COVID-19重症患者、レムデシビル投与5日vs.10日/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/05

 

 人工呼吸器を必要としていない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、レムデシビル投与期間は5日間と10日間とで有意差は認められなかった。米国・ワシントン大学のJason D. Goldman氏らが、COVID-19重症患者を対象とした国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験の結果を報告した。レムデシビルは、in vitroで強力な抗ウイルス活性を示し、COVID-19の動物モデルで有効性が示されたRNAポリメラーゼ阻害薬であるが、レムデシビルを用いた治療の効果のある最短投与期間を明らかにすることが、喫緊の医療ニーズであった。NEJM誌オンライン版2020年5月27日号掲載の報告。

レムデシビルの投与期間5日と10日で有効性を比較

 研究グループは、米国、イタリア、スペイン、ドイツ、香港、シンガポール、韓国および台湾の55施設にて本臨床試験を実施した。2020年3月6日~26日の期間に、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認され、酸素非投与/投与下で酸素飽和度94%以下、画像で肺炎所見を認めた入院患者を登録。レムデシビル5日間静脈内投与(5日)群または10日間静脈内投与(10日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日目にレムデシビル200mg、その後は1日1回100mgを投与した。

 主要評価項目は、投与開始14日時点における臨床状態(7段階評価 1:死亡、2:侵襲的機械換気またはECMO、3:非侵襲的機械換気または高流量酸素療法、4:低流量酸素療法、5:酸素投与は不要だが治療を継続、6:入院しているが酸素投与や治療は不要、7:退院)、副次評価項目は、レムデシビル最終投与後最長30日までの有害事象であった。

レムデシビル投与期間の違いによる有効性に有意差なし

 計402例が無作為化され、このうち397例でレムデシビル投与による治療が開始された(5日群200例、10日群197例)。治療期間中央値は、5日群が5日(四分位範囲:5~5)、10日群が9日(四分位範囲:5~10)であった。ベースラインの患者背景は、5日群に比べ10日群で段階評価が2(2% vs.5%)および3(24% vs.30%)の患者が多く、結果的に臨床状態が有意に悪かった(p=0.02)。

 14日時点における臨床状態がベースラインから2段階以上改善していた患者の割合は、5日群64%、10日群54%であった。ベースラインの臨床状態を補正後、14日時点における各臨床状態の分布は5日群と10日群で類似していた(p=0.14、層別ウィルコクソン順位和検定)。

 レムデシビル投与期間の違いによる有害事象の発現率は、全Gradeが5日群で70%(141/200例)、10日群で74%(145/197例)、Grade3以上がそれぞれ30%および43%で、重篤な有害事象はそれぞれ21%および35%、投与中止に至った有害事象は4%および10%に認められた。

 主な有害事象は、悪心(10% vs.9%)、急性呼吸不全(6% vs.11%)、ALT増加(6% vs.8%)、便秘(6% vs.7%)などであった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)