未治療の肺MAC症への吸入アミカシン上乗せ、呼吸器症状と培養陰性化を改善(ENCORE)/ATS2026

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2026/05/26

 

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とする肺MAC症では、初回治療において呼吸器症状の改善と培養陰性化を達成する有効な治療選択肢に関するエビデンスは十分でない。肺MAC症に対する新規治療薬としてアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、商品名:アリケイス)が使用されているが、本邦での適応は「多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」である。そこで、新規に肺MAC症と診断された患者を対象に、アジスロマイシン+エタンブトールへのALIS併用の有用性を検討することを目的として、国際共同第IIIb相無作為化二重盲検比較試験「ENCORE試験」が実施されている。その結果、ALIS併用群では対照群と比較して、13ヵ月時点の呼吸器症状スコアの改善が有意に大きく、培養陰性化率も高かった。米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、Charles L. Daley氏(米国・National Jewish Health/コロラド大学医学部)が本結果を発表した。

試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第IIIb相試験

対象:新規に肺MAC症と診断され、現在のエピソードに対する抗菌薬治療を開始していない非空洞性肺MAC症成人患者425例
試験群(ALIS群):アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+ALIS(590mg/日)を12ヵ月 213例
対照群:アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+吸入プラセボを12ヵ月 212例
評価項目:
[主要評価項目]13ヵ月時点のRespiratory Symptom Score(RSS)のベースラインからの変化量
[副次評価項目]13ヵ月時点の培養陰性化率(すべての喀痰培養が2回連続で陰性)、15ヵ月時点の培養陰性持続率(11、12、13、15ヵ月時点ですべて陰性)、15ヵ月時点のRSSのベースラインからの変化量、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・試験完遂率はALIS群90.6%、対照群93.4%であり、治療完遂率はそれぞれ81.7%、88.2%であった。
・患者背景は両群でおおむね均衡していた。年齢中央値はALIS群68.0歳、対照群69.0歳で、女性の割合はそれぞれ80.3%、78.3%であった。日本からの登録はALIS群43例(20.2%)、対照群41例(19.3%)であった。
・主要評価項目である13ヵ月時点(治療終了1ヵ月後)のRSSのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、ALIS群17.77点、対照群14.66点であった。群間差は3.11(95%信頼区間[CI]:0.30~5.92、p=0.0299)であり、ALIS群で有意に改善した。
・15ヵ月時点(治療終了3ヵ月後)でも、RSSの改善はALIS群で大きかった。ベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、ALIS群16.63点、対照群11.83点(群間差:4.80点[95%CI:1.83~7.76]、名目上のp=0.0015)であった。
・6ヵ月、12ヵ月、13ヵ月時点の培養陰性化率は、いずれもALIS群が高かった。また、15ヵ月時点の培養陰性持続率もALIS群で高かった。詳細は以下のとおり(ALIS群vs.対照群、p値を示す)。
 6ヵ月時点:87.8%vs.57.0%、p<0.001
 12ヵ月時点:84.7%vs.61.3%、p<0.001
 13ヵ月時点:82.4%vs.55.6%、p<0.001
 15ヵ月時点(陰性持続率):76.2%vs.47.6%、p<0.001
・試験治療下における有害事象(TEAE)は、ALIS群98.1%、対照群97.2%に認められた。重篤なTEAEはそれぞれ14.1%、11.3%、投与中止に至ったTEAEはそれぞれ14.6%、8.5%に認められた。死亡に至ったTEAEは各群1例に発現したが、いずれも試験治療との関連はないと判断された。
・ALIS群で10%以上に認められ、対照群よりも多かったTEAEは、発声障害(ALIS群58.7%、対照群8.5%)、咳嗽(32.9%、14.6%)、疲労(17.4%、11.3%)、呼吸困難(16.4%、5.7%)、悪心(15.5%、12.7%)、頭痛(12.7%、11.8%)であった。
・とくに注目すべきTEAEについて、気管支攣縮はALIS群23.0%、対照群11.8%に認められた。また、過敏性肺炎は対照群では認められなかったのに対し、ALIS群では2.3%に認められた。

 本結果について、Daley氏は「新規に肺MAC症と診断された患者において、検証済みの患者報告アウトカム指標による呼吸器症状の改善が認められた。ENCORE試験は、臨床的に意義のあるベネフィットを検証した初の試験である」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)

参考文献・参考サイトはこちら