2026年3月、千寿製薬は世界初のTRPV1拮抗作用を持つドライアイ治療薬、モツギバトレプ(商品名:アバレプト懸濁性点眼液0.3%)に関するプレスセミナーを開催した。セミナーではモツギバトレプの開発経緯の紹介の後、堀 裕一氏(東邦大学医療センター大森病院 眼科 教授)が「ドライアイの新たな側面を捉える」というテーマで講演をした。
ドライアイの病態とTRPV1
日本国内のドライアイ患者は2,200万人を超えるとされており、現代のライフスタイルや高齢化によって患者数は増加傾向にある。ドライアイは涙液層の安定性の低下と瞬目時の摩擦亢進が相互に悪循環を形成することで炎症が起こり、眼表面障害と眼の乾きや不快感などの症状を引き起こす。これらの症状は患者さんのQOL低下につながることが示唆されており、実際に患者さんの治療に対するニーズは自覚症状に対する早期の改善効果である。
近年、ドライアイの眼痛や不快感など自覚症状に眼表面の感覚神経に発現するいくつかの受容体が関連していることがわかってきており、そのうちの1つであるTRPV1は三叉神経節細胞などを通じて自覚症状の発現と炎症に関与している。モツギバトレプはTRPV1を阻害することでドライアイの不快感などの自覚症状を改善することが期待されている。
国内第III相試験の成績
国内第III相比較試験はドライアイの自覚症状とQOLを総合的に評価するDEQSスコアの変化量を主要評価項目として設計された。
主要評価項目ではモツギバトレプ群のプラセボ群に対する優越性が検証された。
副作用の発現状況はモツギバトレプ群で268例中15例、5.6%に発現しており主な副作用は冷感6例(2.2%)、眼部冷感3例(1.1%)、霧視3例(1.1%)であった。
また、モツギバトレプを単剤またはドライアイ治療薬などと併用投与した際の安全性と有効性を評価した国内第III相長期投与試験では、投与1週後という早期から1年にわたって効果を発揮することが示されている。一方、副作用についてはTRPV1は温度感覚に関連する受容体であるため、作用機序に関連すると考えられる温度感覚異常に関しては、「患者さんに対して適切な情報提供を続けていく必要がある」と堀氏は説明した。
今後のドライアイ診療はどう変わるか
ドライアイ診療は今後、神経を対象とした領域に突入していく。ドライアイの患者さんは自覚症状に悩みながらも病院の受診まで至らないケースも多い。新しい治療選択肢が増えたことを医療従事者から患者さんに伝え、受診を促していくことも重要だと考えられる。また、新規作用機序であるモツギバトレプの登場により、ドライアイの病態生理のさらなる解明につながることが期待されるとして、堀氏は講演を締めくくった。
千寿製薬の目指す創薬
千寿製薬は主に眼疾患の治療薬を開発・製造・供給しており、モツギバトレプは“やさしい創薬”というコンセプトで開発されている。モツギバトレプは可能な限り添加物を使用しない開発がなされ、角膜上皮に影響があるとされているベンザルコニウム塩化物を含まない製剤となっている。
堀氏の講演に先立って挨拶をした吉田 周平氏(千寿製薬株式会社 代表取締役社長)は眼科を中心とした医療現場に柔軟な発想と探求心をもって新しい薬の開発に挑み続け、「“見える”の向こうにあるものをカタチづくっていく」と自社の目指す姿を語った。
(ケアネット)