英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のClaudia Allemani氏らVENUSCANCER Working Groupは、女性に多い3種類のがん(乳がん、子宮頸がん、卵巣がん)の治療提供状況について初めて世界規模で評価した「VENUSCANCERプロジェクト」の解析結果を報告した。低・中所得国では、早期がんと診断された女性がガイドラインに準拠した治療を受けやすくなってはいたが、早期診断される女性の割合は依然として非常に低いままであることを示した。著者は、「解析で得られた知見は、WHOの世界乳がんイニシアチブや子宮頸がん撲滅イニシアチブといった、がん対策への国際的な取り組みの実施とモニタリングを支援する重要なリアルワールドエビデンスである」としている。Lancet誌2025年11月15日号掲載の報告。
ガイドライン準拠、診断~治療開始の期間中央値を評価、高所得国と低・中所得国の受療確率を分析
研究グループは、CONCORDプログラムに乳がん・卵巣がん・子宮頸がんのデータを提供した全322のがん登録に対して、VENUSCANCERプロジェクトへのデータ提供を要請し、世界39の国と地域における103のがん登録から得られた2015~18年のいずれかの1年間に乳がん、子宮頸がん、または卵巣がんと診断された女性の高精度データを解析した。高精度データには、診断時Stage、Stage分類手順、腫瘍グレード、バイオマーカー(ER、PR、HER2)、各治療法(手術、放射線療法、化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)の初回治療コースおよび関連する日付が含まれた。
国または地域別に予後因子、国際臨床ガイドライン(ESMO、ASCO、NCCN)との整合性を示す主要な指標、および診断から治療開始までの期間中央値を評価した。年齢と腫瘍のサブタイプを調整し、高所得国と低・中所得国におけるガイドラインに沿った治療を受けられる確率を分析した。
低・中所得国では、早期診断される女性の割合が依然として非常に低い
解析には、3種類のいずれか1つのがんと診断された女性計27万5,792例が包含された。乳がん診断者21万4,111例(77.6%)、子宮頸がん(上皮内がんを含む)診断者4万4,468例(16.1%)、卵巣がん診断者1万7,213例(6.2%)であった。
高所得国では、早期・リンパ節陰性のがんは乳がん診断者および子宮頸がん診断者の40%超を占めていたが、卵巣がん診断者では20%未満であった。一方、低・中所得国では、これらの割合は3つのがんすべてでおおむね20%未満であった。ただしキューバ(乳がん30%)、ロシア(子宮頸がん36%、卵巣がん27%)では高かった。
国際ガイドラインとの整合性には大きなばらつきが認められ、とくに早期乳がんに対する手術・放射線療法(ジョージア13%~フランス82%)、進行子宮頸がんに対する化学療法(モンゴル18%~カナダ90%)、転移のある卵巣がんに対する手術+化学療法併用(キューバ9%~米国53%)で顕著であった。
何らかの手術が提供されたのは、高所得国では78%、低・中所得国では56%であり、早期がんに対する初期治療(臨床ガイドラインに準拠した)は、乳がんと比べて子宮頸がんと卵巣がんのほうがより均一に行われていた。高所得国と低・中所得国のいずれにおいても、高齢女性(70~99歳)は50~69歳の女性との比較において臨床ガイドラインに準拠した初期治療を受ける確率が低かった。
早期がんの診断から治療までの期間中央値は、複数の高所得国では1ヵ月未満であったが、モンゴルの子宮頸がんおよびエクアドルの卵巣がんでは最大4ヵ月、モンゴルの乳がんでは最大1年であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)