COVID-19にレムデシビルが有意な効果示せず、早期なら有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/12

 

 中国で行われた無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者へのレムデシビル投与は、臨床的改善までの期間を統計学的に有意に短縮しなかったことが報告された。しかし、発症後10日以内の患者に限定した解析で、有意差は示されなかったものの、臨床的改善までの期間はレムデシビル群で短縮する傾向が認められた。中国・中日友好医院のYeming Wang氏らによる試験の結果で、著者は「早期投与については大規模な研究で確認する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年4月29日号掲載の報告。

症状発症12日以内の肺炎確認例にレムデシビルを10日間静脈投与

 研究グループは、中国・湖北省の10病院を通じて、検査でSARS-CoV-2ウイルスへの感染が確認された入院患者を対象に試験を行った。被験者は18歳以上で、症状発症から試験登録までの経過日数が12日以内であり、室内空気中の酸素飽和度(SpO2)が94%以下または動脈血酸素分圧(PaO2)が300mmHg以下で、放射線学的画像診断により肺炎が確認された患者だった。

 被験者は無作為に2対1の割合で2群に分けられ、一方の群にはレムデシビル(1日目200mg、2~10日目は100mgを1日1回静脈投与)を、もう一方の群にはプラセボを10日間投与した。試験期間中も、ロピナビル・リトナビル配合剤、インターフェロン、副腎皮質ステロイドの併用は可能とした。

 主要エンドポイントは、無作為化後28日目までの、臨床的改善までの時間とした。臨床的改善の定義は、生存退院を1、死亡を6とした6段階スケールで評価し、2段階以上の改善か生存退院の、いずれか早期に達成した場合とした。

 主要解析(有効性)についてはITT解析で、また安全性解析は割り付け治療を開始した全患者を対象とした。

発症10日以内の患者、症状改善までレムデシビル群は18日、プラセボ群は23日

 2020年2月6日~3月12日に237例が登録され、レムデシビル群に158例、プラセボ群に79例が無作為に割り付けられた。無作為化後に試験参加を取り下げたプラセボ群の患者1例は、ITT集団に含まれなかった。

 臨床的改善までの期間中央値は、プラセボ群23.0日に対しレムデシビル群は21.0日で、レムデシビルと臨床的改善までの期間に関連性は認められなかった(ハザード比[HR]:1.23、95%信頼区間[CI]:0.87~1.75)。

 一方で統計学的に有意ではなかったが、レムデシビル投与患者は、症状の持続期間が10日以下の患者に限定すると、プラセボ投与患者と比べて臨床的改善までの期間中央値が短く、プラセボ群23.0日に対し、レムデシビル群は18.0日だった(HR:1.52、95%CI:0.95~2.43)。

 有害事象の報告は、レムデシビル群155例中102例(66%)、プラセボ群78例中50例(64%)だった。

 研究グループは今回の試験について、「中国ではCOVID-19の流行が収束したため、当初目標としていた被験者数を達成できず、統計的検出力が不十分だった」としている。また、「今後、レムデシビルの有効性を検証するための試験としては、COVID-19重症患者への早期投与やより高用量の投与、また他の抗ウイルス薬やSARS-CoV-2中和抗体との併用投与なども必要だ」と述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)