わが国の急性心不全患者の実態は?1万3千例の調査(JROADHF)/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/17

 

 急性心不全の入院患者における全国多施設共同後ろ向き観察研究のJROADHF(Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure)研究の結果が、第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で、井手 友美氏(九州大学医学研究院循環器病病態治療講座)より発表された。全体として、左室収縮能が保持された心不全(HFpEF)が多く、予後は依然として悪いことが示唆された。

 JROADHF研究の対象患者は、日本循環器学会が実施している循環器疾患診療実態調査(JROAD)からランダムに抽出した施設で、2013年1月1日~12月31日の1年間にJROAD-DPCに登録された16歳以上の急性心不全の入院患者で、1万3,238例が登録された。

 主な結果は以下のとおり。

・1万3,238例の平均年齢(±SD)は78.0(±12.5)歳、中央値は81.0歳で、男性の割合は52.8%であった。
・入院時のBNP中央値は693pg/mLであった。
・左室駆出分画(EF)による分類では、HFpEF(HF with preserved EF)が45%、
HFmrEF(HF with mid-range EF)が18%、HFrEF(HF with reduced EF)が37%だった。男性(6,991例)ではHFrEF(46%)がHFpEF(35%)より多く、女性(6,247例)では逆にHFpEF(56%)がHFrEF(27%)より多かった。
・心不全の原因別の割合は、虚血性疾患27%、弁膜疾患19%、不整脈17%、高血圧16%、心筋症12%であった。男性では虚血性疾患(34%)、心筋症(15%)が多く、女性では弁膜疾患(25%)、高血圧(18%)が多く、不整脈は男性(15%)、女性(19%)ともに多かった。
・院内死亡は7.7%にみられ、死因は心血管死が77%、非心血管死が21%であった。心血管死では心不全が79%と多く、非心血管死では肺炎が43%と多かった。
・退院後の観察患者1万1,120例における無イベント生存率の解析から、4年目の全死亡率が44.3%、1年時の心不全入院率は31.5%であった
・長期的な死亡原因は、心血管死が48%、非心血管死が37%であった。心血管死では心不全(75%)、非心血管死では肺炎(31%)とがん(24%)が主な死因であった。

 なお現在、心不全の発症や予後の正確な予測、治療の最適化のための前向き研究であるJROADHF-NEXT研究の登録が進んでいる。本研究は、フレイルまたはサルコペニア、精神的および社会的因子を含んだ心不全データベースで、新たなバイオマーカー発見のためにバイオバンクを創設、またDPC情報と臨床情報を結び付けて検証するもので、2020年7月30日現在、101施設から2,678例が登録されているという。

(ケアネット 金沢 浩子)