慢性リンパ性白血病におけるBTK阻害剤 アカラブルチニブの心血管系有害事象

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/22

 

 アストラゼネカは第62回米国血液学会で、慢性リンパ性白血病(CLL)に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤アカラブルチニブ単剤療法を受けた患者762例の心血管安全性データの統合解析において、アカラブルチニブで投与中止に至る心血管系の有害事象(AE)の発現率が1%未満であったと発表した。

 この解析は、第III相のELEVATE-TN試験とASCEND試験、第II相の15-H-0016試験、そして第I/II相ACE-CL-001試験の4つの臨床試験が対象となり、アカラブルチニブ単剤療法を受けた未治療、または再発/難治性 CLLの患者が含まれている。観察期間中央値 25.9ヵ月時点で、129例(17%)の患者に心血管系のAEが認められ、7例(0.9%)の患者が心血管系のAEのために治療を中止した。

 アカラブルチニブの投与期間中央値は 24.9カ月で、患者の2%以上に発現した心血管系のAEには、心房細動(4%)、心房細動/粗動(5%)、動悸(3%)、頻脈(2%)などがあり、心房細動の発現率は一般的な未治療CLL患者の集団と同程度(6%)であった。

 グレード3以上の心血管系のAEは、37例(4%)に認められ、そのうち25%は治療開始から6カ月以内に報告された。その内訳は、心房細動(1.3%)、完全房室(AV)ブロック(0.3%)、急性冠症候群(0.1%)、心房粗動(0.1%)、第二度AVブロック(0.1%)、心室細動(0.1%)などであった。2例は心血管系のAEのため、死亡した(うっ血性心不全、心臓発作が各1例)。

 全体として、心血管系のAEが認められた患者の91%、認められなかった患者の79%が、アカラブルチニブ投与前に1つ以上の心血管疾患リスク因子を有していた。心血管系のAEを発現した患者における、患者さんの20%以上が有していた心血管疾患リスク因子は、高血圧(67%)、高脂血症(29%)および不整脈(22%)だった。

 Jennifer Brown氏(Dana-Farberがん研究所)は、CLL患者に対するBTK阻害剤による治療では、心血管系の合併症が治療中止の理由となることが多いことに言及したうえで、「アカラブルチニブ投与に伴う心血管系のAEリスクは、未治療のCLL患者の一般集団と同程度であったことが示唆されており、医師にとってアカラブルチニブを処方するうえで重要なデータである」と述べている。

 アストラゼネカは、前治療歴のある高リスクCLL患者を対象に、アカラブルチニブとイブルチニブを比較評価する第III相のELEVATE-RR試験など、CLLを対象とした追加試験を検討している。

(アスクレピア 門脇 剛)