CKD患者の年間医療費はどの程度増加するのか/広島大学

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/01

 

 慢性腎臓病(CKD)の医療費負担は相当なものとなることはよく知られているが、実際、どのような所見がある場合に、年間でどの程度増加するかは知られていなかった。広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学の迫井 直深氏らの研究グループは、日本全国の健診データおよび医療費請求データを用いたコホート研究を実施し、健診での早期CKDの発見と関連する医療費増加の程度を解析した。その結果、健診受診者の5.3%が早期CKDを持つことが判明し、CKDがない人と比較し、腎機能低下者では1人当たり年間で2.6万円の医療費増加があることがわかった。JAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載。

8万人のうち5.3%に早期CKD

 本研究は全国規模の大規模健康医療データベースを用い、就労世代約8万人の健診データを分析した。データ解析は2021年4月~2023年10月まで実施。

 ベースライン時のCKD病期(eGFRと蛋白尿により定義)は、eGFR60mL/分/1.73m2以上(蛋白尿なし)、eGFR60mL/分/1.73m2以上(蛋白尿あり)、eGFR30~59mL/分/1.73m2(蛋白尿なし)、eGFR30~59mL/分/1.73m2(蛋白尿あり)。

 主要アウトカムは、超過医療費としてベースライン年(2014年)およびその後の5年間(2015~19年)におけるベースラインのCKDステージ(基準群:eGFR≧60mL/分/1.73m2、蛋白尿なし)に応じた医療費の絶対差と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・健診を受けた7万9,988人(平均年齢47.0[±9.4]歳、女性2万2,027人[27.5%])のうち、蛋白尿を伴うeGFR60mL/分/1.73m2以上の人は2,899人(3.6%)、蛋白尿を伴わないeGFR30~59mL/分/1.73m2の人は1,116人(1.4%)、蛋白尿を伴うeGFR30~59mL/分/1.73m2の人は253人(0.3%)だった。
・ベースライン時、蛋白尿の有無とeGFRが60mL/分/1.73m2未満は、より大きな超過医療費と関連していた。
・調整後差は、蛋白尿で2.4万円[99%信頼区間[CI]:900円~4.9万円]、eGFRが30~59mL/分/1.73m2で8.5万円[99%CI:3.2~13.7万円]、これらの組み合わせで17.6万円[99%CI:1.9~33.2万円]だった。
・本研究では、その後5年間にわたり一貫して超過医療費増加が認められた。

 以上の結果から、研究グループは「早期CKDは5年間の超過医療費と関連し、その関連は病期が進行するほど顕著だった」と結論付けている。
(1ドル140円で換算)

(ケアネット 稲川 進)