アステラス製薬は萎縮型加齢黄斑変性(萎縮型AMD)に対する国内初の治療薬として2025年11月に発売された、アバシンカプタド ペゴルナトリウム(商品名:アイザベイ)の発売プレスセミナーを2026年1月29日に開催した。堀 聡志氏(アステラス製薬 メディカルアフェアーズジャパンヘッド)が眼科領域の事業戦略を紹介し、続いて門之園 一明氏(横浜市立大学 大学院医学研究科 視覚再生外科学 主任教授)が「地図状萎縮を伴う萎縮型加齢黄斑変性の病態と治療」をテーマに講演した。
患者QOLを長期に損なう地図状萎縮、早期介入・早期診断が鍵
萎縮型AMDは、網膜の中心部である黄斑の組織が加齢に伴い地図状に萎縮し、不可逆的な視力低下を来す慢性疾患である。国内の患者数は約10万例と推定され
1,2)、適切なタイミングで治療を受けない場合、患者の66%が失明または重度の視覚障害に至る可能性があるとされる
3,4)。AMDは、2040年にはアジアでの症例数が世界最多になると推計されている
5)。
地図状萎縮(GA)は萎縮型AMDの必須所見であり、光干渉断層計(OCT)や眼底自発蛍光(FAF)で確定診断を行う。米国のAREDS(加齢性眼疾患研究)コホートの検討では、GAと診断されてから約2.5年(中央値)で中心窩へ進行したと報告されている
6)。門之園氏は、GAが進行性で視機能に重大な影響を及ぼす点に触れ、萎縮拡大と共に視界の中心がぼやける、ゆがむ、黒く見えるなどの症状が現れ、家事やスマートフォンの操作、運転など日常生活が難しくなると述べた。症状を早期に捉えて介入時期を逃さないことが臨床上の鍵になるという。
これまで萎縮型AMDに対しては禁煙や食生活改善などの生活指導が中心で、治療選択肢が乏しかった。こうした背景の下、登場したのが「アイザベイ」である。
海外第III相GATHER 2試験で主要評価項目を達成
アイザベイは、萎縮型AMDにおけるGAの進行を抑制する日本初の硝子体内注射液である。補体因子C5を標的とし、補体系の活性化による炎症や細胞傷害作用などを抑えることでGAの進行を遅らせ、視機能障害の進行抑制に寄与することが期待される。用法・用量は、初回から12ヵ月までは1ヵ月に1回硝子体内投与し、以降は2ヵ月に1回硝子体内投与する。
海外第III相GATHER 2試験では、GAを伴う萎縮型AMDの外国人患者448例を対象に、アイザベイ2mgまたはシャムを1年目は毎月、2年目以降は隔月で投与した。主要評価項目である12ヵ月時点のGA面積(平方根変換)の平均成長速度はアイザベイ群で0.336mm/年、シャム群で0.392mm/年で、統計学的に有意に減少した(p=0.0064)。一方、最高矯正視力スコアのベースラインからの変化量は、12ヵ月および24ヵ月のいずれの時点でも両群で明らかな差は認められなかった
7,8)。
安全性について、24ヵ月時点までに治験薬との関連性がある有害事象はアイザベイ群で225例中7例(3.1%)、シャム群で222例中2例(0.9%)に認められ、そのうち重篤な有害事象としてアイザベイ群で脈絡膜血管新生が1例認められ、投与中止に至った有害事象は認められなかった。24ヵ月時点までに投与手技との関連性がある有害事象はアイザベイ群で84例(37.3%)、シャム群で47例(21.2%)に認められ、そのうち重篤な有害事象としてアイザベイ群で眼内炎が1例、投与中止に至った有害事象としてアイザベイ群で硝子体剥離、眼圧上昇各1例が認められた。全体を通して、本試験の24ヵ月時点までに死亡に至った有害事象は認められなかった
9)。
門之園氏は、硝子体内注射に伴う事象に加え、眼圧上昇や脈絡膜血管新生には注意が必要だと述べた。とくに脈絡膜血管新生が生じた場合の対応としては、「状況に応じて抗VEGF薬との併用もありうる」とした。
実臨床でのポイント――効果判定は6ヵ月目安、治療は長期継続へ
門之園氏は、「アイザベイはあくまで萎縮面積の拡大を抑制する治療薬であり、すでに失われた視力や視野を回復する効果はない」としたうえで、治療に早く着手すればするほど効果が期待できる可能性を示唆し、新たな治療選択肢としての意義を示した。
また、毎月の投与時に所見は確認するものの、GAの変化は1mm単位で評価されるため効果判定は1ヵ月単位では難しく「6ヵ月程度が現実的」との見解を示した。治療継続については、進行抑制という薬効の性質上、基本的に長期にわたる治療となる見立てである。未治療のまま進行した症例背景としては、患者本人の受診忌避だけでなく、医療機関へのアクセスが悪い地域性や、退職後に定期健診の機会が減ること、運転習慣の有無といった「気付き」の機会格差も影響しうると述べ、早期受診の重要性をあらためて強調した。
堀氏は、GAを「これまで満たされてこなかったアンメットニーズ」と位置付け、治療薬がなかったこともあり疾患啓発や診断の意義付け自体が課題だったと説明した。今後は学会などと連携しGAの認知度を高め、早期介入・早期診断につなげたい考えを示した。新たな選択肢の登場を契機に、疾患理解と受診行動のギャップをどう埋めるかが、今後の普及の焦点になりそうだ。
参考文献・参考サイトはこちら
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Khanani AM, et al. Ophthalmology. 2025:S0161-6420(25)00790-0.
9)アステラス製薬株式会社, アイザベイ 適正使用ガイド. 2025:53-60.
(ケアネット 小原 夕奈)