経皮的電気的迷走神経刺激によるAF抑制効果は?【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/06/02

 

 低レベルの経皮的な迷走神経耳介枝の刺激は、心房細動(AF)を停止させることがわかっているが、その長期的な作用については不明である。この研究は、米国・オクラホマ大学のSunny Po氏らが、シャムコントロール、二重盲検、無作為化比較試験で、発作性AFに対する長期間の耳珠の低レベル電気刺激(LLTS: low level tragus stimulation)の効果を調べたものである。JACC誌2020年3月号に掲載。
 

低レベル電気刺激を耳珠と耳たぶで6ヵ月実施し、比較

 本研究では、患者53例をLLTS(20Hz, 不快なレベルを1mA下回るレベル)が耳珠に取り付けたクリップから与えられた群(治療群、n=26)と、耳たぶに取り付けたクリップから与えられた群(対照群、n=27)に分け、6ヵ月間、1日1時間の刺激が与えられた。非侵襲的な持続性の心電図モニターを用いて、2週間の期間におけるAFの頻度をベースライン、3ヵ月、6ヵ月の時点で評価した。また、心拍変動と炎症性サイトカインを評価するため、5分間の心電図と血清が測定された。

AF頻度は対照群に比べて有意に減少

 ベースラインの患者の特徴は、両群で同様であった。刺激プロトコル(毎月4セッション)の遵守は、治療群で75%、対照群で83%であった(p>0.05)。6ヵ月の時点で、AFの頻度の中央値は、治療群において対照群より85%低かった(中央値の比[ROM]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.03~0.65、p=0.011)。TNF-alphaの値は、治療群においてコントロール群より23%減少していた (ROM:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.0093)。心拍数変動に関して、周波数領域の指数は、コントロール群と比べて治療群で有意に変化していた(p<0.01)。治療器具に伴う合併症は認められなった。

 長期にわたる間欠的なLLTSは、シャムコントロール群よりもAFの頻度を減少させた。このことは一部の発作性AF患者において、この治療法の有用性を支持するものと考えられる。

 興味深い結果ではあるが、ベースラインでの治療群と対照群でAFの頻度が異なっており(4.5%vs.1.0%)、症例数も50例程度と少ない。また、迷走神経刺激に対する反応は患者ごとに異なるうえ、逆にAFを誘発する可能性もあり、今後さらなる研究が必要と考えられる。

(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)

■関連コンテンツ
循環器内科 米国臨床留学記