医療一般|page:1

透析前の運動は透析中の運動と同様に心筋スタニングを抑制

 透析中の運動療法が血液透析誘発性心筋スタニングを軽減することが報告されているが、日常診療での実施には設備やスタッフ配置など多くの課題がある。今回、透析前の運動療法でも透析中の運動療法と同等の心保護効果があることが、フランス・Avignon UniversityのMatthieu Josse氏らによって明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年8月12日号掲載の報告。  本研究は非盲検ランダム化クロスオーバー試験として実施され、末期腎不全患者25例を対象に、(1)運動療法を伴わない標準的な血液透析を実施(標準透析)、(2)血液透析中に運動療法を実施(透析中運動)、(3)運動療法を実施してから血液透析を開始(透析前運動)の3種類の介入をランダムな順序でそれぞれ実施した。2次元心エコー検査と全血粘度の測定は、透析開始直前と透析中負荷ピーク時に実施した。心血管血行動態は30分ごとにモニタリングした。

アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール、最大何週目までの忍容性が確認されているか

 認知症高齢者は、抗精神病薬の副作用に対しとくに脆弱である。非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する治療薬として、多くの国で承認されている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのAlpesh Shah氏らは、認知症患者に対するブレクスピプラゾールの安全性と忍容性を評価するため、3つのランダム化試験と1つの継続試験の統合解析を行った。CNS Drugs誌オンライン版2025年7月19日号の報告。  アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する認知症患者を対象とした、3つの12週間ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験と、1つの12週間実薬継続第III相試験のデータを統合した。安全性アウトカムには、治療関連有害事象(TEAE)、体重変化、自殺念慮、錐体外路症状、認知機能障害を含めた。検討対象となったデータセットは2つ。1つは、ブレクスピプラゾール0.5〜3mg/日とプラセボを投与した3つのランダム化試験のデータを統合した12週間のデータセット。もう1つは、ブレクスピプラゾール2〜3mg/日の親ランダム化試験と継続試験のデータを統合した24週間のデータセット。

死亡診断のために知っておきたい、死後画像読影ガイドライン改訂

 CT撮影を患者の生前だけではなく死亡時に活用することで、今を生きる人々の疾患リスク回避、ひいては医師の医療訴訟回避にもつながることをご存じだろうか―。2015年に世界で唯一の『死後画像読影ガイドライン』が発刊され、2025年3月に2025年版が発刊された。改訂第3版となる本書では、個人識別や撮影技術に関するClinical Questionや新たな画像の追加を行い、「見るガイドライン」としての利便性が高まった。今回、初版から本ガイドライン作成を担い、世界をリードする兵頭 秀樹氏(福井大学学術研究院医学系部門 国際社会医学講座 法医学分野 教授)に、本書を活用するタイミングやCT撮影の意義などについて話を聞いた。

運動ベースの心臓リハビリは心房細動患者にも有効

 医師は、心筋梗塞や心不全を発症した患者にしばしば運動ベースの心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)を処方する。新たな研究で、そのような心臓リハビリプログラムは心房細動(AF)と呼ばれる一般的な不整脈を有する患者にも適しており、症状の改善にも役立つ可能性のあることが示された。英リバプール心臓血管科学センターのBenjamin Buckley氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に7月29日掲載された。  運動ベースの心臓リハビリには、運動トレーニングに加えて、個別化された生活習慣リスクの管理、心理社会的介入、医学的リスク管理、健康行動に関する教育が含まれている。こうしたリハビリは、心筋梗塞を起こした患者や心不全と診断された患者、あるいは冠動脈ステント留置術を受けた患者に用いられるが、AF患者に適しているかどうかは不明なため、国際的なAF治療ガイドラインには含まれていない。

週末にまとめて行う運動でも糖尿病患者の死亡リスク低下

 平日は多忙などの理由で運動できず、週末にまとめて運動を行う、いわゆる“週末戦士”と呼ばれる身体活動パターンであっても、糖尿病患者の死亡リスク抑制につながることを示すデータが報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のZhiyuan Wu氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月22日掲載された。  糖尿病でない一般集団においては、週末戦士のような身体活動パターンも死亡リスクの低下と関連していることが既に示されている。しかし糖尿病患者でも同様の関連があるのかは、これまで不明だった。そこでWu氏らは、前向きコホート研究により、週末戦士に該当するパターンを含む成人糖尿病患者のさまざまな身体活動パターンと、死亡リスクとの関連を検討した。

ビタミンDはCOVID-19の重症化を予防する?

