周術期化学療法による脱毛の程度や経過は/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/17

 

 化学療法による有害事象の治療後の経過についての報告は少なく、とくに脱毛に関しての報告はきわめて少ない。また、正確な頻度や程度、経過についてまとまったエビデンスはない。今回、群馬大学乳腺・内分泌外科の藤井 孝明氏らは、アンケート調査による前向き観察研究でこれらを検討した。その結果、治療終了後でも有害事象が継続する症例が多く認められること、頭髪以外の部位の脱毛も高頻度で起こりうることが明らかになった。第27回日本乳癌学会学術総会にて報告された。

 本研究の対象は、FEC療法、タキサンの順次投与を周術期に施行し、化学療法終了後、半年後の経過観察とアンケート調査の評価が可能であった45例。レジメン変更時、治療終了時、治療終了半年後および1年後に、アンケート調査を実施した。悪心、嘔吐、しびれ(末梢神経障害)、口内炎、味覚障害、不眠症、排便、爪脱落については、CTCAE v4.0に準じたアンケートで調査した。脱毛については、頻度、程度(0、25、50、75、100%で評価)、脱毛の部位(頭髪、眉毛、睫毛、体毛)、脱毛・発毛の開始時期、発毛後の毛質、脱毛時のケア、症状についてアンケートを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・治療開始時の年齢中央値は53歳(38~74歳)、術前化学治療が23例、術後化学治療が22例であった。HER2陽性例ではトラスツズマブを投与していた。
・治療終了時と治療終了半年後の有害事象(全Grade)の頻度の変化は、悪心71.1%→4.4%、嘔吐8.9%→0%、口内炎57.8%→20.0%、便秘77.8%→34.8%、下痢48.9%→22.2%、味覚障害84.4%→40.0%、不眠症77.8%→35.6%、末梢神経障害55.6%→80.0%、爪脱落13.3%→44.4%であった。悪心、嘔吐は治療終了半年後に改善を認め、末梢神経障害は継続例が多かった。
・脱毛の頻度と75%以上の脱毛の頻度は、頭髪100%/100%、眉毛88.9%/34.1%、睫毛88.9%/28.9%、体毛97.8%/48.9%であった。
・脱毛開始時期の中央値は治療開始から14日目(9~28日)であった。
・脱毛時のケアは全例で行っており、ウイッグ88.9%、帽子91.1%、バンダナ22.2%であった。
・発毛の開始時期は、頭髪では治療中が10例(中央値:4ヵ月)、治療後が34例(同:2ヵ月)、眉毛では治療中が7例(同:4ヵ月)、治療後が29例(同:1.5ヵ月)、睫毛では治療中が6例(同:4.5ヵ月)、治療後が29例(同:1.5ヵ月)、体毛では治療中が6例(同:5ヵ月)、治療後が31例(同:2ヵ月)であった。
・治療後の毛髪の変化は、太さでは「細くなった」が40.9%、硬さでは「柔らかくなった」が52.3%、質では「巻き髪になった」が59.1%、色では「白髪になった」が22.7%であった。

(ケアネット 金沢 浩子)