視力と認知症との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/12

 

 視力の低下と認知症リスクとの関連を調査した縦断的エビデンスの結果は一致していない。香港中文大学のAllen T. C. Lee氏らは、誤分類、逆因果関係、健康上の問題や行動による交絡因子に関連するバイアスとは無関係に、高齢者の大規模なコミュニティーコホートにおける視力低下と認知症発症率との関連を調査した。The Journals of Gerontology誌Series Aオンライン版2020年2月11日号の報告。

中等度から重度の視覚障害は認知症の潜在的な予測因子である可能性

 ベースライン時に認知症でない地域在住高齢者1万5,576例を対象に、認知症発症について6年間フォローアップを行った。認知症診断は、ICD-10または臨床的認知症尺度(CDR)1~3に従って実施した。ベースラインおよびフォローアップ時の視力評価には、スネレン視力表を用いた。人口統計(年齢、性別、教育、社会経済的地位)、身体的および精神医学的併存疾患(心血管リスク、眼科的状態、聴覚障害、運動不足、うつ病)、ライフスタイル(喫煙、食事、身体活動、知的活動、社会活動)についても評価した。

 視力低下と認知症発症率との関連を調査した主な結果は以下のとおり。

・6万8,904人年以上のフォローアップ期間中に、1,349例が認知症を発症した。
・ベースライン時の視力低下は、人口統計、健康上の問題、ライフスタイルで調整した後でも、また3年以内の認知症発症を除外した場合でも、6年後の認知症発症率の高さと関連が認められた。
・正常な視力の高齢者と比較した、視力低下の重症度別の認知症ハザード比は、以下のとおりであった。
 ●軽度視力低下の認知症ハザード比:1.19(p=0.31)
 ●中等度視力低下の認知症ハザード比:2.09(p<0.001)
 ●重度視力低下の認知症ハザード比:8.66(p<0.001)

 著者らは「中等度から重度の視覚障害は、認知症の潜在的な予測因子およびリスク因子である可能性がある。臨床的な観点から、視力が低下している高齢者に対する認知症リスク評価のさらなる必要性が示唆された」としている。

(鷹野 敦夫)