選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、現在のうつ病の薬物治療において中心的な薬剤であるが、実臨床における安全性プロファイルの比較に関しては、依然として情報が不足している。エビデンス不足は、臨床の意思決定や患者アウトカムに深刻な影響を及ぼす。中国・Bayer PharmaceuticalsのAdrian Chin Yan Chan氏らは、主要な6つのSSRIに関する安全性を分析するため、グローバルファーマコビジランス分析を実施した。Cureus誌2025年12月8日号の報告。
WHOの個別症例安全性報告データベースであるVigiBaseを用いて、主要な6つのSSRI(セルトラリン、fluoxetine、パロキセチン、citalopram、エスシタロプラム、フルボキサミン)に関する34万2,000件超の報告を含む包括的なファーマコビジランス分析を実施した。臨床的に関連する7つの安全性ドメイン(抗コリン作用、性機能障害、代謝作用、錐体外路症状、睡眠障害、離脱症候群、心伝導異常)について、情報成分(IC)値を用いた不均衡解析を実施した。
主な内容は以下のとおり。
・各SSRI間で安全性プロファイルに有意な異質性が認められた。また、薬力学的特性と有害事象パターンの間には明らかな相関が認められた。
・パロキセチンは、抗コリン作用、性機能障害、体重増加、離脱症候群の発生率が最も高かった。これは、ムスカリン性M1受容体への高い結合親和性(Ki:108nM)と相関していた。
・citalopramは、心伝導異常の増加を示した。
・fluoxetineは、錐体外路症状の増加を示した。
・SSRIの半減期と離脱症候群の報告数との間に強い逆相関が認められた。
著者らは「本解析により、SSRIはそれぞれ異なる安全性プロファイルを示しており、それが薬力学的特性と相関していることが明らかとなった。この結果は、同クラスのSSRIを均質な治療薬群としてみなす従来の考え方に疑問を投げかけるものであった。これらの知見は、個々の患者のリスク因子に基づいた精密な処方アプローチを支持するものであり、エビデンスに基づいたSSRI選択のためのメカニズムに関する知見となりうる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)