非アルツハイマー型認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬の使用

非アルツハイマー型認知症は、すべての認知症の約30%を占め、主要な認知障害や行動障害を呈する。コリンエステラーゼ阻害薬は、脳内のアセチルコリンレベルを上昇させることにより、記憶力を改善し、アルツハイマー型認知症(AD)の対症療法に承認されている薬剤である。そして、潜在的なコリン作動性機能障害を伴う他の認知症においても研究されている薬剤である。米国・ベイルート大学のPaul Noufi氏らは、非ADに対するコリンエステラーゼ阻害薬の使用について報告を行った。Drugs & Aging誌オンライン版2019年6月14日号の報告。
主な内容は以下のとおり。
・レビー小体型認知症(LBD)やパーキンソン病認知症(PDD)は、ADよりも重度なコリン作動性機能障害があるとのエビデンスも報告されている。
・しかし、ADとの併存疾患の増加を考えると、血管性認知症(VaD)において客観視することが困難である。
・また、前頭側頭型認知症(FTD)において、コリン作動性の喪失に関するエビデンスはほとんどない。
・コリンエステラーゼ阻害薬は、LBDとPDDに対する臨床試験において認知、行動、機能の有意な改善が認められたが、データに影響を及ぼす使用尺度の不均一性、試験期間、限られたサンプルサイズのため、リバスチグミンのみがPDDへ承認されている。
・同様に、VaDに対する試験は、純粋なVaDについて事前に定義された包括基準の欠如、脳血管疾患の位置や程度に関する幅広い異質性によって制限される。
・FTD患者では、コリンエステラーゼ阻害薬により、主に認知機能や行動症状の悪化との関連が認められた。
著者らは「非ADに対するコリンエステラーゼ阻害薬は、軽度~中等度のコリン作動性副作用の報告やVaDにおけるリバスチグミンの心血管系および脳血管系イベントの有意ではない増加傾向が報告されているが、忍容性は高く、とくにコリン作動性の欠如が認められる場合には、ケースバイケースでの慎重な使用が正当化されるべきである」としている。
(鷹野 敦夫)
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