ダパグリフロジン、2型DM合併問わずCKD患者に有益/AstraZeneca

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/05

 

 AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)は、同社が行ったダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の第III相DAPA-CKD試験の結果を発表した。

プラセボと比較し主要評価項目で腎保護を達成

 慢性腎臓病(CKD)は、腎機能が低下することにより起こる重篤な進行性の疾患。最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、糸球体腎炎で、重篤な状態になると腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする末期腎不全(ESKD)となる。全世界で約7億人の患者が推定されている。

 今回結果が報告されたDAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無を問わず、CKDのステージ2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例のCKD患者を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による効果と安全性をプラセボと比較検討した国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験。

 発表によるとダパグリフロジンは、成人CKD患者における、腎機能の悪化または死亡に関する主要複合評価項目(推定糸球体ろ過量[eGFR]の50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、腎不全による死亡のいずれかの発生と定義)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある効果を示し、2型糖尿病合併の有無にかかわらずCKD患者において、すべての副次的評価項目も達成した。

 なお、安全性および忍容性プロファイルは、本剤の確立された安全性プロファイルと一貫。

ダパグリフロジンの概要

 ダパグリフロジンは、経口1日1回投与で単剤療法および併用療法の一環として使われる、ファーストインクラスの選択的SGLT2阻害剤。成人2型糖尿病患者の食事、運動療法の補助療法としての血糖コントロールの改善を適応とし、体重減少と血圧低下の副次的作用を有している。2型糖尿病患者を対象とする“DECARE-TIMI58心血管アウトカム試験”では、標準治療への追加療法で、プラセボと比較し、心不全による入院または心血管死の複合評価項目におけるリスクを低下した。

 さらに、2020年5月、ダパグロフロジンは、米国において2型糖尿病合併の有無に関わらず左室駆出率が低下した(HFrEF)、成人心不全患者(NYHA心機能分類:IIからIV)の心血管死および心不全による入院のリスク低下に対する承認を取得した。

 なお、わが国で承認されているダパグロフロジンの適応症は「2型糖尿病」および「1型糖尿病」。2020年8月現在で慢性腎臓病の適応を取得している国および地域はない。

 現在、心不全患者を対象とした“DELIVER試験(左室駆出率が保持された心不全:HFpEF)”および“DETERMINE試験(HFrEFおよびHFpEF)”も進行中であり、同社では、「本試験は2型糖尿病合併の有無にかかわらず、慢性腎臓病患者において生存期間の改善を含む試験開始当初の想定をはるかに上回る有効性を示した最初の試験。この結果を今後、世界の科学コミュニティや保健当局と共有してきたい」と期待を寄せている。

(ケアネット 稲川 進)