SCIDの造血細胞移植にあらゆるドナーの可能性/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/11

 

 重症複合免疫不全症(SCID)が、感染症の発現前に同定された幼児では、HLA適合同胞以外のドナーからの造血細胞移植であっても良好な生存率が期待できることが、米国・ボストン小児病院のSung-Yun Pai氏ら原発性免疫不全症治療コンソーシアム(PIDTC)の調査で示された。PIDTCは、SCIDおよび他の原発性免疫不全症の小児に対する造血細胞移植の成績の解析を目的に組織された。とくに出生時にSCIDと診断された小児において、より安全で有効な根治療法をデザインするためには、良好な移植のアウトカムに関連する因子の同定が求められる。NEJM誌2014年7月31日号掲載の報告。

10年間、240例の患者データを後ろ向きに解析
 PIDTCは、2000年1月1日~2009年12月31日までの10年間に、北米の25施設で造血細胞移植を受けたSCIDの患児240例のデータを後ろ向きに収集し、レビューを行った。対象は、T細胞数<300/mm3、T細胞のマイトジェンに対する反応がなく、同種造血細胞移植を受けた患児であった。

 移植関連データとして、移植時年齢、感染症の有無、前処置レジメン、ドナーのタイプ、HLA適合度、移植細胞のソース、T細胞の除去法、移植片対宿主病(GVHD)の予防法を記録した。また、免疫再構築関連データとして、移植後100日、6ヵ月、1年、2年、5年、10年時のCD3陽性T細胞、CD19陽性またはCD20陽性B細胞、CD3陰性/CD56陽性またはCD16陽性/CD56陽性NK細胞の数などを抽出した。

 移植時年齢が生後3.5ヵ月以下の患児は68例(28%)、3.5ヵ月以上は172例(72%)で、男児が173例(72%)であった。CD3陽性T細胞数中央値は20/mm3(0~9,708/mm3)であり、感染症歴ありは171例(71%)で、そのうち106例(62%)で移植時に活動性の感染症を認めた。

5年生存率:3.5ヵ月以下で94%、3.5ヵ月以上/感染症ありで49%
 HLA適合同胞ドナーからの移植を受けた患児は、HLAの一致する血縁者以外のドナー(代替ドナー)から移植を受けた患児に比べ、5年生存率、免疫グロブリン補充が不要の率、CD3陽性T細胞やIgAの回復率が良好であった。

 その一方で、ドナーのタイプにかかわらず生存率が良好なサブグループとして、1)生後3.5ヵ月以下で移植を受けた患児[5年生存率:94%]、2)生後3.5ヵ月以上で移植前に感染症を認めなかった患児[同:91%]、3)移植時には感染症が解消していた患児[同:83%]が挙げられた。生後3.5ヵ月以上で移植時に活動性の感染症がみられた患児の5年生存率は49%だった。

 HLA適合同胞ドナーがなく、移植時に活動性の感染症がみられる場合は、前処置なしでハプロタイプ一致T細胞除去グラフトの移植が行われた患児の生存率が最も高かった。

 生存患児では、強度減弱前処置または骨髄破壊的前処置により、CD3陽性T細胞数が1,000/mm3以上となる率、免疫グロブリン補充が不要の率、IgAの回復率が改善した。一方、これらの前処置は、CD4陽性T細胞の回復や、フィトヘマグルチニン誘導性T細胞増殖の回復には有意な影響を及ぼさなかった。

 RAG1、RAG2、DCLRE1C遺伝子の変異を有する患児は、IL2RG遺伝子変異陽性患児に比べCD3陽性T細胞の回復が不良であった(単変量解析、p<0.001)。このような遺伝学的サブタイプの違いによる生存への影響は認められなかった。

 著者は、「感染症の発現前にSCIDが同定された患児では、HLA適合同胞以外のドナーからの移植でも良好な生存率が達成された。無症状であれば、グラフトのソースを問わず良好な生存率が期待できる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)