 血中のビタミンDレベルが低い人では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時に重症化するリスクが高まるようだ。新たな研究で、ビタミンD欠乏症の人は新型コロナウイルス感染により入院する可能性が36%高くなることが示された。南オーストラリア大学(オーストラリア)のKerri Beckmann氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に7月18日掲載された。  2022年に報告された研究によると、米国人の約5人に1人(22%)はビタミンD欠乏症であるという。この研究では、UKバイオバンク参加者のデータを用いて、血中のビタミンDレベルと新型コロナウイルス感染およびCOVID-19による入院との関連を検討した。対象は、2006年から2010年のベースライン時にビタミンDレベルを1回以上測定し、新型コロナウイルスのPCR検査結果が記録されている15万1,543人である。ビタミンDレベルは、欠乏(0〜<24nmol/L)、不足(25〜50nmol/L)、正常(>50nmol/L)の3群に分類した。

新たなエビデンス踏まえ薬物療法・ゲノム検査など改訂「膵癌診療ガイドライン」/日本膵臓学会

 2025年7月、「膵癌診療ガイドライン」が改訂された。2022年から3年ぶりの改訂で、第7版となる。Minds診療ガイドライン作成マニュアルに基づいて作成され、Background Question、Clinical Question(CQ)のほか、エビデンスが足りないなどでシステマティック・レビューができない項目はFuture Research Question(FRQ)として新設された。  7月25~26日に行われた第56回日本膵臓学会大会では、「膵癌診療ガイドライン 2025―改訂のポイント」と題したセッションが開催され、外科的治療、薬物療法、放射線治療、支持・緩和療法など、9つの専門グループから改訂点が発表された。同学会の教育セミナー「がん薬物療法・ゲノム医療」において森實 千種氏(国立がん研究センター中央病院)が紹介した内容と合わせ、薬物療法を中心に、本ガイドラインの主な改訂点を紹介する(文中下線は編集部)。

オセルタミビルは小児の神経精神学的イベントを減少させる

 インフルエンザウイルス感染症では、オセルタミビルなどの治療薬による神経精神学的リスクの増大が懸念されている。しかし、インフルエンザ感染や治療薬が小児の神経精神学的イベントとどのように関係するのか不明な点も多い。この課題について、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJames W. Antoon氏らの研究グループは、インフルエンザ、オセルタミビル、および重篤な神経精神学的イベントとの関連性を検討した。

カフェインは夜より日中の眠気に影響!?

 カフェイン含有飲料の摂取が増加すると睡眠パターンが乱れることが知られている。英国・ブリストル大学のNilabhra R. Das氏らは、カフェイン摂取量、カフェイン代謝、睡眠特性の指標として遺伝子変異を用いて、睡眠に対するカフェインの直接的な影響を検証した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2025年7月14日号の報告。  対象は、英国バイオバンクを含む複数の研究から特定されたカフェイン摂取量(40万7,072人)、カフェイン代謝(9,876人)、クロノタイプ(44万9,734人)、日中の昼寝(45万2,633人)、日中の眠気(45万2,071人)、朝の起床(38万5,949人)、不眠症(45万3,379人)、睡眠時間(44万6,118人)。これらに関連する遺伝子変異を用いて、一連の単変量メンデルランダム化解析により、カフェインと睡眠の双方向の因果関係を調査した。カフェイン摂取が睡眠行動に直接的に及ぼす影響を、代謝と睡眠行動をそれぞれ調整しながら探索するため、多変量メンデルランダム化解析を用いた。

心不全患者で不足しがちな微量元素は?

