精神疾患の疫学研究~大規模コホート

中国は、ここ30年の間、過去にない経済的発展と社会的変化が起きており、政策立案者や医療専門家は、モニタリングすべき重要なポイントとして、メンタルヘルスへの注目が集まっている。中国・Guangdong Academy of Medical ScienceのWenyan Tan氏らは、過去10年間で2,000万件の実臨床フォローアップ記録を用いて、広東省における精神疾患の疫学研究を実施した。BMC Medical Informatics and Decision Making誌2020年7月9日号の報告。
2010~19年の広東省精神保健情報プラットフォームより、データを収集した。このプラットフォームは、6カテゴリの精神疾患患者約60万人と統合失調症患者40万人を対象とした疾患登録およびフォローアップが標準化されている。患者の疾患経過による臨床病期分類を行い、さまざまな因子でデータを分類した。疾患に関連性の高い指標を調査するため、定量分析を行った。地域分布分析のため、結果を地図に投影した。
主な結果は以下のとおり。
・精神疾患発症の多くは、15~29歳で認められた。ピーク年齢は、20~24歳であった。
・罹病期間が5~10年の患者が最も多かった。
・疾患経過に伴い、治療効果は徐々に減少し、リスクが上昇した。
・影響因子分析では、経済状況の悪化はリスクスコアを上昇させ、適切な服薬アドヒアランスが治療効果の改善に効果的であることが示唆された。
・より良い教育は、統合失調症リスクを低下させ、早期治療効果を高めた。
・統合失調症の地域分布分析によると、経済状況の発展や医療資源の豊富な地域では、疾患リスクが低下し、経済状況が思わしくない地域では、疾患リスクが上昇した。
著者らは「経済状況や服薬アドヒアランスは、統合失調症の治療効果やリスクに影響を及ぼしていた。経済状況の発展とより良い医療資源は、精神疾患治療に有益である」としている。
(鷹野 敦夫)
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