心筋ミオシン阻害薬の新薬、閉塞性肥大型心筋症に有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/11

 

 閉塞性肥大型心筋症患者において、first-in-classの心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは運動耐容能、左室流出路(LVOT)閉塞、NYHA心機能分類および健康状態を改善することが示された。イタリア・Azienda Ospedaliera Universitaria CareggiのLacopo Olivotto氏らが、mavacamtenの有効性および安全性を検証した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「EXPLORER-HCM試験」の結果を報告した。肥大型心筋症において心筋の過剰収縮は重要な病態生理学的異常であり、血行動態の変化を伴うLVOT閉塞の主たる原因となる。これまで肥大型心筋症に対する薬物療法の選択肢は、効果が乏しいか忍容性が不十分で、疾患特異的な薬物がなかった。Lancet誌オンライン版2020年8月29日号掲載の報告。

mavacamtenの有効性と安全性をプラセボと比較検証

 EXPLORER-HCM試験は、13ヵ国の心臓血管センター68施設において実施された。LVOT勾配50mmHg以上、NYHA心機能分類クラスII~IIIの症状を伴う肥大型心筋症患者を対象とし、mavacamten群(5mgから開始)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、30週間投与した。患者には2~4週ごとに受診してもらい、状態を評価するとともに、心エコー、心電図、臨床検査、mavacamten血漿中濃度測定などを行った。

 主要評価項目は、最大酸素摂取量(pVO2)の1.5mL/kg/分以上増加、NYHA心機能分類の1クラス以上改善、またはNYHA心機能分類の悪化なしでpVO2が3.0mL/kg/分以上増加とした。副次評価項目は、運動後LVOT勾配、pVO2、NYHA心機能分類、カンザスシティー心筋症質問票のClinical Summary Score(KCCQ-CSS)、Hypertrophic Cardiomyopathy Symptom Questionnaire Shortness-of-Breath subscore(HCMSQ-SoB)の変化とした。

mavacamtenは主要評価項目を達成し、忍容性も良好

 2018年5月30日~2019年7月12日の期間に、成人429例がスクリーニングされ、そのうち251例(59%)が登録された。mavacamten群が123例(49%)、プラセボ群が128例(51%)であった。

 主要評価項目を達成した患者の割合は、mavacamten群が37%(45/123例)、プラセボ群が17%(22/128例)であった(群間差:+19.4%、95%信頼区間[CI]:8.7~30.1、p=0.0005)。

 mavacamten群ではプラセボ群と比較し、運動後LVOT勾配(-36mmHg、95%CI:-43.2~-28.1、p<0.0001)、pVO2増加(+1.4mL/kg/分、95%CI:0.6~2.1、p=0.0006)、症状スコアの改善(KCCQ-CSS:+9.1[95%CI:5.5~12.7]、HCMSQ-SoB:-1.8[95%CI:-2.4~-1.2]、いずれもp<0.0001)において良好な結果が得られた。NYHA心機能分類の1クラス以上改善が得られた患者は、mavacamten群のほうが34%多かった(mavacamten群80/123例vs.プラセボ群40/128例、95%CI:22.2~45.4、p<0.0001)。

 mavacamten群の安全性および忍容性は、プラセボ群と同等であった。治療下で発現した有害事象は概して軽度であった。死亡はプラセボ群で突然死による1例が報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)