 亜鉛、銅、セレンなどの微量元素は、ミトコンドリア機能へ影響を及ぼすこともあり、亜鉛不足が心不全の予後に関連するなど単一元素の不足については報告されている。しかし、微量元素の複合的な影響については十分に解明されていない。今回、名古屋大学のNagai Shin氏らは、急性心不全患者における微量元素の異常と臨床転帰への関連について明らかにし、微量元素異常の是正が心不全管理における新たな目標となる可能性を示唆した。Journal of Cardiology誌2025年7月25日号掲載の報告。

インスリン点鼻スプレー、アルツハイマー治療に新アプローチ

 点鼻スプレーによるインスリンの投与が、アルツハイマー病の治療法の一つになる可能性のあることが、新たな研究で示された。小規模な高齢者の集団において、点鼻スプレーで投与されたインスリンが、脳内の記憶に関わる重要な領域に到達したことが確認されたという。米ウェイクフォレスト大学医学部老年医学教授のSuzanne Craft氏らによるこの研究の詳細は、「Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に7月23日掲載された。  ホルモンの一種であるインスリンは脳の働きを増強する可能性があることから、アルツハイマー病の新たな治療法として使える可能性が注目されている。Craft氏らによると、インスリン抵抗性はアルツハイマー病の既知のリスク因子でもあるという。しかしこれまでの研究では、鼻から投与されたインスリンが本当に脳の標的領域に到達しているのか確認できていなかった。

終末期介護施設入居者の救急搬送や入院、多くは回避可能

 入院や救急外来(ED)受診は、介護施設入居者、特に重度の障害を抱えているか終末期にある人にとっては大きな負担となり費用もかさむ。しかし、介護施設入居者が病院へ搬送されることは少なくない。このほど新たな研究で、このような脆弱な状態にある介護施設入居者によるED受診の70〜80%、また入院の約3分の1は回避可能であった可能性のあることが示された。米フロリダ・アトランティック大学シュミット医科大学老年医学教授のJoseph Ouslander氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Directors Association(JAMDA)」7月7日号に掲載された。  Ouslander氏らは、終末期の介護施設入居者が入院に至った原因として多かったのは、肺炎、尿路感染症、敗血症であったが、介護施設での医療と管理の質がもっと良ければ、それらの入院は必要なかったはずだと主張している。同氏は、「これらの健康問題は、施設でのケアを改善するために実行可能な手段があることを明示している。既存のガイドライン、ケアパス、予防戦略を用いれば、これらの問題は適切に管理できる。適切なツールと人員を整えることでED受診や入院の多くは回避可能であり、入居者の苦痛と不必要な医療費の両方を減らすことができる」と述べている。

早期乳がんの生存率、乳房温存療法vs.全切除術~単施設9千例で解析

 米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMin Yi氏らが、単施設における早期乳がんの初回治療での乳房温存療法(乳房部分切除後に放射線照射)と乳房全切除術について、全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、局所領域再発(LRR)、乳がん特異的生存期間を比較したところ、同程度であることが示唆された。Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2025年8月11日号に掲載。  本研究は、2000年1月1日~2014年12月31日に初回治療として手術を受けたT1-2、N0-1、M0の乳がん女性8,967例を対象とした。傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPW)を用いて、全コホートおよびサブセット解析(Stageとホルモン受容体の有無の組み合わせ)における生存モデルでの交絡を排除した。

経済的発展に関連する肥満では食事摂取量が大きな役割を担う

 肥満の原因は、さまざまな要因が指摘されている。中でも摂取エネルギーの過剰と運動不足では、どちらが肥満を起こす原因として重視しなければいけないのか、まだ結論は出ていない。この課題について米国デューク大学進化人類学科のAmanda McGrosky氏らの研究グループは、一定の生活様式と経済水準を有する約4,000例の成人について、エネルギー消費量と肥満の2つの指標を分析した。その結果、経済的発展に関連する肥満では、エネルギー消費量の減少よりも食事摂取量がはるかに大きな役割を果たしていたことがわかった。この結果は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌2025年7月22日号に掲載された。

アルツハイマー病予防に必要な最低限の運動量が判明

 これまでの研究では、身体活動とアルツハイマー病リスクとの逆相関関係が示唆されている。多くの研究において身体活動の健康効果が報告されているが、高齢期における身体活動の具体的な効果は依然として不明であり、高齢者では激しい身体活動が困難な場合も少なくない。さらに、身体活動の評価方法には、実施時期やその種類など、ばらつきも大きい。米国・Touro UniversityのAmy Sakazaki氏らは、高齢期における身体活動の効果および高齢者にとっての最低限の身体活動レベルを明らかにするため、既存の文献を評価するシステマティックレビューを実施した。Journal of Osteopathic Medicine誌オンライン版2025年7月16日号の報告。

