発作性AFの第1選択、クライオバルーンアブレーションvs.抗不整脈薬/NEJM

第1選択としてのクライオ(冷凍)バルーンによるアブレーションは、発作性心房細動患者の心房性不整脈再発予防において抗不整脈薬より優れており、重篤な手技関連有害事象は少ないことが示された。米国・クリーブランドクリニックのOussama M. Wazni氏らが、米国の24施設で実施した多施設共同無作為化試験「STOP AF First試験(Cryoballoon Catheter Ablation in Antiarrhythmic Drug Naive Paroxysmal Atrial Fibrillation)」の結果を報告した。薬物療法の効果が得られない症候性の発作性心房細動患者では、洞調律維持のため抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションが有効である。しかし、第1選択としてのクライオバルーンアブレーションの安全性と有効性は確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年11月16日号掲載の報告。
クライオバルーンアブレーション群を抗不整脈薬群と比較検証
STOP AF First試験の対象は、症候性の発作性心房細動が再発した18~80歳の患者で、抗不整脈薬(クラスIまたはIII)による7日以上の治療歴などがある患者は除外した。対象患者を、抗不整脈薬(クラスIまたはIII)群またはクライオバルーンアブレーション群に1対1の割合で無作為に割り付け、後者では無作為割付後30日以内にクライオバルーンを用いた肺静脈隔離術を施行した。ベースライン時、1、3、6ヵ月および12ヵ月時点で12誘導心電図を含む不整脈モニタリングを、また、毎週および3~12ヵ月は症状がある場合に電話モニタリングを、さらに6ヵ月および12ヵ月時点で24時間ホルターモニタリングを実施した。
有効性の主要評価項目は、12ヵ月時点の治療成功(手技不成功、心房細動手術または左房に対するアブレーション、90日以降の心房性不整脈再発・除細動・クラスI/III抗不整脈薬使用の各イベントの回避と定義)であった。安全性の主要評価項目は、クライオバルーンアブレーション群における手技関連およびクライオバルーンシステム関連の重篤な有害事象の複合エンドポイントとした。
クライオバルーンアブレーション群の治療成功率74.6%、抗不整脈薬群45.0%
2017年6月~2019年5月までに225例が登録され、このうち治療を受けた203例(クライオバルーンアブレーション群104例、抗不整脈薬群99例)が解析対象となった。クライオバルーンアブレーション群における手術の成功率は97%であった。12ヵ月時点の治療成功率(Kaplan-Meier推定値)は、クライオバルーンアブレーション群74.6%(95%信頼区間[CI]:65.0~82.0)、抗不整脈薬群45.0%(34.6~54.7)であった(log-rank検定のp<0.001)。
クライオバルーンアブレーション群で安全性の主要評価項目である複合エンドポイントのイベントが2件発生した(12ヵ月以内のイベント発生率のKaplan-Meier推定値は1.9%、95%CI:0.5~7.5)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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発作性心房細動に対しては、抗不整脈薬よりもカテーテルアブレーションである(解説:高月誠司氏)-1338
コメンテーター : 高月 誠司( たかつき せいじ ) 氏
慶應義塾大学医学部循環器内科准教授
J-CLEAR推薦コメンテーター