日本語でわかる最新の海外医学論文|page:675

統合失調症患者のワーキングメモリ改善のために

 口頭による指示に従う能力は、日々の機能において重要であるが、統合失調症患者ではほとんど研究されていない。最近の研究によると、行動ベースのプロセスは、主にワーキングメモリに依存する指示に従う能力を促進する可能性が示唆されている。中国・Castle Peak HospitalのSimon S. Y. Lui氏らは、統合失調症患者が指示に従うことで行動ベースの利点を得るかを検証した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2017年5月22日号の報告。

パッチ式インフルエンザワクチンは有用か/Lancet

 溶解型マイクロニードルパッチを活用したインフルエンザワクチン接種は、忍容性に優れ確固たる免疫獲得をもたらすことが報告された。米国・エモリー大学のNadine G. Rouphael氏らによる検討で、Lancet誌オンライン版2017年6月27日号で発表された。報告は、従来の注射器に代わる予防接種法の検討として初となる、第I相の無作為化プラセボ対照試験「TIV-MNP 2015」の結果である。

うつ病に対するtDCS療法 vs.薬物療法/NEJM

 うつ病治療として、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct-current stimulation:tDCS)療法の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)に対する非劣性は示されず、有害事象はより多かったことが、ブラジル・サンパウロ大学のAndre R. Brunoni氏らによる単施設の二重盲検無作為化非劣性試験の結果、報告された。大うつ病障害治療としての電気刺激療法は、2009年に経頭蓋磁気刺激(TMS)が米国FDAに承認され、さまざまな試験で異なる結果が報告されている。TMSは、けいれんリスクは小さいがコスト高であり、より安価で安全な手法としてtDCSが開発されたが、これまでに同法と薬物療法を直接比較する試験は行われていなかった。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。

屈曲病変の通過性を向上させた新型DES発売/日本メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:トニー セメド)は2017年7月3日、薬剤溶出性ステントResolute Onyx(リゾリュートオニキス)コロナリーステントシステム(医療機器承認番号:22900BZX00186000)が7月1日付で本邦の保険適用となった旨を発表。製品販売開始は、7月10日を予定。Resolute Onyxは既存製品のResolute Integrityと比較して優れた通過性向上が期待できるという。

お酒はうつ病リスク増加にも関連

 うつ病の発症率に対するリスクファクターの変化による影響を調査した研究はほとんどない。カナダ・マギル大学のXiangfei Meng氏らは、大規模縦断的集団ベース研究におけるうつ病の心理社会的リスクファクターおよびうつ病発症に対するリスクファクター改善による影響を定量化するため検討を行った。BMJ open誌2017年6月10日号の報告。

中国人における糖尿病、前症含めると約5割に/JAMA

 先行研究で中国の糖尿病有病率の上昇が示されていたが、同国は今や世界最大の糖尿病蔓延国であることが明らかになった。2013年時点で、中国本土の成人における糖尿病有病率は10.9%、糖尿病前症有病率は35.7%と推定されたという。中国疾病予防管理センターのLumin Wang氏らが、3年ごとに実施している慢性疾患とリスク因子サーベイランス調査(China Chronic Disease and Risk Factors Surveillance study)の2013年の結果を報告したもので、JAMA誌2017年6月27日号で発表した。なお、同調査では、糖尿病および糖尿病前症の推定有病率は、中国の民族によって異なることも明らかにされている。これまで、中国の少数民族の糖尿病有病率を調べた疫学研究はほとんどなかった。

皮下膿瘍、切開排膿に抗菌薬併用が有効/NEJM

 5cm以下の単純性皮下膿瘍について、切開排膿単独と比較し、切開排膿にクリンダマイシンまたはトリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)を併用することで、短期アウトカムは改善することが示された。米国・シカゴ大学病院のRobert S. Daum氏らが、成人および小児外来患者を対象とした、多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。ただし著者は、「この治療のベネフィットとこれら抗菌薬の既知の副作用プロファイルを、比較検討する必要がある」とまとめている。合併症のない皮下膿瘍はよくみられるが、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時代における適切な治療は明らかになっていない。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。

