AT(N)測定、非認知症高齢者の記憶力の予後予測に有効/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/02

 

 アミロイドPET、タウPET、MRI皮質厚による予測モデルは、より簡単に入手可能な臨床的/遺伝的情報とともに使用すると、認知症のない高齢者における記憶力低下の予測能が、臨床的/遺伝的情報だけの場合に比べて改善されることが、米国・メイヨー・クリニックのClifford R. Jack Jr氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年6月18日号に掲載された。米国国立老化研究所とアルツハイマー病協会(NIA-AA)の作業部会は、アルツハイマー病の研究枠組みにおいて、参加者のバイオマーカーをアミロイド、タウ、神経変性(ニューロンの損傷)の状態に基づき、AT(N)プロファイルとして分類するよう提唱している。

8つのAT(N)プロファイルを比較するコホート研究
 研究グループは、AT(N)バイオマーカープロファイルと記憶力低下の関連を検討し、このバイオマーカーが、より簡単に入手可能な臨床的/遺伝的情報に、予後予測因子としての有用性の増大をもたらすかを評価するために、人口ベースのコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

 対象は、Mayo Clinic Study of Agingの参加者のうち、年齢60歳以上、認知症がみられず、臨床評価とともにアミロイドPET(A)、タウPET(T)、MRIによる皮質厚(N)の測定が行われた集団(480例)であった。参加者の登録期間は2015年4月~2017年11月で、2018年11月までフォローアップが行われた。

 A、T、(N)は、異常の場合は+、正常の場合は-とし、8通りのAT(N)プロファイルに分類した(A-T-[N]-、A-T+[N]-、A-T-[N]+、A-T+[N]+、A+T-[N]-、A+T+[N]-、A+T-[N]+、A+T+[N]+)。

 主要アウトカムは、15ヵ月間隔で測定した複合記憶スコアとした。予測変数と記憶スコアの関連を評価し、AT(N)バイオマーカープロファイルが、臨床的/遺伝的変数のみのモデルと比較して、記憶力のzスコアの変化の予測能を改善するかを検討した。

A異常かつTと(N)の双方または一方が異常な3群で急速に低下
 フォローアップ期間中央値は4.8年(IQR:3.8~5.1)であり、44%(211/480例)が女性であった。AT(N)バイオマーカープロファイル別の年齢中央値は、A-T-(N)-群の67歳(65~73)からA+T+(N)+群の83歳(76~87)までの幅が認められた。

 ベースライン時に、全体の92%(441/480例)には認知機能の障害はみられなかったが、A+T+(N)+群で軽度認知機能障害(MCI)の割合が最も高く、30%に認められた。

 決定係数R2は、臨床モデルの0.26から、AT(N)モデルでは0.31へと上昇し、AT(N)バイオマーカーにより記憶力低下の予測能が有意に改善した(p<0.001)。AT(N)バイオマーカーは、記憶力低下の割合(p<0.001)および指標となる時点での記憶力のzスコア(p=0.008)の双方と有意な関連を示した。

 A+T+(N)+群、A+T+(N)-群、A+T-(N)+群では、他の5つの群と比較して記憶力の低下が急速であった(p=0.002)。この急速に記憶力が低下した3つの群の85歳のAPOEε4非保因者における記憶力zスコアの年間低下率は、A+T+(N)+群が-0.13(95%信頼区間[CI]:-0.17~-0.09)、A+T+(N)-群が-0.10(-0.16~-0.05)、A+T-(N)+群が-0.10(-0.13~-0.06)であったのに対し、他の5群は-0.02~-0.06と小さかった。

 著者は、「これらの差の臨床的意義については不明である」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

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J-CLEAR評議員