日本語でわかる最新の海外医学論文|page:678

脳室内出血の血腫洗浄、アルテプラーゼ vs.生理食塩水で機能改善に有意差なし(解説:中川原 譲二 氏)-642

米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F Hanley氏らが、世界73施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験CLEAR III(Clot Lysis:Evaluating Accelerated Resolution of Intraventricular Hemorrhage Phase III)の結果を報告し、脳室内出血に対して、脳室ドレーンを介した血栓溶解剤:アルテプラーゼによる血腫洗浄を行っても、生理食塩水での洗浄と比較して有意な機能改善は認められなかったとした。

冠動脈疾患患者における心房細動の危険因子は?

 一般集団における心房細動の危険因子は明らかだが、特定の疾患を持つ患者への影響は不明である。今回、札幌医科大学の村上 直人氏らが、冠動脈疾患(CAD)患者と非CAD患者における心房細動の危険因子を調べた結果、CADの有無により心房細動の主要な危険因子が異なることが示唆された。CAD患者では血清尿酸値高値、非CAD患者ではスタチン非使用で心房細動が発症しやすいことが示された。Open heart誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。

乳幼児の中等度細気管支炎に、高流量酸素療法は?/Lancet

 中等度の細気管支炎に対する高流量加温加湿鼻カニューレ酸素療法(HFWHO)は、低流量鼻カニューレ酸素療法(標準酸素療法)と比較して、酸素離脱までの時間を短縮しないことが示された。オーストラリア・John Hunter小児病院のElizabeth Kepreotes氏らが、HFWHOの有用性を検証することを目的とした第IV相無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。細気管支炎は乳幼児で最も一般的な肺感染症であり、治療は呼吸困難や低酸素症の管理が中心となる。HFWHOの使用は増加しているが、これまで無作為化試験は行われていなかった。今回の結果について著者は、「中等度細気管支炎に対するHFWHOの早期使用は、基礎疾患の経過を緩和するものではないことを示唆するが、HFWHOには、費用が高額な集中治療を必要とする小児を減らす緊急処置としての役割があるかもしれない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年2月1日号掲載の報告。

再発前立腺がん、放射線+抗アンドロゲン療法で全生存率上昇/NEJM

 救済放射線療法にビカルタミド150mg/日経口投与を24ヵ月間併用することにより、放射線療法+プラセボと比較し、12年全生存率が有意に上昇するとともに、転移性前立腺がん発生率や前立腺がん死亡率が有意に低下した。米国・マサチューセッツ総合病院のWilliam U Shipley氏らが、前立腺摘除術後再発に対する抗アンドロゲン療法長期併用の有効性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(RTOG 9601試験)の結果を報告した。根治的前立腺摘除術後の前立腺特異抗原(PSA)再発には救済放射線療法が行われるが、約半数は後に疾患進行を認める。ビカルタミド150mg/日経口投与は前立腺がんに有効であることが知られているが、放射線療法との併用が、がんのコントロールをさらに改善し、長期的に全生存期間を延長するかどうかは明らかにされていなかった。NEJM誌2017年2月2日号掲載の報告。

NEJM誌は時に政策的、反トランプ的な米国エスタブリッシュメント層を代弁する立ち位置(解説:中川 義久 氏)-641

市販後調査(PMS)は、医薬品や医療機器が販売された後に行われるもので、有効性・安全性の担保を図るために重要なものである。実際の医療現場では、医薬品や医療機器が治験の段階とは異なる状況下で使用されることもあり、治験では得られなかった効果や副作用が発生する可能性がある。しかし、企業のみによるPMSにはさまざまな問題点がある。現在、世界的には産官学の連携による市販後レジストリの構築が重要とされている。よくデザインされた質の高い市販後レジストリによって、迅速な安全対策の実施や患者治療の最適化につながる可能性があるからである。

双極性障害に対する抗うつ薬使用の現状は

 エビデンスに基づく臨床実践ガイドラインにおける双極性障害I型II型のための薬物療法は、双極性障害治療のために利用可能である。スウェーデン・サールグレンスカ大学病院のCharlotte Persson氏らは、本ガイドラインがスウェーデンの臨床現場でどの程度利用されているかを調査した。Lakartidningen誌オンライン版2017年1月10日号の報告。

アルツハイマー病が回復する可能性

 アルツハイマー病では、脳内にアミロイドベータ(Aβ)が蓄積することにより神経細胞に異常が現れると考えられている。最近、Aβの集合体(Aβオリゴマー)がこれらの病態の引き金になることが明らかになってきたが、この引き起こされた神経細胞の障害が回復する可能性について明確な実証はなされていなかった。今回、国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが、ラット由来の神経細胞モデルを用いて検討した結果、Aβオリゴマーによって引き起こされる神経細胞の障害は、Aβオリゴマーを除去することによって回復可能であることを初めて実証した。Molecular Brain誌オンライン版2017年1月31日号に掲載。

TAVR患者における左心耳血栓の評価と心臓CTの役割

 心房細動(AF)はTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)を受ける患者においてよく認められ、心房細動と関連がある左心耳血栓は、周術期の脳梗塞の原因となりうる。TAVRの患者群における左心耳血栓の発生率とその臨床的な影響は報告されていない。また、左心耳血栓を診断するうえでどの画像診断が最適であるかも明確になっていない。そこで、英国のThe James Cook University HospitalのSonny Palmer氏らは、TAVRを受ける患者群において、左心耳の血栓の発生率と臨床的な影響と心臓CTの役割を評価した。JACC Cardiovascular Intervention誌2017年1月号に掲載。