前治療歴のあるC型慢性肝炎に対するsofosbuvir、velpatasvir、およびvoxilaprevir療法の検討(解説:中村 郁夫 氏)-697

本論文は、direct-acting antiviral agents(DAA)を含む治療を受けたことのあるC型慢性肝炎の患者を対象として行った2種類の第III相試験(POLARIS-1、POLARIS-4)の結果の報告である。POLARIS-4では、NS5A阻害薬を含まない治療を受けたことのある、遺伝子型1型、2型、3型のHCV患者を対象とし、sofosbuvir(核酸型ポリメラーゼ阻害薬)・velpatasvir(NS5A阻害薬)・voxilaprevir(プロテアーゼ阻害薬)の3剤併用群とsofosbuvir・velpatasvirの2剤併用群に、無作為に1:1に割り付けたうえで、遺伝子型4型の19例を3剤併用群に加えた。その結果、sustained virologic response(SVR)を達成した率は3剤併用群では98%、2剤併用群では90%であった。

DEVOTE 試験の臨床的意義

 2型糖尿病治療、とくにインスリン治療において低血糖管理は重要な問題だ。重症低血糖は心血管イベントリスク増加に関与し、患者さんの心理的負担も大きい。臨床でも、低血糖リスクの低いインスリン製剤を選択することが重要となる。これに関して今後の薬剤選択に影響を与えるデータが先日、ADAで発表された。心血管系リスクの高い2型糖尿病患者を対象にしたDEVOTE試験である。

小児ADHDの合併症有病率と治療成績

 ADHDの合併症は広く研究されているが、いくつもの問題点が解決していない。イタリア・IRCCS-Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario NegriのLaura Reale氏らは、新規に診断された未治療の小児の臨床サンプル(ADHDの有無にかかわらず)における併存精神疾患を調査し、合併症のタイプに基づいて治療有効性を比較するため、多施設共同研究を行った。European child & adolescent psychiatry誌オンライン版2017年5月19日号の報告。

腫瘍溶解ウイルス、ペムブロリズマブとの併用で医師主導治験へ

 オンコリスバイオファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:浦田泰生)は2017年06月27日、国立がん研究センター東病院より腫瘍溶解ウイルス テロメライシン(OBP-301)と他の治療法との併用による効果検討に関する医師主導治験実施申請が、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出された旨を発表した。

子癇前症ハイリスク妊婦への低用量アスピリンは?/NEJM

 早期子癇前症リスクの高い妊婦に対し、妊娠11~14週から36週にかけて低用量アスピリンを投与することで、妊娠37週以前の子癇前症リスクはおよそ6割減少することが示された。英国・キングス・カレッジ病院のDaniel L. Rolnik氏らが、1,776例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年6月28日号で発表した。早期子癇前症は、母体および周産期の死亡や合併症の重大要因である。低用量アスピリン服用で、そのリスクが低下可能か、これまで確認されていなかった。

重症喘息へのbenralizumab、経口ステロイドを減量/NEJM

 重症喘息患者において、抗インターロイキン-5受容体αサブユニット・モノクローナル抗体benralizumabの8週ごとの皮下投与は、年間喘息増悪率も大幅に低下し喘息コントロールを維持しながら、経口ステロイドの服用量を減少可能であることが、無作為化二重盲検並行群プラセボ対照試験の結果、示された。なお、示された効果には、1秒量(FEV1)への持続的効果は伴わなかった。カナダ・マックマスター大学のParameswaran Nair氏らによる検討で、NEJM誌2017年6月22日号(オンライン版2017年5月22日号)で発表した。

