肥満症の患者にチルゼパチドを処方した場合、何らかの精神症状を伴うのであろうか。このテーマについてアメリカのペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院精神医学科のThomas A. Wadden氏らの研究グループは、SURMOUNT試験の事後解析を行った。その結果、既往の精神症状のない過体重または肥満症患者にはチルゼパチドはうつなどのリスクと関連しないことがわかった。この結果は、Obesity誌2026年1月15日オンライン版に公開された。
チルゼパチドの使用で精神疾患の有害事象はプラセボとおおむね同等
研究グループはチルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT試験1~3より既往の主要精神病理を伴わない肥満成人を対象に、チルゼパチド投与に伴う精神科的変化を事後解析で評価した。
方法としてプラセボ対照群と比較したチルゼパチド投与群(5/10/15mgまたは最大耐容量10/15mg)の4,056例について、抑うつ症状は患者健康質問票-9(PHQ-9)により、自殺念慮(SI)および自殺行動(SB)はコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)により測定し、神経系および精神疾患の有害事象(AE)を収集した。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時のPHQ-9スコアの平均値(SD)は、チルゼパチド群で2.7(SD3.0)、プラセボ群で2.6(SD3.1)であり、うつ病の症状は皆無またはごくわずかだった。
・72週時点のスコアは、チルゼパチド投与群で1.9(SD2.7)、プラセボ群で2.4(SD3.3)だった(推定治療差[SE]:-0.6[0.1])、p<0.001。
・チルゼパチド投与群では、より重症なPHQ-9カテゴリーへの移行率が低かった(18.2%vs.24.3%、p<0.001)。
・C-SSRSでは、各群の0.6%がSIを報告したが、そのほとんどは低リスクと評価された。
・非致死性SBは、チルゼパチド投与群で0.1%、プラセボ群では0.0%に発生した。
・AEは各群でおおむね同様だった。
研究グループは、この結果から「既往の主要精神病理を伴わない過体重または肥満症患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、うつ病リスクの増加と関連していないことが示唆された。チルゼパチド投与群で観察された自殺念慮/自殺行為の発生率は、他のインクレチン系治療薬と同程度だった。重篤な精神疾患を有する患者におけるチルゼパチドの安全性に関しては、さらなる研究が必要」と結論付けている。
(ケアネット 稲川 進)