMS)が実施された。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会総会では、愛知県がんセンターの室 圭氏が本調査の最終解析結果を発表した。  主な結果は以下のとおり。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、長期有効性・安全性の中間解析(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症(HCM)治療薬の選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamten は、3月27日にブリストル マイヤーズ スクイブが製造販売承認を取得し、年内の国内販売が見込まれる。今回、泉 知里氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 部門長)が、mavacamtenの54週での有効性・安全性・忍容性について、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials1で報告した。  日本人における症状を有する閉塞性HCM患者の治療効果検証のため、第III相非盲検単群試験HORIZON-HCMが実施されており、昨年の同学会において北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が30週の短期有効性・安全性を報告している。今回の報告では、108週の長期試験の中間解析として54週時点の効果が示された。

一人暮らしの認知症者は疎外されやすい?

 認知症者に対する社会的距離は、認知症の行動および心理的症状(BPSD)を有する一人暮らしの患者でより大きくなることが示唆された。この研究は東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らによるもので、研究結果の詳細は「PLOS One」に1月22日掲載された。  認知症者とその介護者は、疾患へのスティグマ(「先入観に基づいてレッテルをはり、偏見をもち、差別する」という、一連の心と行動)による社会的排除に直面している。スティグマは、病気そのものが引き起こす苦痛よりもさらに大きな苦痛をもたらすことがあり、深刻な人権侵害であると言われている。

認知症予防、どのくらいの聴力低下から補聴器を使ったほうがよいか

 難聴が中年期における認知症の予防可能な最大のリスク因子の1つであると報告され、注目を集めているものの、どの程度の難聴になったら認知症予防として補聴器を使うべきなのかは明らかになっていない。慶應義塾大学の西山 崇経氏らは、55歳以上の補聴器の装用経験がない難聴者のグループにおいて、聴力閾値と認知機能検査結果が負の相関関係を示し、4つの音の高さの聴力閾値の平均値が38.75dB HLを超えた場合に、認知症のリスクとなりうることを明らかにした。NPJ Aging誌2025年2月24日号掲載の報告。

高血圧患者、CVD死亡リスクがとくに高い年齢層は?/東北医科薬科大

 高血圧は、心血管疾患(CVD)のリスクとなることは知られている。では、そのリスクは、日本人ではどの程度の血圧(BP)分類や年齢から発生するのであろうか。東北医科薬科大学医学部公衆衛生学・衛生学教室の佐藤 倫広氏らの研究グループは、このテーマについてEPOCH-JAPAN研究における7万人の10年追跡データを用いて、現在用いられているBP分類と脳心CVD死亡リスクの関連を検討した。その結果、高血圧とCVD死亡リスクは関連があり、その傾向はとくに非高齢者で顕著だった。この研究はHypertension Research誌オンライン版に2025年2月20日に公開された。

非弁膜症性心房細動に対するDOAC3剤、1日の服薬回数は治療効果に影響せず?

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に対する第Xa因子(FXa)阻害薬の治療効果において、3剤間で安全性プロファイルが異なる可能性が示唆されており、まだ不明点は多い。そこで諏訪 道博氏(北摂総合病院循環器内科臨床検査科 部長)らがリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(同:エリキュース)、エドキサバン(同:リクシアナ)の3剤の有効性と安全性を評価する目的で、薬物血漿濃度(plasma concentration:PC)と凝固活性をモニタリングして相関関係を調査した。その結果、1日1回投与のリバーロキサバンやエドキサバンの薬物PCはピークとトラフ間で大きく変動したが、凝固活性マーカーのフィブリンモノマー複合体(FMC)は、1日2回投与のアピキサバンと同様に、ピーク/トラフ間で日内変動することなく正常範囲内に維持された。本研究では3剤の時間経過での薬物PCのピークの変動も調査したが、リバーロキサバンについては経時的に蓄積する傾向がみられた。Pharmaceuticals誌2024年10月25日号掲載の報告。

高齢NSCLCへのICI、2次治療への移行率と治療成績(NEJ057)/日本臨床腫瘍学会

 高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療後の2次治療への移行率や、2次治療の有効性に関する報告は乏しい。そこで、75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)において、ICIによる治療後の2次治療への移行率および2次治療の治療成績が検討された。山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で本結果を報告した。 ・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究 ・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで2018年12月~2021年3月に治療を開始した患者(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子を有する患者は除外) ・評価項目:全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など

デジタルゲームは高齢者に健康と幸せをもたらすのか

 ネット・ゲーム依存は身体活動の低下といった健康問題につながるが、高齢者の場合では、デジタルゲームにより身体活動が低下する可能性は低いということが明らかになった。千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の中込敦士氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Internet Research」に1月27日掲載された。  デジタルゲームは高齢者の間でも人気が高まっており、認知的、社会的、身体的なメリットをもたらす可能性がある。しかしながら、高齢者において、デジタルゲームが健康と幸福にどのような影響を及ぼすかは依然として不明だ。中込氏らは、全国で実施された日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使用して、デジタルゲームが高齢者の健康と幸福に与える多面的な影響を評価した。