カナグリフロジンによる心血管・腎イベントの抑制と下肢切断、骨折の増加(解説:吉岡 成人 氏)-694

SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、心血管イベントの既往がある2型糖尿病患者において心血管死、総死亡、さらに腎イベント(顕性腎症の発症、血清クレアチニン値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)を抑制するとEMPA-REG OUTCOME試験およびそのサブ解析で示されて以降、カナダ糖尿病学会、米国糖尿病学会の提唱するガイドラインでは、心血管リスクの高い患者におけるSGLT2阻害薬の使用を推奨している。

進行ALK遺伝子陽性肺がんの治療について(解説:小林 英夫 氏)-693

元来、anaplastic lymphomaや炎症性筋線維芽細胞性腫瘍で報告されていた受容体チロシンキナーゼであるALKは、肺がんの数%程度で遺伝子変異が認められ、とりわけ腺がんで検出されやすい。そして、ALK阻害薬は従来の化学療法に比べ、ALK遺伝子を有する肺がんに大きな治療効果をもたらしている。初めて上梓されたクリゾチニブ(ザーコリ)はマルチキナーゼ阻害薬でALK阻害活性も有する薬剤だが、一方、アレクチニブ(アレセンサ)はALKを標的として創薬された二番目のALK阻害薬である。日本肺癌学会編 肺癌診療ガイドライン2016では、ALK遺伝子転座陽性でPS(performance status)2までのIV期非小細胞肺がんに対する一次治療は、アレクチニブ(グレードA)またはクリゾチニブ(グレードB)が推奨されている。

統合失調症患者の雇用獲得に必要なこと

 一般と比較すると、統合失調症患者の失業率は、全年齢層において高くなっている。これまでの研究では、統合失調症患者の失業や作業不良に対し、神経認知機能に焦点が当てられてきた。しかし、最近のいくつかの研究では、雇用困難を理解するうえで、認知機能障害と同等以上に臨床症状が重要であることが示唆されている。米国・David Geffen School of MedicineのKatiah Llerena氏らは、統合失調症患者の就職や仕事の成果を妨げる陰性症状への理解を深めることは、雇用を向上させる治療法の開発に不可欠であるとし、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年6月7日号の報告。

ニボルマブ、転移・再発NSCLCの1次治療で予後改善せず/NEJM

 未治療のStage IVおよび再発の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、抗PD-1抗体製剤ニボルマブは標準的な化学療法と比較して予後を改善しないことが、米国・オハイオ州立大学総合がんセンターのDavid P. Carbone氏らが行ったCheckMate 026試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月22日号に掲載された。ニボルマブは、既治療の転移のあるNSCLCの2つの第III相試験でドセタキセルよりも全生存(OS)期間が優れ、未治療のNSCLCの第I相試験では持続的奏効や良好な安全性プロファイルが報告されている。一方、PD-L1を超えるバイオマーカーの探索が進んでおり、腫瘍の遺伝子変異負荷(tumor-mutation burden:TMB)が高度な患者は、免疫療法からベネフィットを得る可能性が高いことが示唆されている。

高血圧家族歴を心血管病予防にどう生かすか?(解説:有馬 久富 氏)-695

高血圧は遺伝することがよく知られている。しかし、過去に行われた研究では、問診による家族歴(両親の高血圧の有無)を用いて高血圧の遺伝性が検討されてきた。問診による家族歴は、記憶に基づいているために不正確であることが少なくない。とくに、健診や降圧療法が今ほど普及していなかった時代には、高血圧の診断自体が不正確であったと推測される。したがって、高血圧の遺伝性に関する信頼性の高いエビデンスは非常に限られていた。

妊婦へのリチウム使用、幼児への影響は

 妊娠初期のリチウム曝露は、幼児のEbstein奇形や全体的な先天性心疾患のリスク増加と関連している可能性があるが、そのデータは相反し、限定的である。米国・ハーバード大学医学大学院のElisabetta Patorno氏らは、メディケイドのデータより、2000~10年に出産した女性における132万5,563件の妊娠に関するコホート研究を行った。NEJM誌2017年6月8日号の報告。