社会経済的地位が低いと平均余命が2年短縮/Lancet

 死亡リスクの増大には、多量の飲酒や喫煙、高血圧といったリスク因子に加え、社会経済的地位も関連することが、被験者総数175万人超のコホート試験に関するメタ解析で明らかになった。スイス・ローザンヌ大学病院のSilvia Stringhini氏らが行った。WHOでは2011年から、「2025年までに非感染性疾患による死亡率を25%削減する」を目標に、先に挙げた3つのほか、身体不活動、塩分・ナトリウム分摂取、糖尿病、肥満の合計7つのリスク因子をターゲットとするアクションプラン「25×25イニシアチブ」を表明している。研究グループは、それら7リスク因子に含まれていない社会経済的地位と死亡リスクとの関連を検証した。

心臓移植非適応患者への新たな左心補助装置の有効性/NEJM

 心臓移植非適応の進行心不全患者において、左心補助装置(LVAD)の新しいタイプ「小型心膜内遠心ポンプ」は、市販既存タイプの「軸流ポンプ」に対し、非劣性であることが示された。米国・デューク大学のJoseph G Rogers氏らが、多施設からの被験者446例を対象に行った無作為化試験で明らかにした。LVADは進行心不全患者の確立した治療法である。研究グループは今回、移植ができない患者に対する新しいデザインの有効性について、後遺症を残した脳卒中や機能不全・不具合によるデバイス除去のない生存を指標に検討した。NEJM誌2017年2月2日号掲載の報告より。

敗血症診断の新基準は患者の院内死亡を正確に予測できるか?(解説:小金丸 博 氏)-640

2016年2月に、敗血症および敗血症性ショックの新しい定義(Sepsis-3)が発表された。感染症を疑った場合、ICU以外の場ではまず「意識の変容」「収縮期血圧100mmHg以下」「呼吸数22回/分以上」の3項目を評価する(qSOFA)。2項目以上を満たす場合には、続いて臓器障害の評価を行い、SOFAスコア2点以上の増加があれば敗血症と診断される。過去の後ろ向き研究において、qSOFAスコアの2点以上の増加が院内死亡率上昇と関連することが報告されていたが、前向き研究は行われていなかった。

抗精神病薬のスイッチング、一括置換 vs.漸減漸増:慶應義塾大

 抗精神病薬の切り替えは、臨床現場では日常的に行われているが、一括置換法と漸減漸増法のどちらが好ましいスイッチング法であるかは不明である。一括置換法は、リバウンドや離脱症状の出現や増悪と関連しているのに対し、漸減漸増法はクロスオーバーアプローチで用いられる場合、相加的または相乗的な副作用リスクをきたすと考えられる。慶應義塾大学(カナダ・オタワ大学)の竹内 啓善氏らは、抗精神病薬のスイッチング戦略について検討を行った。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年1月1日号の報告。

PPIは認知症リスクになるのか~系統的レビュー

 最近の研究で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)服用者における認知障害や認知症リスクの増加が示唆されている。オーストラリア・モナッシュ大学のRiley Batchelor氏らが、これらの関連を系統的レビューにより検討したところ、PPI使用と認知症および急性の認知障害に正の相関が認められた。著者らは、今回の系統的レビューには方法論的な問題と相反する結果があるため、さらなる縦断研究が必要としている。Journal of gastroenterology and hepatology誌オンライン版2017年1月27日号に掲載。

女性眼科医の報酬が男性より低い理由は?

 女性眼科医の数は増加しているが、彼女らの臨床活動や報酬についてはわかっていない。米国ジョンズ・ホプキンス大学のAshvini K Reddy氏らの分析の結果、2012年および2013年におけるメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)からの報酬は、女性眼科医による請求の提出が少なく、男性眼科医と女性眼科医とでまったく異なっていた。著者は、「臨床活動は類似しており機会は公平でありながら差があることについて、その根本原因をさらに調査する必要がある」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年1月19日号掲載の報告。

前立腺生検前のトリアージとしてMP-MRIが有用/Lancet

 前立腺がんの診断において、マルチパラメトリック(MP)MRIは、約4分の1の患者で不要な生検を回避するとともに、臨床的に重要でないがんの過剰診断を抑制し、重要ながんの検出率を改善することが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHashim U Ahmed氏らが行ったPROMIS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年1月19日号に掲載された。血清前立腺特異抗原(PSA)が高値の男性には、通常、経直腸的超音波ガイド下前立腺生検(TRUS生検)が施行されるが、出血や疼痛、感染症などの副作用の可能性がある。MP-MRIは、前立腺組織の解剖学的情報だけでなく、その体積、細胞形態、脈管組織などの特性情報をもたらすため、高リスク病変の検出や、低リスク病変の系統的な除外に役立つとのエビデンスがあり、トリアージ検査として期待を集めている。

うつ病、男女間で異なる特徴とは

 いくつかの研究によると、男女間でうつ病に関連した異なる症状が報告されているが、この関連を分析したシステマティックレビューやメタアナリシスはパブリッシュされていない。オーストラリア・Illawarra Health & Medical Research InstituteのAnna Cavanagh氏らは、うつ病に関連する症状の性差のエビデンスをレビューした。Harvard review of psychiatry誌2017年1・2月号の報告。

エンパグリフロジンの心血管イベント減少アジア人でも

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃)と日本イーライリリー株式会社(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:パトリック・ジョンソン)は2017年2月2日、エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)によるEMPA-REG OUTCOME試験のアジア人サブグループ解析の結果が、1月25日Circulation Journalに掲載されたと発表した。