性機能に対するボルチオキセチンの影響~ランダム化比較試験

性機能障害はうつ病患者においてよくみられるが、抗うつ薬の一般的な副作用として認められるtreatment-emergent sexual dysfunction(治療に起因する性機能障害)の評価は、一部の患者において抑うつ症状の治療と混同される可能性がある。米国・Takeda Development Center AmericasのPaula Jacobsen氏らは、ボルチオキセチンの性機能に対する影響を評価するため、健康なボランティアを対象に、性機能障害を誘発することが知られているパロキセチンおよびプラセボとの比較を行った。The Journal of Sexual Medicine誌2019年10月号の報告。
本研究は、フェーズIVランダム化多施設二重盲検プラセボ対照4アーム固定用量head-to-head試験として実施された。性機能が正常な18~40歳の健康なボランティア(自己報告によるChanges in Sexual Functioning Questionnaire Short-Form[CSFQ-14]において男性は47点超、女性は41点超)に、ボルチオキセチン(1日1回10mgおよび20mg)、パロキセチン(1日1回20mg)、プラセボを5週間投与し、性機能障害の比較を行った。治療コンプライアンス不良を調整する2つの修正された完全分析セットを事前に指定した。主要エンドポイントは、5週間後のパロキセチンと比較したボルチオキセチンのCSFQ-14総スコアの変化とした。副次エンドポイントは、プラセボと比較したボルチオキセチンのCSFQ-14スコアの変化、CSFQ-14サブスケール、患者の全体的な印象度とした。
主な結果は以下のとおり。
・対象は361例(平均年齢:28.4歳)。内訳は、白人約57%、黒人またはアフリカ系米国人34%、アジア系4%であった。
・ボルチオキセチン10mgでは、パロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が有意に少なかった(平均差:+2.74点、p=0.009)。
・ボルチオキセチン20mgでは、パロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が少なかったが(平均差:+1.05点)、統計学的に有意な差は認められなかった。
・とくにパロキセチンおよびボルチオキセチン20mgでは、コンプライアンス不良が結果に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
・パロキセチンは、プラセボよりも治療に起因する性機能障害が有意に多かったが、ボルチオキセチンでは認められなかった。
・ボルチオキセチンは、パロキセチンよりもCSFQ-14で測定した性機能障害の3つのフェーズおよび5つのディメンションにおいて良好な結果が認められた。
・本試験では、健康なボランティアを対象とすることにより、結果に影響を及ぼすうつ症状の状態などのリスクが軽減された。
著者らは「健康なボランティアにおいて、ボルチオキセチンはパロキセチンよりも治療に起因する性機能障害が少なく、性機能障害が懸念されるうつ病患者のマネジメントにおいてボルチオキセチンが選択薬となりうることが示唆された」としている。
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