ニーマンピック病C1型へのHPβCDの可能性/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/24

 

 ニーマンピック病C1型の患者に対し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)を髄腔内投与は、病状進行を遅らせる可能性があるようだ。またその安全性については、中間~高周波の聴力損失が認められたほかは、重篤な有害事象は認められなかった。米国・ワシントン大学のDaniel S. Ory氏らが行った、第I-IIa相の非盲検用量漸増試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月10日号で発表した。ニーマンピック病C1型は進行性の神経変性によって特徴づけられるライソゾーム病に含まれる先天性代謝異常症の一種。HPβCDはマウスとネコモデルを用いた前臨床試験で、小脳のプルキンエ細胞消失を顕著に遅らせ、神経症状の進行を遅らせて寿命を延伸させたことが示されていた。

ニーマンピック病C1型患者14例をHPβCDの開始投与量で分類

 研究グループは2013年9月21日~2015年1月19日に米国国立衛生研究所(NIH)から登録・適格基準を満たした、ニーマンピック病C1型で神経症状のある患者14例を対象に試験を行った。

 被検者は、HPβCDの開始投与量が50mg/月(3例)、200mg/月(3例)、300mg/月(3例)、400mg/月(3例)、900mg/月(2例)の髄腔内投与を受ける群に非無作為に順次分類された。

 HPβCD治療開始1年間で、2例がgrade 1毒性のため1回の投与(2ヵ月目)を中断したものの、被験者14例全員について、12ヵ月時点の評価を行った。12~18ヵ月では、1例が原発性肝細胞がんのため17ヵ月で投与を中止。また1例が、ケア提供者の苦痛から、2回の投与(14、15ヵ月目)について中断した。さらに1例が乳様突起炎で1回の投与(18ヵ月目)を中止した。18ヵ月時点での評価は11例について行った。

 また、2013年12月~2014年6月にラッシュ大学医療センターでニーマンピック病C1型患者3例の被験者を登録して、2週ごとHPβCD投与について評価する検討を行った。被験者を非無作為に2群に分け、一方にはHPβCDの開始投与量を200mg/隔週(2例)で、もう一方には同400mg/隔週(1例)で髄腔内投与を行い、18ヵ月後に評価を行った(中断例なし)。

 コレステロール値の変化の指標として、神経細胞コレステロール恒常性の指標である血漿24(S)-ヒドロコレステロール(24(S)-HC)値を測定した。症状の進行については、ニーマンピック病神経重症度スコア(NNSS)を用いて、同年代のHPβCD非投与のニーマンピック病C1型患者21例(対照群)と比較した。

ニーマンピック病神経重症度スコアによる臨床症状の進行がHPβCD投与で遅延

 血漿24(S)-HC値のROC曲線下面積は、HPβCDを900mgまたは1,200mg投与後に対照群と比較して有意に増加した(p=0.0063、p=0.0037)。また、3例の患者は、髄液24(S)-HC値が、HPβCDを600mgまたは900mg投与後に、約2倍に上昇した(p=0.0032)。

 薬剤関連の重篤な有害事象は認められなかった。有害事象として予測されていた中間~高周波の聴力損失は全被験者で認められたが、補聴器を使うことで日常コミュニケーションに支障はなかった。

 臨床症状に関する総ニーマンピック病神経重症度スコアは、対照群は年間2.92点の増加だったのに対し、HPβCDを投与した14例の増加は年間1.22点にとどまった(p=0.0002)。具体的には、歩行(p=0.0622)、認知(p=0.0040)、言語(p=0.0423)の項目で障害進行の遅延が確認された。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)