肺炎の病原体検出、肺炎パネルvs.呼吸器パネルvs.培養

 迅速な病原体検出を可能にする多項目遺伝子検査ツールは、その有用性が報告されているものの、本邦では比較データが不足しており、臨床での応用は限定的である。そこで、畑地 治氏(松阪市民病院)らの研究グループは、肺炎が疑われる患者を対象として、マルチプレックスPCR法を用いる肺炎パネル検査(BioFire肺炎パネル)、呼吸器パネル検査(FilmArray呼吸器パネル)、培養・同定検査を比較した。その結果、肺炎パネル検査は従来の培養・同定検査と比較して、病原体検出に優れ、臨床的価値が高いことが示唆された。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年9月号に掲載された。

ワクチンの追加接種はがん患者のCOVID-19重症化を防ぐ

 がん患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化しやすいとされるが、新型コロナワクチンの追加接種を受けることで重症化を予防できる可能性があるようだ。新たな研究で、COVID-19によるがん患者の入院リスクは、新型コロナワクチンの追加接種によって、未接種の患者と比べて29%低下することが示された。米シダーズ・サイナイ医療センター地域保健・人口研究部長のJane Figueiredo氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に7月17日掲載された。  この研究では、シダーズ・サイナイ、カイザー・パーマネンテ北カリフォルニア、ニューヨークのノースウェル・ヘルス、および退役軍人保健局でがん治療を受けたがん患者を対象に、従来型の新型コロナ1価ワクチン(2022年1月までに接種)、および変異株に対応した2価ワクチン(2022年9月1日〜2023年8月31日の間に接種)の追加接種がもたらす効果を検討した。

再発/難治性の多発性⾻髄腫治療薬トアルクエタマブを発売/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年8月14日、再発/難治性の多発性骨髄腫治療薬として、多発性骨髄腫細胞表面に高発現するGPRC5D(Gタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD)およびT細胞表面に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体トアルクエタマブ(遺伝子組換え)(商品名:タービー皮下注)を発売したことを発表した。本剤は、2025年6月24日に「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能又は効果として承認され、8月14日に薬価収載された。Johnson & Johnsonとしては、テクリスタマブ(遺伝子組換え)(商品名:テクベイリ皮下注)に続き、再発/難治性の多発性骨髄腫に対する2剤目の二重特異性抗体となる。

進展型小細胞肺がんへの免疫化学療法、日本の実臨床データ

 進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)に対する1次治療として、抗PD-L1抗体とプラチナ製剤を含む化学療法の併用療法(免疫化学療法)が標準治療となっているが、実臨床における報告は限定的である。そこで、平林 太郎氏(信州大学)らの研究グループは、実臨床において免疫化学療法を受けたED-SCLC患者と、化学療法を受けたED-SCLC患者の臨床背景や治療成績などを比較した。その結果、免疫化学療法が選択された患者は、化学療法が選択された患者よりも全生存期間(OS)が良好な傾向にあったが、免疫化学療法が選択された患者は約半数であり、実臨床におけるED-SCLC治療にはさまざまな課題が存在することが示された。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年9月号に掲載された。  本研究は、日本の11施設が参加した多施設共同後ろ向き研究である。2019年8月~2023年6月に、1次治療として免疫化学療法または化学療法を受けたED-SCLC患者181例を対象とした。対象患者を、免疫化学療法を受けた群(免疫化学療法群、96例)と、プラチナ製剤を含む化学療法のみを受けた群(化学療法群、85例)に分け、患者背景、治療成績、免疫化学療法が選択されなかった理由などを後ろ向きに調べた。

母親の産前、産後うつ病と子供の自閉スペクトラム症との関係〜メタ解析

 母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と子供の自閉スペクトラム症(ASD)との関係については、相反する結果が報告されている。オーストラリア・カーティン大学のBiruk Shalmeno Tusa氏らは、母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と小児および青年期におけるASDリスクとの関連についての既存のエビデンスを検証し、統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BJPsych Open誌2025年6月4日号の報告。  2024年2月21日までに公表された研究を、PubMed、Medline、EMBASE、Scopus、CINAHL、PsycINFOよりシステマティックに検索した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、サマリー効果推定値はオッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)として算出した。異質性の評価には、Cochranの Q検定およびI2検定を用いた。対象研究における潜在的な異質性の要因を特定するため、サブグループ解析を行った。出版バイアスの評価には、ファンネルプロットとEggerの回帰検定を用いた。