長時間作用型抗精神病薬の使用に対する障壁

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/11

 

 統合失調症は、日常機能やQOLを低下させる思考、知覚、行動の障害を伴う慢性的で重篤な精神疾患である。抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口剤よりも長期的アウトカムを改善する可能性があるが、多くの場合、LAI抗精神病薬は疾患経過の後半で最後の治療選択として用いられている。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、統合失調症の現在の治療パターン、臨床医の考え、LAI抗精神病薬使用に対する障壁を評価し、精神科医の統合失調症のマネジメントにおける満たされていない教育ニーズを特定しようと試みた。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年1月26日号の報告。

 米国の統合失調症患者のマネジメントを行っている臨床医2,330人を対象に電子メール調査を実施し、調査を完了した379人のデータを分析した。調査には、7つの決断ポイントを有する症例ベースの報告5症例が含まれた。データの分析には、定性および定量的な方法を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・臨床医は、どのタイミングで治療を開始するかを決定することに対し最も自信があり、LAI抗精神病薬への移行や実施に対し最も自信がなかった。
・臨床医は、LAI抗精神病薬に適している患者像として、アドヒアランス不良例、毎日の服薬や頻繁な治療に煩わしさを感じている患者を挙げていた。
・統合失調症患者の最適なマネジメントにおいて、最も重要なポイントは、患者のアドヒアランスと考えていた。
・臨床医の再発に対する認識は、LAI抗精神病薬の使用について患者と話し合う、推奨することを検討する強力な因子であった。

 著者らは「現在の治療が良好な場合、臨床医は患者にLAI抗精神病薬への切り替えを推奨することを躊躇する可能性が示唆された。LAI抗精神病薬による治療でベネフィットがもたらされる可能性のある統合失調症患者のケアを行っている臨床医の自信、知識、能力を向上させることを目的とした今後の研究や継続的な教育に、これらの結果は役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)