脳卒中、55歳未満の発症増大/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/08/22

 

 脳卒中罹患者が、55歳未満で有意に増大している一方、55歳以上では減少している。英国・オックスフォード大学のLinxin Li氏らが、イングランド・オックスフォードシャー州の住民について2002~10年vs.2010~18年の脳卒中罹患率を比較した検討の結果を報告した。他の主要血管イベントには同様の違いはみられず、著者は「脳卒中について示されたこの差の原因を明らかにする、さらなる検討が必要である」と述べている。先行研究で55歳未満の脳卒中罹患率が上昇していることが報告されていたが、多くが対象を限定した試験で、住民ベースのより多くの試験によるエビデンスが求められていた。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。

英国住民9万4,567人の罹患率、2002~10年vs.2010~18年を比較

 研究グループは、若年者vs.高齢者の脳卒中およびその他の主要血管イベント罹患率の、経時的変化を明らかにする前向き住民ベース試験を、2002年4月~2018年3月にイングランド・オックスフォードシャー州の平均流域住民9万4,567人を対象に行った。

 暦時間、発症前の血管リスク因子、職業を調べ、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、その他の主要血管イベント(心筋梗塞、心臓突然死、末梢血管イベント)の罹患率の変化を、年齢、性別、精密検査による診断、病因、重症度で層別化し評価した。

IRRは55歳未満1.67、55歳以上0.85

 合計2,429例(平均年齢73.6[SD 14.4]歳、女性51.3%)の脳卒中が確認された。

 2002~10年から2010~18年に、脳卒中罹患率は、55歳未満の被験者では有意に上昇していた(罹患率比[IRR]:1.67、95%信頼区間[CI]:1.31~2.14)一方、55歳以上の被験者では有意に低下していた(IRR:0.85、95%CI:0.78~0.92、群間差のp<0.001)。

 55歳未満群の罹患率の有意な上昇は、年齢、脳卒中重症度、病理学的サブタイプ、調査の変更とは関係していなかった。同様の発生の傾向はTIAについても認められたが(IRR:1.87、95%CI:1.36~2.57)、心筋梗塞やその他の主要血管イベントでは認められなかった(IRR:0.73、95%CI:0.58~0.93)。

 55歳未満群のTIAおよび脳卒中の罹患には、糖尿病(リスク比[RR]:3.47、95%CI:2.54~4.74)、高血圧症(2.52、2.04~3.12)、現在喫煙(2.38、1.92~2.94)、肥満(1.36、1.07~1.72)と有意に関連していた。2002~10年から2010~18年にかけての罹患率の有意な上昇は、これらリスク因子のない被験者にも認められた。

 上昇が最も大きかったのは、専門職/管理職(IRR:2.52、95%CI:1.75~3.62)であり、最も小さかったのは、部分的に熟練を要する/熟練を要しない職種(1.17、0.79~1.74)であった。

 既知の血管リスク因子を有していない55歳未満群のTIAおよび脳卒中罹患率は、時間の経過とともに顕著に上昇していた(45例[30.4%]vs.115例[42.4%]、絶対群間差:12.0%、95%CI:2.6~21.5)。とくに、潜在性イベント(cryptogenic events)を有する患者で有意に増大していた(10例[18.5%]vs.63例[49.2%]、絶対群間差:30.7%、95%CI:17.2~44.2、p<0.001、異質性のp=0.002)。

(ケアネット)